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写真●米Microsoftのスティーブ・バルマーCEO
写真●米Microsoftのスティーブ・バルマーCEO
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 「パソコンの年間販売台数は米国が6000万台なのに,日本は1400万台に過ぎず,日本のPC産業は本来のレベルに達していない。このことが日本製のソフトウエアが世界に羽ばたく上での足かせになっているのではないだろうか」--米Microsoftのスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)が11月9日,都内で開催された「マイクロソフト・デベロッパー・フォーラム」でこのような仮説を披露した。

 9日に開催された「マイクロソフト・デベロッパー・フォーラム」は,日本の開発者からの質問に,Microsoftのバルマー氏が直接答えるというイベントである(写真)。会場には,「Microsoft MVP」や学生などを中心とする70人の開発者が集まり,バルマー氏に様々な質問を行った。その質問の1つに「日本発のソフトウエアが世界に進出するためのアドバイスがほしい」というものがあり,それに対してバルマー氏が冒頭のような仮説を披露した。

 バルマー氏の主張は「製品は消費者(ユーザー)が育てる」というものだ。バルマー氏は「ソフトウエアはユーザーの近くで開発するのが良い」と語る。ユーザーのフィードバックが,製品の品質向上に寄与するとの考えがあるからだ。しかし,パソコンの年間販売台数を見ると,日本のPC産業は米国と比較して見劣りがする。

 「日本のユーザーのアクティビティ・レベル(パソコンの活用度)も低い。日本ではまだ,ITが寄与できる様々な業務が自動化されていないし,公共部門も自動化の段階に至っていない。中小企業のIT導入のレベルも同様だ」とバルマー氏。そのため,日本製のソフトウエアは,米国製ソフトウエアほど鍛えられていないのでないかとバルマー氏は見る。

 バルマー氏は他の仮説も指摘している。「アメリカの教育システムでは,コンピュータ科学やエンジニア教育に重きが置かれている」(バルマー氏)。教育が日米の差を生んでいるという指摘だ。また,「率直に言って,ソフトウエア開発に使用されている国際的なコミュニケーション言語は,英語であり,英語を話す開発者の方が活動しやすい。中国政府も『なぜ中国のソフトウエア産業はインドほど発達しないのか』と危機感を抱いているが,中国とインドでは,英語の能力に差があると言える。Microsoftでも,MSDNの技術資料の機械翻訳などに力を入れている。英語の問題に関しては,機械翻訳も助けになるのではないだろうか」(バルマー氏)とも指摘する。

バルマー氏が開発者に求める資質とは?

 同イベントではほかにも,「技術のブラックボックス化が進むことに対して,技術者として不安を感じる」という質問が寄せられた。それに対してバルマー氏は,「ユーザーも開発者も,一定の複雑さにまでしか対処できない」と,ブラックボックス化はやむを得ないという見方を示した。「開発者としては,ブラックボックスの中のすべてを知りたいと思うだろう。しかし,開発者はよりセマンテック・レベル(抽象度)の高い開発に移行しようとしている。頭脳をブラックボックスの開発に費やすのではなく,新しいフロンティアの開拓に向ける方が望ましいのではないか」(バルマー氏)。

 ただしバルマー氏は,ブラックボックス内の理解を深めることの重要性自体は否定しない。「開発者にとって,構成要素を理解することが重要なのは言うまでもない。4年前にハーバード大学でコンピュータ科学を学ぶ学生に会ったが,彼らはWindowsを使っていなかった。なぜWindowsを使わないのか尋ねたところ『Windowsはわれわれの研究にとってハイレベル過ぎ,ブラックボックスが多すぎる』という答えが返ってきた。彼らが愛していたOSはMS-DOSであり,ハードウエアを直接操作できるやり方を好んでいた。コンピュータ科学を学ぶ上で,すべての構成要素を理解するためには,DOSの方が好ましいと考えていたのだ」(バルマー氏)。

 それでもバルマー氏は,「開発者には,ディテールを追求する姿勢と,全体を俯瞰する姿勢が求められる。ディテール指向は開発者にとって不可欠な要素だが,優れた開発者は全体を俯瞰する能力も備えている。私は高校生の時にコンピュータ科学に触れて,自分にディテール指向がないことを痛感して開発者にはならなかったが…」と自身の経験を振り返りながら,開発者に求められる能力を訴えた。