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 かつてのASPブームから7年。今度は成果を出す--。ASP関連ソフトの老舗ベンダーとして知る人ぞ知る存在である,きっとエイエスピー(KitASP)は,SaaS(Software as a Service)プラットフォーム製品「Pivot Path/JSDN」を提供する米Jamcrackerと提携。通信事業者や大手インターネット接続事業者(ISP),データセンター事業者などに向けて,Pivot Path/JSDNを核にしたプラットフォーム製品を販売すると発表した。

 同社の松田利夫社長は,“苦節7年”の意気込みをこう語る。「2000年にASPを普及させるべく当社を設立し,業界団体のASPIC(ASPインダストリー・コンソーシアム)ジャパンも旗揚げした。その頃,ASPのプラットフォーム・ソフトを提供しているJamcracker社を知り,提携したいと考えた。ところが,ほどなくネットバブルが崩壊して,ASPへの関心は急降下。Jam社はリストラを,我々も苦しい状況を余儀なくされた。しかしASPは必ず広がるという確信があった。ASPからSaaSへと言葉が変わった現在,ブロードバンド環境は充実し,ネット上にアプリケーションやデータを置くことへのユーザーの拒否反応もほぼない。間違いなくソフトウエアをサービス化できると考えている」。

 同社が販売するのはどんな製品で,どんなビジネススキームを計画しているのか? プラットフォーム製品という言葉から推察できるように,Pivot Path/JSDNはアプリケーションではない。アプリケーションのホスティングや配信契約の実行・管理,ユーザーのアカウント/アクセス権管理,課金・決済,ヘルプデスクなど,アプリケーションをネット経由で提供する事業に必要な機能を提供する基盤ソフトである。KitASPは,このPivot Path/JSDNに自ら提供するいくつかの製品を組み込み「きっとアプリケーション・サービス・プラットフォーム(K-ASP)」という名称で販売する。組み込むのは,クライアント・アプリをサーバーで稼働させる「GO-Global」,サーバー側にあるクライアント・アプリをダウンロードしてオフラインで利用できるようにする「AppStream」,ネット印刷ソフトなど4種のミドルウエアだ。

 一般のクライアント・ソフトやクライアント/サーバー型ソフトを,SaaSとして提供できるのがK-ASPの特徴である。これは,GO-Globalなどを一括提供するためだ。「SaaSのユーザーインタフェースは,一般にはWebブラウザやAjaxを使ったものという印象が強い。だがK-ASPでは使い慣れたソフトを,そのままのユーザーインタフェースで提供できる。ブロードバンドの普及や配信技術の進歩で,普通にクライアント機にインストールしたソフトに比べても,レスポンスはまったく問題ない」(松田社長)。

 KitASPが想定するK-ASPの販売先は,SaaS事業を広範に提供する通信事業者やISPなどと,一般企業に大別される。前者に対しては売り切りではなく,K-ASPを貸与(レンタル)する。通信事業者などがサーバーを含めたSaaSの設備を用意して顧客開拓を行い,KitASPがSaaSで提供するソフトの調達や技術支援をするイメージだ。松田社長は,これを「楽天のようなビジネスモデル」と話す。「大手か中小かを問わず,ソフト会社にとって,SaaS事業のための設備を自前で用意する負担は小さくない。顧客開拓も単独では限界があるし,顧客にとってはワンストップでいろいろなソフトを利用できる方が便利だ。ソフト会社が我々のプラットフォームを月額1万円程度(プラス売り上げに応じた課金)で利用できるようにして,多くのソフトを一括して提供したい」(同)。

 米国でJamcrackerが提供しているのも,この種のサービスである。「Jamcrackerの創業者でCEO(最高経営責任者)を務めるのは,ネットバブルの頃に一世を風靡したデータセンター大手,エクソダスの創業者。他の経営陣も,HPやマイクロソフトの経験者,著名な座席予約システムを構築/運営してきたアメリカン航空の元CIO(最高情報責任者)などベテランがそろっている。信頼性の高さが求められるSaaSビジネスに最適な人材ばかりだ」(松田社長)。

 もう一つの一般企業向けはSaaSというより,ソフトウエア資産の集中管理やセキュリティ強化を志向した,シンクライアントの考え方に近いものだ。こちらは売り切りで,100ユーザー当たり500万円から。KitASPの代理店であるシステムインテグレータを介してK-ASPを提供する。KitASPは,この2タイプのサービスにより,「SaaSビジネスで先行するセールスフォース・ドットコム(SFDC)とは異なる選択肢を提供する」(同)考えだ。

 とはいえセールスフォース・ドットコムのサービスに比べると,まだ課題も残る。一つはK-ASP上のアプリ同士のデータ連携ができない場合があること。既存のアプリをそのまま動かすから当然なのだが,SaaSといえばデータ連携が前提というイメージも強い。「必要なら連携専用のアダプタを開発する。標準的なデータ連携の仕組みを用意し,それに合わせないとソフトを提供できないといった縛りは考えていない」(同社)。

 有力なソフトを調達できるかどうかも,ASPブームの頃と変わらない課題だろう。売れるソフト製品を擁するベンダーはSaaSで提供しようとはせず,そうでないベンダーの製品ばかりが集まる可能性もあるのだ。これに対しKitASPは「有力なソフト企業の多くは,売り切り方式(セルモデル)で売れる顧客にはすでに販売済み。売り上げを伸ばすには,自前でサーバーを保有できない企業を開拓する必要がある。現実に,ある会計ソフトの有力企業と具体的な話し合いをしている」(松田社長)。

 三番目の課題は様々なソフトを様々なユーザーインタフェースで提供することが,ユーザー側に混乱をもたらしかねないこと。どのアプリがどのサーバー(クライアント)で動いているのか,それぞれの料金体系はどうなっているのかなどが見えにくいうえ,作成したデータの所在をユーザー自身が管理しなければならない。自由度が高い半面で,ユーザーにはある程度の情報リテラシーが求められる。またサービスの提供体制も課題の一つ。KitASP,通信事業者やISP,ソフトの開発/販売会社が,役割分担しながら「SaaSの商店街」を提供する形態は,うまくいっているときはともかく,何かトラブルがあると責任の所在があいまいになるおそれがある。

 それでも,SaaSといっても電子会議やセキュリティソフトなどにとどまっていたり,共同研究の域を出ない取り組みが多い中で,KitASPの試みが実現すれば注目に値する。セールスフォース・ドットコムのオルタナティブになり得るかどうか,今後に期待したい。