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写真●グリーンITシンポジウムに登壇した経済産業省 商務情報政策局の星野 岳穂参事官
写真●グリーンITシンポジウムに登壇した経済産業省 商務情報政策局の星野 岳穂参事官
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 「もはやITの省エネ対策は不可欠。日本政府としてグリーンITに本腰を入れて取り組んでいく」。こう宣言したのは,経済産業省 商務情報政策局の星野 岳穂参事官である。10月4日に開催された「グリーンITシンポジウム」基調講演の壇上,星野参事官は政府として今後取り組むITの省エネ対策について述べた。

 産業振興と省エネ対策はしばしば相反する関係に位置する。ITについても例外ではない。それでも「社会インフラを効率化するITは,省エネ対策という観点で見ると貢献の度合いは目を見張るものがある」と星野参事官は言い切る。「ITは生産,物流,コミュニケーション,といった様々な点で効率化を実現している」(星野参事官)からだ。

 遠隔ビデオ会議システムやSCM(サプライチェーン・マネジメント)を活用すれば,人やモノの移動の効率化が進む。製造業ではCADやMRPなどによる生産性の向上は当たり前と言っていいほどの取り組みだ。また,ここ1~2年の動きを見ると,プロセッサなどIT機器自体における消費電力の削減も進んでいる。星野参事官はこうした動きを踏まえて「ITは省エネ対策の優等生だ」とまで表現する。

 「だからといってITにおける省エネ対策がこのままでいいというわけではない」(星野参事官)。ITの広がりはPCやサーバー,ルーターなどがこれまで以上に様々な場所で使われるようになることを意味する。「個々の機器の処理性能の向上,通信速度の向上,台数の増加といった動きがあいまって,並ならぬ消費電力量の増大をまねいている」と星野参事官は指摘する。

 経産省主催による研究会の調べによると,2006年におけるIT機器の国内総消費電力量は500億kWh。2025年には5倍以上の2400億kWhになると推測する。これは日本全体の消費電力量の15~20%にも達するという。2006年時点では,ITは全体の5%程度にとどまっている。2050年には5500億kWhと2006年の12倍にもなる。「現在,各所で開発・導入が進んでいるITの省エネ技術を取り込んだとしても,このような急増加のトレンドは避けられない」(星野参事官)。

 そうした将来動向を踏まえ,経産省は2008年度の予算要求で,新しい政策「グリーンITプロジェクト」を盛り込む意向だ。星野参事官によると,このプロジェクトでは産官の連携により,大きく3つの技術開発を進める。(1)サーバーおよびストレージ向け省エネ技術,(2)ネットワーク分野の省エネ技術,(3)半導体やデバイス分野の省エネ技術である。

 (1)では,現在サーバーや一部のPCで適用されている液冷技術の改善に取り組む。これにより,冷却効率をおよそ2倍にし,20%以上の消費電力削減を狙う。またストレージ装置についてはハードディスクの超高密度化,データの圧縮技術を組み合わせることで,台数削減による20%以上の消費電力削減を目指す。発せられた熱を回収し再利用する技術も研究する。

 (2)の一例が,ルーターの電力制御技術。データ流量を予測して消費電力量を制御する技術を開発。これにより30%以上の消費電力量削減を図る。

 (3)については,冷却の必要のない耐高温半導体や,省エネ効果が期待できる有機ELについて,基盤技術の開発を支援する計画だ。

 こうした一連の技術開発プロジェクトを進めることで,先の調査で予測している2025年の電力量2400億kWhを1400億kWhに,2050年の電力量5500億kWhを2900億kWhにまで抑え込む意向だ。

 現在,世界が一斉にIT分野の環境対策に動き始めている。欧米では政府や自治体,企業の連携が進んでいる。データセンターの省電力化を進める団体「グリーングリッド」や,「WWF(世界自然保護基金)」が進めるプログラム「Climate Savers」がそれだ(米国データセンター事情の関連記事Climate Saversの関連記事)。星野参事官は,「優等生たるITの環境対策を進めることで,日本全体の環境対策を後押ししたい」と展望する。