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フェアリーウェア代表取締役の黒田哲司氏
フェアリーウェア代表取締役の黒田哲司氏
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 第三者が公開しているWebAPIを利用してWebアプリケーションを素早く簡単に構築する“マッシュアップ”と呼ばれる手法がある。マッシュアップを利用した業務アプリケーションの成功例の1つが,フェアリーウェア代表取締役の黒田哲司氏が開発/開設した「出張JAWS(ジョーズ)」。黒田氏は9月7日,日経BP社が開催した開発者向け会議「XDev 2007」で,出張JAWSの開発を通じて見えたマッシュアップの威力を説いた。

 出張JAWSは,WebAPI公開企業のリクルートとJava開発基盤の提供企業であるサン・マイクロシステムズの2社が共催するマッシュアップ・サイトのコンテスト「Mash up Award 2nd」において,108作品中で最優秀賞を獲得したサイト。出張準備の手間を軽減するという実用的な需要に,マッシュアップを利用したアプリケーションで応えた。開発工数は10人日(土日×5週間)。このうちの80%は技術調査に要した時間であり,純粋な開発は2人日程度である。

 システム構築の世界ではこれまで,モジュールの再利用性を追求し,抽象化のレイヤーを下位から上位へとシフトしてきた。Cの関数などの構造化プログラミングから,C++やJavaなどのオブジェクト指向,JavaBeansやActiveXなどのコンポーネント指向,WebService/SOAPなどのサービス指向,といった具合だ。こうした流れの最先端として登場したWebAPIに対して黒田氏は,「複製(コピー)ではなくオリジナル(のサービス)をそのまま使う形態が新しい」と評価する。

 ただし,オリジナルを使うということは,保守したくてもできないことを意味する。そのため「エンドユーザーに対して,SLA(サービス・レベル契約)を提示できない」(黒田氏)。出張JAWSを公開してから半年が経過するが,黒田氏によれば,これまでに4回,WebAPI経由のサービスが障害や保守などの理由で止まったという。このように,WebAPIを利用する際には,WebAPI提供者の都合まではコントロールできないことを念頭に置く必要がある。

 しかし,こうしたデメリットに比べて,「圧倒的にメリットの方が大きい」と黒田氏は結論付ける。人命に関わるようなシステムは別だが,簡単に素早く無料で使えるAPIがあるなら,少々止まってもよいから使おう,という考え方が主流になるという。現在ではまだホビー(趣味)領域を中心に使われているマッシュアップだが,「エンタープライズ(企業)領域でもマッシュアップが使われる時代になりつつある」(黒田氏)。

 なお,黒田氏は講演の最中,出張JAWSにインターネット経由でアクセスして,サイトの機能を実演しながら説明してみせた。出張JAWSの機能は,シンプルである。まず,利用者が建物の名前などを用いて出発地と目的地を入力すると,バックグラウンドで出発地と目的地の緯度・経度を取得して,最寄り駅をユーザーに提示する。ユーザーが駅を選択すると,その駅の情報に基づいて,乗り換え経路情報を提示する得る。緯度と経度は,ホテルやレストランの検索,地図上での位置の把握にも利用する。出張計画書の印刷も可能である。