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基調講演する古川享 慶應義塾大学 デジタルメディアコンテンツ統合研究機構 教授
基調講演する古川享 慶應義塾大学 デジタルメディアコンテンツ統合研究機構 教授
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 「Interop Tokyo 2007」で、元マイクロソフトの古川享氏(写真)が基調講演に立った。古川氏は2006年4月から、慶應義塾大学でデジタルメディアに関する講義を持っている。この立場から、IP技術の進化によって可能になった製品やサービスのインパクト、今後の展望について講演した。

 古川氏は、「今やあらゆる機器にコンピュータのOSやアプリケーションが入っており、機器同士がIPネットワークで連携して、データを相互に共有することが始まっている」と指摘。例として、映像制作や放送機器、デジタル家電や音楽機器などを挙げた。

 例えば映画撮影の現場では、撮影したデジタル映像データに大まかな編集を施したり、映像データを広帯域ネットワークでそのまま編集スタジオに送ったりしている。「単にデジタルで映像データを保存したり加工したりできるようになっただけでなく、IPネットワークが普及したことで、大容量データの共有が容易になり、仕事そのもののフローが変わってしまった」。

 古川氏はIP技術の最新動向として、異なった機器を相互に接続して、家庭内で音楽や映像を共有するためのIPベースの規格「DLNA(デジタル・リビング・ネットワーク・アーキテクチャ)」を紹介。手のひらサイズのDLNAサーバーを使って、デジタル・ハイビジョン映像をIPネットワーク接続したDLNA対応テレビに配信するデモを実施した。今はまだ、家庭内ネットワークの中心は、操作の難しいパソコンだったり、高価なハードディスク・レコーダーだったりする。しかし「コンパクトな機器にDLNAサーバーの役割を持たせたり、コンテンツ制御機能だけを持たせたり、そんな機器が今後登場するだろう」。

 このデモでは同時に、「DTCPオーバーIP」と呼ばれるIPネットワーク上のコンテンツ保護規格も紹介した。「IP技術のポイントは、単に広帯域化していることだけでなく、コンテンツ保護の機能をはじめとした様々な機能を付加できることだ。これからはどんなOSや機器を使っているか、あるいはどんなネットワーク配線をしているかといったこと以外に、どういうサービスを実装できるのかを考えていく必要がある」。だからこそオープンな技術仕様であるIPは、重要な基盤になるというわけだ。

通信か放送かを気にする時代は終わった

 古川氏は、IPネットワークを活用したコンテンツ・ビジネスに関して、欧米各国と日本との違いにも言及した。一例として挙げたのが英BBCである。「同社は『放送事業者であることを捨てて、自らが所有するコンテンツをあらゆるデバイスで提供する事業者に生まれ変わる』と、Webサイトで宣言している」という。「欧米の事業者は、コンテンツをIPネットワークで届けるのか放送で届けるのかを気にする時代は終わったと思っている。むしろどういうビジネスを生むかを考えるようになっている。こういう考え方が、欧米の標準だ」。

 かたや日本は、高速ネットワークの敷設に関して最先端を行っているものの、「IPネットワークを活用して提供するコンテンツやサービスの面では、欧米の後塵を拝している」。こうした差の原因は、「技術的なものではなく、法制度や商慣習の問題だろう」。

 古川氏は、日本でもIPネットワークを使ったコンテンツの視聴環境は多様化しつつあることを強調。So-netが2006年4月に開始した、Edyで決済できるビデオ・オンデマンド・サービスや、パソコンが介在せずにIP放送をテレビで受信できる「ギャオプラス」、アップルの「Apple TV」など、セットトップ・ボックスを使ったIPテレビのサービスが、昨年から相次いで始まったことを指摘した。その上で、古川氏は教授を務める大学講座などを通じて、「IPネットワークを活用した新たなビジネスモデル、産業の構築に貢献していきたい」と語った。