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 情報処理推進機構(IPA)は,2007年4月から新しい情報処理技術者試験制度の具体化を検討してきた「新試験制度審議委員会」の中間報告書「情報処理技術者試験 新試験制度の手引(案)」を公表した。この中間報告に対して,9月27日までパブリックコメントを募集。パブリックコメントを反映して,11月下旬に「新試験制度の手引」(最終報告書)を公表し,最終的に試験制度を確定する。

 IPAによる試験制度の検討は,2007年7月20日に公表した経済産業省・産業構造審議会 情報経済分科会情報サービス・ソフトウェア小委員会人材育成ワーキンググループの報告書「高度IT人材の育成をめざして」中で示された情報処理技術者試験の制度改革の方向性を踏まえて,行われたもの。

 図1に,新試験と現行試験の比較を示した。現行試験は独立系,情報システム開発・運用側,情報システム利用側の3つに分かれているが,新試験では,情報システム開発・運用側と情報システム利用側を統合する。これに伴い,システムアナリスト試験と上級システムアドミニストレータ試験が統合されてITストラテジスト試験に,テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験と情報セキュリティアドミニストレータ試験が統合されて情報セキュリティプロフェッショナル試験になる。

図1●現行試験制度と新試験制度の比較
図1●現行試験制度と新試験制度の比較
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 図中のレベルは,「高度IT人材の育成をめざして」中で示された「共通キャリア・スキルフレームワーク」(ITSS,UISS,ETSSの統合を目指して策定中のフレームワーク)のレベルを指す。レベル1に相当するのが,新設されるエントリ試験。レベル2が基本情報技術者試験,レベル3が応用情報技術者試験,レベル4がITストラテジスト試験,システムアーキテクト試験など9試験となる。

 「高度IT人材の育成をめざして」では,新試験制度は「2008年度秋期試験から実施することを目標とする」としていたが,IPAの中間報告によれば,2008年秋期に「エントリ試験」のみを先行して実施し(初級システムアドミニストレータ試験は行わない),2009年春期からすべての試験を新試験制度で実施することを目指す,としている。

 エントリ試験に関しては,「高度IT人材の育成をめざして」中では,「CBT(Computer Based Training)方式により実施する」としていたが,準備が間に合わないため,2008年秋の試験はペーパー方式となる。ただし,この試験に関しては,引き続きCBT方式の導入を目指す。また,エントリ試験は全く新しい試験のため,11月下旬の「新試験制度の手引」公表時にサンプル問題も公開する予定。

 現状の試験と異なる点としては,高度試験(図1のレベル4相当の試験)の午前試験を,午前I(共通知識問題)と午前II(専門知識問題)に分けたことも挙げられる。高度試験の合格者や午前Iで基準点以上の点数を得た者は,2年間午前I試験を免除する。

 新制度の最も大きな変更点は,開発・運用側の試験と利用側の試験を統合したことだろう。「ユーザーとベンダーが共同でシステムを構築するためには同じ知識基盤が必要」という“理想論”に基づいているためだが,これには危惧も残る。

 ソフトウエア開発技術者試験や基本情報技術者試験は,多くのベンダーが社員に受験を勧めているため,多数のエンジニアが受験している。新試験制度で,試験内容に利用者側の知識が含まれると(例えば,新しい基本情報技術者試験では言語として,C,COBOL,Java,アセンブラに加えて表計算が選択可能となる),ベンダーから見て試験の価値が下がる可能性がある。アドミニストレータ試験がなくなることで,ユーザー企業側の受験のモチベーションが下がることも危惧される。また,「職業人として誰もが共通に備えておくべき情報技術に関する基礎的な知識を計る」としているエントリ試験の受験者を増やすために,どうプロモートしていくのかも,大きな課題だろう。

 なお,中間報告で示された各試験の概要は以下の通り。

エントリ試験
 職業人として誰もが共通に備えておくべき情報技術に関する基礎的な知識を計る。試験時間は165分。出題形式は多肢選択式。出題数/解答数は100問/100問(出題数と解答数が同じ場合は全問に解答する。異なる場合は出題された問題から解答する問題を選択する。以下同)

基本情報技術者試験
 対象者は,高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能を持ち,実践的な活用能力を身に付けた者とする。試験時間は午前150分/午後150分。出題形式は午前,午後とも多肢選択式。出題数/解答数は午前が80問/80問,午後が13問/7問。

応用情報技術者試験
 対象者は,高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能を持ち,高度IT人材としての方向性を確立した者とする。試験時間は午前150分/午後150分。出題形式は午前,午後とも多肢選択式。出題数/解答数は午前が80問/80問,午後が12問/6問。

ITストラテジスト試験
 対象者は,企業の経営戦略の実現に向けて,情報技術を活用した基本戦略を策定・提案・推進する者。試験時間は午前Iが50分,午前IIが40分,午後Iが90分,午後IIが120分。出題形式は午前I,IIが多肢選択式,午後Iが記述式,午後IIが論述式。出題数は午前Iが30問/30問,IIが25問/25問,午後Iが4問/2問,午後IIが3問/1問。

システムアーキテクト試験
 対象者は,情報システムまたは組込みシステムの開発に必要となる要件を定義し,それを実現するためのアーキテクチャを設計し,情報システムについては開発を主導する者とする。現在のアプリケーションエンジニア試験を拡張し,システム構造の全体最適設計や組込みシステムのアーキテクチャ設計を追加する。試験時間,出題形式,出題数はITストラテジスト試験と同じ。

プロジェクトマネージャ試験
 対象者は,情報システムまたは組込みシステムのシステム開発プロジェクトの責任者として,プロジェクト計画を作成し,必要となる要員や資源を確保し,計画した予算,期間,品質の達成について責任をもってプロジェクトを遂行する者。試験時間,出題形式,出題数はITストラテジスト試験と同じ。

ネットワークプロフェッショナル試験
 対象者は,ネットワークに関係する固有技術を活用し,最適な情報システム基盤の設計・構築・運用において中心的な役割を果たす者とする。試験時間はITストラテジスト試験と同じ。出題形式は,午前I,IIが多肢選択式,午後I,IIが記述式。出題数は午前Iが30問/30問,IIが25問/25問,午後Iが3問/2問,午後IIが2問/1問。

データベースプロフェッショナル試験
 対象者は,データベースに関係する固有技術を活用し,最適な情報システム基盤の設計・構築・運用において中心的な役割を果たす者とする。試験時間,出題形式,出題数はネットワークプロフェッショナル試験と同じ。

組込みシステムプロフェッショナル試験
 対象者は,組込みシステム開発に関する最適な情報システム基盤の構築や組込みシステムの設計・構築・製造を主導的に行う者とする。試験時間,出題形式,出題数はネットワークプロフェッショナル試験と同じ。

情報セキュリティプロフェッショナル試験
 対象者は,情報セキュリティポリシーに準拠してセキュリティ機能の実現を支援し,または情報システムのセキュリティ基盤を整備する者とする。試験時間,出題形式,出題数はネットワークプロフェッショナル試験と同じ。

ITサービスマネージャ試験
 対象者は,構築されたシステムおよび製品について,安定稼働を確保し継続的な品質管理など安全性と信頼性の高いサービスの提供を行う者。試験時間,出題形式,出題数はITストラテジスト試験と同じ。

システム監査プロフェッショナル試験
 対象者は,被監査対象から独立した立場で,情報システムや組込みシステムに関するリスクおよびコントロールを点検,評価,報告し,改善を勧告する者。試験時間,出題形式,出題数はITストラテジスト試験と同じ。