PR
写真1:米MicrosoftのAnoop Guptaコーポレート・バイス・プレジデント
写真1:米MicrosoftのAnoop Guptaコーポレート・バイス・プレジデント
[画像のクリックで拡大表示]
写真2:左からMicrosoftのAnoop Gupta氏,マイクロソフト日本法人の加治佐俊一最高技術責任者,Lunascapeの近藤秀和氏,東京大学情報基盤センターの片桐孝洋氏,ソフィアバンク副代表の藤沢久美氏
写真2:左からMicrosoftのAnoop Gupta氏,マイクロソフト日本法人の加治佐俊一最高技術責任者,Lunascapeの近藤秀和氏,東京大学情報基盤センターの片桐孝洋氏,ソフィアバンク副代表の藤沢久美氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「Microsoftが大学などとの共同研究を進めているのは,自社の特許や,製品に役立つデータなどを得ようとしているからではない。社会を発展させるためには,基礎研究への投資が不可欠だ。利益は,社会全体の発展を通じて得る」--米Microsoftで産学連携を統括するAnoop Guptaコーポレート・バイス・プレジデント(写真1)は9月13日,「イノベーション・ジャパン2007」の講演で,同社の産学連携に対するスタンスをこう説明した。

 Microsoftは日本でも,2005年7月に産学連携の推進組織「マイクロソフト産学連携研究機構(Microsoft Institute for Japanese Academic Research Collaboration,IJARC)」を設立し,産学連携の取り組みを強化している。今回,多くの大学関係者などが集まるイノベーション・ジャパンの講演で,産学連携の狙いや,取り組みの成果に関して説明をした。ちなみに講演者のAnoop Gupta氏は,米スタンフォード大学の教授を11年間務めた後にMicrosoftに転じた人物。現在は,教育関連の製品やソリューションのほか,全社のテクノロジー政策や戦略の立案を担当している。

 Gupta氏は「現在,創薬の分野などで行われているシミュレーション実験では,テラ・バイト,ペタ・バイト規模のデータが使用されており,大量のデータの中から特許につながるような知見を見つけ出すことが,より重要になっている。このようなデータ・ドリブンの研究に,コンピュータ・サイエンスは大きな役割を果たせる」と,Microsoftが大学などの研究を支援する意義を説明する。

 例えば米国では,Microsoftの研究部門であるMicrosoft Researchが,Fred Hutchinson癌研究センターやワシントン大学と協力して,エイズ・ワクチンの研究に機械学習を持ち込むプロジェクトを推進している。Microsoftのソフトウエア技術者がより優れた機械学習アルゴリズムを開発することで,エイズ・ワクチンの開発にかかるコストを削減することが期待できるとしている。

 東京工業大学がMicrosoft Researchと共同で進めるハイ・パフォーマンス・コンピューティングの研究も,生命科学研究を支援する目的がある。東京工業大学の松岡聡教授は最近のグラフィックス・プロセッサ(GPU)が持つ高い並列演算性能に着目。GPUを多目的な演算に使用するGPGPU(General Purpose GPU)プログラミングを容易にする言語やライブラリ技術や,Windows Compute Cluster Server(Windows CCS)を使って大規模クラスタを構築する技術を開発し,「今までのアプローチでは開発に数十億円を要するスーパー・コンピュータに匹敵する,50テラ・フロップス以上の演算性能を持つWindows CCSクラスタを,1500万円程度の予算で構築できるようにした」(東京工業大学の松岡教授)という。

 「何千種類も存在するタンパク質の相互作用を網羅的に分析するには,パソコン1台だと数百年もかかるような演算を必要とする。われわれの開発したWindows CCSクラスタであれば,スーパー・コンピュータ『BlueGene』で2年かかる解析を,3カ月で完了させられる」(松岡教授)と強調する。

 MicrosoftのGupta氏は,「パソコンが普及することによって,かつてのメインフレームに匹敵する演算能力を研究者1人1人が保有できるようになった。今は,小さな大学の大学院生ですら,スーパー・コンピュータを使えるようになり,誰でもイノベーションを実現できるようになった」と,Microsoftがハイ・パフォーマンス・コンピューティングの「大衆化」に貢献していることをアピールした。

 Gupta氏は,「Microsoftは,ソフトウエアが基礎的な社会問題を解決するカギであると信じている」と語る。その上で冒頭のように「Microsoftが大学などとの共同研究を進めているのは,自社の特許や,製品に役立つデータなどを得ようとしているからではない」と強調し,今後も産学連携を推進する考えであることをアピールした。

 またMicrosoftは同日,大学やベンチャー企業が実現した優れた技術イノベーションを表彰する「マイクロソフト・イノベーション・アワード2007」も発表している(写真2)。

 ベンチャー企業の開発した技術を表彰する「コマーシャル部門最優秀賞」には,Lunascapeが開発したレーザー・ポインタによってスクリーンに絵や文字を書いたりする「レーザー・ドローイング・ツール『Afterglow』」が,大学部門が開発した技術を表彰する「アカデミック部門最優秀賞」には,東京大学情報基盤センターの片桐孝洋氏が開発したWindows CCS上での並列計算の最適化を自動的に行う「Windows CCS上の数値計算ライブラリのためのMS-MPIの実装方式の自動チューニング」が選ばれている。

 また,イノベーション・ジャパン2007で研究成果を披露した大学の中から,優れたプロジェクトを表彰する「大学出展部門優秀賞」には,東京工業大学大学院総合理工学研究所化学環境学専攻の渡辺隆行准教授による「大気圧プラズマによる廃棄物処理システム」を,同じく「大学出展部門マイクロソフト特別賞」には,立命館大学理工学部機械システム系機械工学科の谷泰弘教授による「マイクロ加工を支援する機械加工工具の機上再生技術」が選ばれた。