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インフォテリアUSA社長 江島健太郎氏
インフォテリアUSA社長 江島健太郎氏
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江島氏らが開発した,Comentを利用してプッシュ型の配信を実現したWebチャット・サービス「Lingr」
江島氏らが開発した,Comentを利用してプッシュ型の配信を実現したWebチャット・サービス「Lingr」
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 「講演を依頼された時,最初はお断りしようかと思った。我々はまだ成功したわけではないから。しかし,ITpro Challenge!というタイトルを聞いて思った。こういった講演でしゃべるのは,多くは既に成功した人たち。今の自分のように,挑戦のさなかでもがいている姿を見てもらうことも意味があるのではないか」---9月7日開催されたイベントITpro Challenge!での,インフォテリアUSA社長 江島健太郎氏の講演はこう始まった。

渡米当初の方針を反転,本社を説得しサイト構築

 インフォテリアUSAは当初,インフォテリアのXMLソフト「ASTERIA」を米国で販売するために設立された企業だった。しかし,江島氏が渡米して目の当たりにした現実は,予想とは大きく違っていた。

 まず米国はあまりに広く,日本でやっていたような個別訪問による営業はあまりに効率が悪い。何より,江島氏がシリコンバレーで感じたのは「時代がエンタープライズからWebへ変わりつつある」(江島氏)という大きな流れだった。

 「サイトを作ろう」。江島氏は決心した。しかし渡米前のミッションとまったく異なる事業を,本社は許すだろうか。江島氏が経営陣を説得するために使ったのは社内ブログだった。「かつてソフトウエアはハードウエアのおまけだった。しかし今ではソフトウエアがより大きな付加価値を生んでいる。同様に,これからは間違いなくWebのサービスが主役になる。いつまでもエンタープライズだけに頼っていては危険だ」---江島氏はシリコンバレーの潮流をブログで説きつづけた。「確かに今はどのように収益を生み出すか、モデルは確立されてはいない。しかしそれが見えてきてから始めたのでは既に遅い」---江島氏の熱意に負け,本社はサイトの開発にゴーサインを出した。

 どのようなサイトを作るか。模索していた江島氏が「たまたま見つけた」のがCometと呼ばれる技術だった。WebサーバーからWebブラウザへ,プッシュで情報を配信できる技術である。これを使って,Webのチャットを作れば面白い。とはいえ問題があった。「今の技術ではスケールしない」(江島氏)という点だ。しかし「だからこそやる価値がある」(同)。

世界最強のWebチャット

 サイトの名称は「Lingr」とした。開発チームは江島氏とアーキテクトのDanny Burkes氏,プログラマの中川智史氏,デザイナのChris Boone氏の4人。「ChrisはRuby on Railsコミュニティから一本釣りした」(江島氏)。アプリケーションはRailとAjaxを使い開発。世界のユーザーを獲得するため,デフォルトのメニューやヘルプは英語とした。「世界最強(自称)のWebチャットができた」(江島氏)。Web APIを公開したら, ユーザーが様々なアプリを作成してくれた。Firefoxのアドオン,Yahoo!のウィジェット,MacOSのNotifier…。

 そして,Lingrをサービスインしてから約1年が過ぎた。当初の期待に対する現実はどうだったか。「期待は10万ユーザー,現実には9000ユーザー。期待は英語ユーザーが70%というものだったが,現実は日本語ユーザーが70%。同時接続可能なユーザー数は10000を目指していたが,現実にはまだ600ユーザー」(江島氏)。「100を獲得するためには1000を目標にしなければならない。失敗とはいえない」とITpro Challenge!司会の小飼弾氏は言うが,江島氏は「何が悪かったかはハッキリ学んだ。根本的にモデルを変える。ゼロから再設計し出直す」と語る。

 「大きな財産は,少ないながらも熱狂的なユーザーの支持を得たこと。次の作品こそ自分のベストだ!」---江島氏はそう決意を述べ,講演の翌日,成田から米国へ飛び立った。次のチャレンジの準備に,シリコンバレーに戻るために。