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いなかどっとコムの石井研二氏
いなかどっとコムの石井研二氏
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富士通の高橋宏祐氏
富士通の高橋宏祐氏
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マネックス証券の大平幸典氏
マネックス証券の大平幸典氏
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 Webサイトは,ユーザーを集客し,集客したユーザーを情報に上手に誘導しなければならない。このための手段として,サーチ・エンジンやLPO(ランディング・ページ最適化)などのクロスメディア戦略が採られる。NET Marketing Forumでは,Webプロデューサーであるいなかどっとコムの石井研二氏と,実際にクロスメディア戦略で効果を出している富士通の高橋宏祐氏,マネックス証券の大平幸典氏の3者でパネルディスカッションを実施した。モデレータは日経BP社日経パソコンの中野淳が務めた。

 富士通は1年ほど前に,「地底tv」キャンペーンにおいて,テレビCMからWebサイトに誘導を試みた。検索キーワードは「地底人は誰」および「地底人の秘密」である。このCMは当たり,キャンペーン・サイトへのアクセスが急増した。CMを放送した直後には,1日で17万3000PVを記録した。

 マネックス証券では,アフェリエイトによる集客を継続して実施している。(同社にとって)「アフェリエイトは必須」と,同社の大平幸典氏は力を込めて語る。資料請求1回あたり数百円を,リンクを張るアフェリエイターに支払っている。

 Webプロデューサー事業を営み,昨年1年間で12億PVのアクセス解析をこなしたいなかどっとコムの石井研二氏は,クロスメディア戦略の基本として,「2つメディア」であってはダメで,クロスしていなければならない,と力説。この上で,富士通の地底tvの例は好ましいものであると評価した。

 自社サイトをブラッシュ・アップする際の手続きについて,富士通の高橋宏祐氏は,B2B(企業間取引)ならではの製品購入プロセスについて触れた。まずは,顧客が富士通という会社を認知する段階がある。ブランディングによって,「富士通はサーバーを売っているらしい。富士通のサーバーを調べてみよう」という気持ちにさせるのである。顧客は次に,社内で稟議書を書くために必要となる製品情報や価格などの情報を,メーカーのWebサイトで調べる。その後,営業代理店の担当者に電話でコンタクトを取り,購入契約を交わす。「B2Bは企業ブランドありき」(高橋氏)なのである。

 ブランドの向上に関して富士通が注力しているのが,Webサイトの品質の向上である。Webサイトに辿りつかせるだけではダメで,顧客が欲している情報を探しやすくすることが大切であると高橋氏は説く。顧客が頭に思い浮かべているキーワードで探せるようにしておくことも必要だ。例えば同社は,「IT製品のリサイクル」というリンク文字を「IT製品の処分,リサイクル」に変更したところ,IT製品の処分に関する情報を探し出しやすくなり,IT製品の処分の問い合わせが0件に減ったという。また,「イベント」を「イベント,セミナー」に変えたところ,「セミナー」という言葉でサイト内検索をかける顧客が減ったという。

 高橋氏は,「ユーザーが使う言葉ではない社内用語があったとき,こうした社内用語をWebサイトで使用するのは思い上がりだ」と言う。同社は,以前使っていた「IAサーバー」という言葉を「PCサーバー」に変更した。IA(Intel Architecture)という言葉はIT業界用語であり,顧客は使わないからだ。

 マネックス証券もまた,サイト内検索に力を入れている。一例を挙げると,検索結果を表示する際に,検索キーワードを赤く色付けて表示するといった具合だ。同社のサイトを訪問するユーザーの場合,グローバル・ナビゲーションを利用して目的のページを探す人は全体の半分であるという。検索などグローバル・ナビゲーション以外のナビゲーション手段の重要性を感じているという。

 石井研二氏は,Webサイトを訪れるユーザーの典型例として,求めている情報だけにフォーカスし,視野を狭めて情報を探しに来る,と指摘する。求めていない情報をユーザーにアピールするのは難易度が高いという。反対に,求めている情報が載っていそうなページであるにもかかわらず,載っていない悪いケースも多く見られるという。IR(投資家向け広報)のページや採用情報のページに行くとCSR(企業情報)が見えなくなるといった具合だ。

 Webサイトの使いやすさは,利用者に聞かないとわからないと力説するのは,富士通の高橋氏である。同社は以下のPDCA(Plan,Do,Check,Action)を回しているという。まずはアンケートで大きな声を聞く。次にアンケート結果を社内で分析し,仮説を立てる。その次に,インタビューを実施して仮説を検証する。最後に,仮説が正しいことを受けて,プランを実施する。

 マネックス証券は使いやすさを調べるために,アイ・トラッキングと呼ぶ,利用者の目の動きをトレースして検証する方法を採用している。「アイ・トラッキングによって,ログの解析だけではわからないことも見えてくる」(大平氏)。同社に証券口座を持たないユーザーを対象に同社のトップページで目の動きを調べ,トップページのデザインに反映させているという。

 Webの使いやすさを向上させるうえで問題となるのが,Webを閲覧するブラウザ環境としての,米Microsoftの新OSであるWindows VistaとIE7(Internet Explorer 7)との組み合わせである。Vistaで採用された文字フォントやIE7の表示拡大機能などが,Webの見栄えを大きく崩す要因になっているという。富士通では,Vista発売前までに,同社のサイトを35カ国17言語分,Vista向けに修正した。2007年6月6日には,WebサイトをVistaに対応させるノウハウを記した社内向けマニュアル「Windows Vista/IE7 ウェブサイト対応ハンドブック」を社内公開している。