米レッドハットの日本法人は5月23日、SOA(サービス指向アーキテクチャ)に基づくシステムの開発・実行環境「JBoss Enterprise Middleware」を6月中旬から順次出荷すると発表した。オープンソースのWebアプリケーション・サーバー「JBoss」を開発するコミュニティが作った40以上の製品群について、米レッドハットが組み合わせ、動作検証した製品だ。日本でのサポートと日本語マニュアルを付けて販売する。
今回の発表でレッドハットが前面に押し出すのは、TCO(所有総コスト)の低さ。導入・維持コストは競合他社の20%とする。同社自身による試算では、Webアプリケーション・サーバーを32CPUのライセンス以下で3年間使用した場合、購入費用とサポート費用の合計は、「1億~1億5000万円ほど、当社製品のほうが競合製品より安くなる」という。纐纈(こうけつ)昌嗣マーケティングパートナービジネス本部長は、「SOAに取り組みたくてもコスト面で踏み出せかったユーザー企業を後押ししたい」と意気込む。
提供する有償サポートは、大きく2種類ある。開発段階に限って製品群のすべてを対象に提供する「開発者向け」と、本番稼働以降でサーバーの物理CPUの数に応じて課金する「標準」だ。いずれも、電話かメールで問い合わせを受け付ける。受付時間と回答期限、1年間か3年間かのサポート契約によって料金が変わる。サポート提供に向け、レッドハット日本法人は専任部隊を新設、JBossに詳しい技術者など10人を配置した。
JBoss Enterprise Middlewareは、3つのミドルウエアと4つのフレームワークからなる。ミドルウエアには、J2EEアプリケーションの実行サーバー、ポータル向けサーバー、SOAベースのシステム向けサーバーがある。フレームワークは、開発生産性を高めるための2製品と業務プロセスや業務ルールを定義・実行するための2製品がある。今後も、「Web2.0を実現するポータル基盤など、JBossコミュニティがどんどん生みだしている先進技術をいち早く製品化していく」(纐纈本部長)計画である。
今回の新製品は、米本社が昨年6月に約3億5000万ドルで買収した米JBossの製品をベースにしたもの。昨秋から同社は、製品戦略を練ったり研究開発を強化しながら、新製品の準備を進めてきた。買収から1年を経て、SOAビジネスに本格的に乗り出すという、当初の目的に向けて動き出したことになる。同事業拡大のため、これまでの販売パートナー3社であるNEC、サイオス・テクノロジー、日本ヒューレット・パッカードに加え、日本ユニシスと野村総合研究所(NRI)の2社とも契約した。
JBoss Enterprise Middlewareの価格は、サポート費用込みで、標準サポートの場合のミドルウエア製品が70万2000円から、フレームワーク製品は23万4000円から。2年後をめどに、「日本市場で出荷本数ベースのシェア10%を目指す」(纐纈本部長)。海外では既に、「Webアプリケーション・サーバー市場で33.9%のシェアを獲得している」(同)という。金額では、「2年を待たずに10億円を達成したい」(日本法人の藤田祐治社長)考えだ。