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写真●デスクトップPC向け静音水冷システム。ラジエータから送り出された冷却水はハードディスク,CPUジャケット,ポンプ,リザーブタンクを通って再びラジエータに戻る。
写真●デスクトップPC向け静音水冷システム。ラジエータから送り出された冷却水はハードディスク,CPUジャケット,ポンプ,リザーブタンクを通って再びラジエータに戻る。
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 NEC,NECパーソナルプロダクツと日立製作所は7月30日,デスクトップPC向けの「静音水冷システム」を共同開発したと発表した。プロセサとともにハードディスクも冷やすこのシステムは,パソコン全体の騒音を25dBにまで削減可能という。NECパーソナルプロダクツが,家庭用機種の秋冬モデルから搭載する予定。

 最大の特徴は,プロセサだけでなく,ハードディスクも冷やす「マルチヒートソース」という方式を採用したことである。PCで特に大きな騒音源であるハードディスクを静音用のボックスに格納。そこに水冷の仕組みを組み込む。これにより,「従来の水冷システムに比べて,静音性と冷却性の両方を大きく改善できた」(NECパーソナルプロダクツの松原 清隆 PC事業本部開発生産事業部長)。

 このシステムを使ったPCの稼働音は,聴力検査室と同等の25dB程度に抑えられるという。従来の水冷システムを使ったPCは30dB~33dB程度だった。NECが市販のDVDレコーダー数製品の稼働音を測定したところ,22.4dB~27.8dBだったという。

 プロセサを冷やす部品は「CPU水冷ジャケット」と呼ぶ。新方式の「ダウンフロー方式」を採用。プロセサの形状と冷却水の循環効率の両方を考慮することで,従来の水冷ジャケットの2倍以上の受熱効率を実現しているという。

 ハードディスク側の装置は,「HDD水冷ジャケット」と「遮音ボックス」から構成する。まずハードディスクを遮音ボックスの中に格納し稼働音を抑える。ボックス内に熱がこもるが,ハードディスクは熱に弱いため,これを水冷ジャケットで冷やす。この方式を採用することで,HDDの稼働音を10dB以上低減できるという。「ハードディスクの稼働音は何も処置しなければ25dB以上に至る。この稼働音を抑えることが静音PCを実現する上で重要なポイントとなっていた」(NECパーソナルプロダクツの酒井浩PC事業本部開発生産事業部共通技術部マネージャー)。NECと日立によると,プロセサに加えてハードディスクも同時に冷却する機構は世界初。

「静音という新しいPCブランドを確立する」

 NECと日立が「静音」をキーワードにPCの冷却・静音技術に力を入れる理由は,PCが家電として使われる利用シーンが増えてきたため。NECパーソナルプロダクツの小野寺忠司PC事業本部開発生産事業部統括マネージャは,「最近はテレビ機能を重視するユーザーが増えてきた。ユーザーはむしろPC機能がついたテレビというイメージで使っている。だからこそ,冷却性能を高め,AV機器並みの静音性を追求すべきだと考えた」と説明する。NECは従来ハイエンド機に水冷方式を採用してきたが,今後はミッドレンジ機にも採用を広げていく予定だ。

 NECは静音性をPCの付加価値としてユーザーにアピールする意向。「PCには品質やデザインなどに加えて,静音性能が新しい付加価値として重要なものになってきた。静音性能を高める機能に投資し,他社の一歩先を行く」(NECパーソナルプロダクツの松原事業部長)。

 PC向け水冷システムは大型コンピュータの冷却技術の流れを汲む。日立製作所は2004年にノートPC向けの水冷システムを開発。日立はこれを他社にライセンス供与してきた。NECおよびNECパーソナルプロダクツもその一社である。

 今回のシステムは最初の水冷システムから数えて四世代目。NEC側から新しい冷却システムを開発したいという提案があり,本システムの開発に至ったという。「NEC(およびNECパーソナルプロダクツ)は静音PCブランドの構築を目指している。日立は静かな高性能を標ぼうし水冷システムの開発を進めてきた。共同でやる意味が大いにあると判断した」(日立製作所の山田健勇 コンシューマ事業グループ ソリューションビジネス事業部長)。

 日立製作所の源馬英明コンシューマ事業グループソリューションビジネス事業部サーマルソリューション事業センタ長は,「PCで世界最高レベルの冷却システムを開発できた」とアピールする。「今回開発したシステムはデスクトップPC用だが,熱問題や騒音問題を抱えているマシンはこれだけではない。将来はノートPCやサーバー機,あるいはPC以外の分野にこの技術を適用していきたい」(源馬センタ長)。