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<b>写真1</b>●展覧会の会場風景。失敗から得た課題などをまとめたパネルを掲示した
<b>写真1</b>●展覧会の会場風景。失敗から得た課題などをまとめたパネルを掲示した
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&lt;b&gt;写真2&lt;/b&gt;●プレゼンを行った学生たち。最前列右から2番目が指導を担当した田中康氏
<b>写真2</b>●プレゼンを行った学生たち。最前列右から2番目が指導を担当した田中康氏
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&lt;b&gt;図1&lt;/b&gt;●moririn開発のプレゼンテーション・パネル(一部)。スケジュール調整の難しさを振り返っている
<b>図1</b>●moririn開発のプレゼンテーション・パネル(一部)。スケジュール調整の難しさを振り返っている
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 2007年7月11日と12日の2日間「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム成果展覧会 4つのソフトウエアプロセス」がミッドタウンタワー5Fインターナショナル・デザイン・リエゾンセンターにおいて催された。本展覧会は東京工業大学(東工大)大学院情報理工学研究科多摩美術大学美術学部情報デザイン学科矢野研究室・須永研究室とのコラボレーションによる実習講義の成果発表会である(写真1写真2)。

生きたプロジェクトを体感

 「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」とは文部科学省が支援して東京大学,国立情報学研究所,東工大の共同で実施しているカリキュラム。生きたソフトウエアの開発プロジェクトを体感することを主な目的としている。プロジェクトの過程で失敗や困難を経験することで,ソフトウエア開発の過程に潜在するソフトウエア工学的課題を理解しようとの趣旨だ。

 実習は東工大の学生が多摩美術大学の学生からソフトウエアの開発を受注するという設定でスタートした。ソフトウエアのアイデアは多摩美術大学情報デザイン科の学生が授業の中で草案やモックアップに起こしたものを利用している。アイデアはカメラで撮影した写真を簡単に漫画のコマに貼り付け,吹き出しなどを加えて公開するサービスの「Comica」,位置情報にユーザーが付けたコメントや写真を樹木に見立てて植えていく「moririn」,ブログのようにネット上で自己紹介するコンテンツを文字情報でなく「自宅の部屋の写真」で行うサービスの「Mr.Room」の三つ。開発は4チームに分かれて行った。

 開発を担当する東工大の学生は,多摩美術大学から訪れたデザインチームの代表をクライアント(発注者)に見立てて要望をとりまとめ,モックアップを実際に使えるソフトウエアに仕上げていく。開発チームは実際のプロジェクト同様,要求仕様担当や構築担当など役割を分担し,期限を決めて作業に取りかかった。

コミュニケーションがカギ

 学生は開発の初期段階で仕様を話し合った際に,デザインチームに工学的な知識がほとんど無いことに戸惑いを感じたという。しかし打ち合わせを続けるにつれ,デザインを専門に学ぶ人ならではの面白い着想があることにも気づいたそうだ。

 「開発側としてはまず実装できるか,できないかでアイデアをふるいにかけてしまう。仕様作りの段階ではそれがネックになることもある」とmoririnの構築を担当した冨田尭氏は話す。とはいえ,実装技術を熟知する開発者ならではの発想もあるのでは? との問いに同チームでプレゼンを担当した宇野耕平氏は「開発の初期段階に意見交換できる時間がもっと割ければ,開発側のアイデアも生かせたかもしれない」と振り返った(図1)。

 本プログラムの指導を担当した東京工業大学大学院情報理工学研究科講師の田中康氏は「国内ではプログラミングなど技術面の教育に比べ,チームで開発に取り組む際のコミュニケーション力を磨くような教育がほとんど行われていない」と課題を指摘する。デザイン的にも,機能的にも優れたソフトウエアやサービスは「取り組むチーム内のキャラ(個性)が豊富なほうが生まれやすい」(田中氏)のだという。デザインや開発といった異なる分野に属する者同士,活発なコミュニケーションを図ることは,良い結果を生む基礎となりそうだ。