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905iだけでなく、来春発売の705iも前倒しで発表
905iだけでなく、来春発売の705iも前倒しで発表
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NTTドコモの辻村常務。「足元の危機感は、1つの施策ですぐにひっくり返せるものではない」
NTTドコモの辻村常務。「足元の危機感は、1つの施策ですぐにひっくり返せるものではない」
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905iではオーバースペックというユーザー層も少なくない。705iの前倒し発表で「欲しいケータイがきっと見つかるラインアップ」を提示した
905iではオーバースペックというユーザー層も少なくない。705iの前倒し発表で「欲しいケータイがきっと見つかるラインアップ」を提示した
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905iのコンセプト。あらゆる付加機能を網羅した、いわゆる「全部入り」でパワーユーザーの要望に応える
905iのコンセプト。あらゆる付加機能を網羅した、いわゆる「全部入り」でパワーユーザーの要望に応える
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705iのコンセプト。デザイン重視端末や薄型端末などで、幅広いユーザー層への訴求を目指す
705iのコンセプト。デザイン重視端末や薄型端末などで、幅広いユーザー層への訴求を目指す
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 NTTドコモは2007年11月1日、携帯電話の新機種「FOMA 905iシリーズ」「FOMA 705iシリーズ」計23機種75色を発表した。上位機種に当たる905iシリーズは10機種で、11月26日以降順次発売する。普及機種である705iシリーズは13機種で、2008年の春商戦向けに1~3月に発売する予定。

DoCoMo 2.0のつまずき、「移転ゼロ」から純減へ

 「ドコモは変わります。携帯電話の常識が変わります。他社のみなさんは覚悟してください――」。2007年4月23日、NTTドコモの夏野剛執行役員は「FOMA 904i」の発表会で高らかに宣言した。真っ赤な星印に「DoCoMo 2.0」と書かれた新たな旗印の下に、ドコモの反撃が始まる、はずだった。

 しかし、ふたを開けてみるとドコモの不振ぶりがかえって際立つ結果となった。904iの最大の特徴としていた、1端末で2番号を使える「2in1」機能。ドコモは当初、2in1を契約したユーザーを「2契約」としてカウントする方針を明言していた。しかし競合他社から反発の声が上がり、総務省も否定的な見解を示したことで、撤回を余儀なくされる。電気通信事業者協会(TCA)が毎月発表する携帯電話契約数では、純増数トップに躍り出たソフトバンクモバイルと対照的に、ドコモの伸び悩みが鮮明になり、8月には2万件余りの純減に転落。ドコモがDoCoMo 2.0を発表した際、ネット上では「『ドコモに移転ゼロ』とも読める」と話題になっていたが、「移転ゼロ」どころかマイナスになってしまったわけだ。

「全部入り」と705i前倒し発表で、分割払いの不安要素を乗り越える

 これ以上の低迷は許されない。今回の905iの発表では、ドコモの気迫がひしひしと伝わってくる場面が多々あった。905iでは、ワンセグHSDPAGSM方式の海外ローミング、FeliCaチップ、2in1など、現在のトレンドとなっている機能をすべて盛りこむという戦術を採った。「905iにはありとあらゆる機能を載せた。来年の端末に何を載せたら良いのだろうかというくらいだ」(NTTドコモ 代表取締役社長の中村維夫氏)。豊富な機能を求めるユーザーを完全に満足させようとする気概の表れといえる。

 さらに、従来は年始に行っていた春商戦向けモデルの発表も同時に行った。705iシリーズ13機種の発表である。705iはいずれも2008年1~3月の発売予定で、会場には動作する試作機はほとんどなく、開発完了までにはしばらく時間がかかると思われる機種が大半である。そんな開発途上の製品まで前倒しで発表した背景にあるのは、10月26日の中間決算で発表した端末の分割払い方式の導入である。

 NTTドコモ 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長の辻村清行氏は、「先般発表したように、ドコモは905i以降の端末で販売方法を変更する。それに際し、ドコモがどういう端末を提供できるのかを、あらかじめ見ていただきたいと考えた。個々のユーザーが、自らに最も合った端末を購入する上で参考になればと考えている」と前倒しで705iを発表した理由を語る。

 販売方式の変更により、店頭の値札に表示される価格は従来製品のそれから大幅に上昇することが見込まれる。「年末商戦で展開する端末価格割引キャンペーンを加味すれば、実質負担額は従来とほぼ変わりない水準になる」(中村社長)とするが、年末商戦で店頭に並ぶのは単価の高い905iシリーズが主体となるだけに、「ドコモの端末は高い」という負のイメージが付いてしまう恐れがある。ドコモ自身も、「(分割払いの導入に伴う)ユーザー動向の変化を100%予測し切れないところもある」(辻村常務)と、先行きの不透明さを認めている。

 従来とほぼ同等の販売方式を推進しポイント付与率アップで割安感を強調するKDDI(au)や、頭金0円の分割払いが浸透してきたソフトバンクモバイルに、年末商戦でユーザーが流出するというシナリオも考えられる。春商戦向けの705iを先に公開したのは、それを防ぐための一つの作戦といえる。「割安な端末もあと少しで出てくる」と認識してもらうことで、年末商戦中のユーザー流出を食い止めるというわけだ。

 もう一つ、ドコモのユーザー層の幅広さも背景にある。ドコモが中間決算説明会で示したところによると、2007年7~9月に販売した端末のうち、90xiの比率は約50%、70xiは約35%だ。すなわち、905iだけでは購買意欲をそそられるユーザーは半数にとどまる。705iも含めてユーザーに提示することで、「欲しい携帯がきっと見つかるラインアップが完成したと自負している」(辻村常務)という状況に初めてなるわけだ。705iのいずれかの機種を「欲しい」と思ってもらえれば、年末商戦で他社に流出することを防げることになる。

「端末だけでは苦境脱却はできない。総合力で勝負」

 では、23機種75色の新製品一斉発表でドコモは復活を遂げるのか。ドコモ自身は、まだ慎重な見方を崩していないようだ。

 辻村常務は製品発表記者会見の質疑応答で、ドコモの現状について質問を受けこう応じた。「足元の状況に対しては、非常に危機感を持っている。それは、1つの施策ですぐにひっくり返せるものではないと思っている。端末そのものだけでなく、端末の買い求め方、エリア、いろいろなものを総合して初めて今の苦境から抜けられるのだと思う。『DoCoMo 2.0の時代を迎えたね』とユーザーに思っていただけることを目指していきたい」

 大規模な機能拡張は一段落し、成熟期に入ったといわれる日本の携帯電話業界だが、ドコモとしてはさらなる付加価値の向上に貪欲に取り組む姿勢も見せている。この日の発表会では、905i全機種と705iの一部機種を対象に、2007年12月をめどに気象庁の緊急地震速報を受信できるサービスを始めることを発表した。さらに、2008年4月以降順次、HSDPAを現行の下り最大3.6Mbpsから同7.2Mbpsに高速化することも明らかにした。

 2006年10月の携帯電話番号ポータビリティー制度開始以来、KDDIやソフトバンクモバイルの猛チャージを受け苦戦するドコモ。今回の新機種や分割払い導入で苦境脱却となるか、それとも厳しい局面が続くのか。その端緒となる年末商戦の動向に、まずは注目していきたい。