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写真1:タブレットPCで使用する「MEET eJournalPlus」。
写真1:タブレットPCで使用する「MEET eJournalPlus」。
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写真2:MEET eJournalPlusの画面。左側が文献で,右側が「論点マップ」である。文献の論点を,ペンを使ってマークし,それを論点マップで視覚化する。
写真2:MEET eJournalPlusの画面。左側が文献で,右側が「論点マップ」である。文献の論点を,ペンを使ってマークし,それを論点マップで視覚化する。
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写真3:議論の概要を説明する東大准教授の中原淳氏。
写真3:議論の概要を説明する東大准教授の中原淳氏。
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写真4:あらかじめ読み込んできた文献についてグループで討議する学生。
写真4:あらかじめ読み込んできた文献についてグループで討議する学生。
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写真5:ワイヤレス・プロジェクタを使って全体に発表する。
写真5:ワイヤレス・プロジェクタを使って全体に発表する。
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 東京大学は11月30日,タブレットPCを使って学生の読解力を鍛えるという授業の模様を報道陣に公開した。マイクロソフトの寄附で設立した研究部門が開発するタブレットPC用ソフト「MEET eJournalPlus」を使い,「文献を批判的に読み解く,批判的読解力を育成する」(東大)としている。東大は2008年7月に,MEET eJournalPlusをフリー・ソフトウエアとして公開する予定。

 研究部門の名称は「マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門(略称MEET)」。MEETは先進的な教育環境の開発や評価に取り組んでおり,2007年2月にもNHK番組のアーカイブ「NHKアーカイブス」のコンテンツを学生が自由に閲覧できるようにした教育用ソフト「MEET Video Explorer」を公開している(関連記事:タブレットPCとNHK映像を使う「世界初」の授業、東大が公開)。

 今回公開した「MEET eJournalPlus」(写真1)は「MEET Video Explorer」に続く,タブレットPCを教育用途で使うソフトウエアである。東大は今年,情報通信技術を活用した教育を行うための施設「駒場アクティブ・ラーニング・スタジオ(KALS)」を設けており,ここで行う「批判的思考力(クリティカル・シンキング)を訓練する授業」でMEET eJournalPlusを使用している。

 MEET eJournalPlusは,タブレットPCで文献を閲覧し,文献の重要な部分を抜き出して相互の関係を視覚的にマッピングするなど,論点を整理するためのソフトウエアである(写真2)。タブレットPCのペンを使って,重要だと思う文章にアンダーラインを引くだけで,その部分を簡単に抽出できる。抽出した文章同士のつながりを表現したり,自分の意見などを付け加えたりして,「論点マップ」として視覚化できる。

 MEET eJournalPlusを開発した望月俊男東大客員准教授によれば,学生がただ文献を読むだけでなく,自分で論点マップを作ることで「文章に含まれる情報を正確に抽出する能力」が養われ,それに対して自分なりの考えを付与していくことで「文章内容を評価し,新しい知識を創る能力」が養われるという。

 実際の授業では,学生はあらかじめタブレットPCとMEET eJournalPlusを使って,講師が指定する文献を読んでおく。そして授業では,自分の読んだ文献をグループ内のメンバーと議論し,その内容を授業に参加する全員に発表する。

 30日に実施された公開授業では,いわゆる「ゆとり教育」を巡って2000年以降に行われた学力論争に関する文献の検討と批評が行われた。授業を担当する中原淳東大准教授が,まず「学力論争」に関する議論の概要を説明したうえで(写真3),「学力論争において,どのような主張がなされているかを図示し,何が論点かを理解する」ことを学生に求めた。学生らはタブレットPCを使ったグループ・ディスカッション(写真4)で,自分が読み込んだ文献の内容について討議し,授業の後半にはワイヤレス・プロジェクタを使用して発表(写真5)を行った。

 この授業で鍛えている「文献を批判的に読み解く能力」は,文献や論文を読む上で欠かせない能力であり,国際的な学力調査である「大学版PISA」でも重視しているという。望月准教授は,「論点をゆがんだ形ではなく,正しい形でマッピングしていくことが重要。これらの作業をペンで直感的に操作できることが,MEET eJournalPlusのポイントだ」と語っている。

ソフトウエアはソースも含めて公開予定

 MEET eJournalPlusは,現在はまだ評価版の段階である「.NET Framework 3.5」をベースに開発されており,文書フォーマットとしては「XPS」を採用して,メタデータの保存などを行っている。また,学生間や学生・講師間でのデータ共有には,.NET Framework 3.0で追加された通信機能である「Windows Communication Foundation」を使用している。

 MEETはeJournalPlusを,ソース・コードも含めてフリー・ソフトウエアとしてコミュニティに公開する予定。マイクロソフトの大井川和彦執行役常務は,「MEETを通じて,ITを使った教育の革新が,日本全体に広がることを望んでいる」と述べている。

 MEETが使用しているタブレットPCは,レノボ・ジャパンが寄附したもの。同社の石田聡子執行役員は「PCは『コモディティ(日用品)』と言われて久しいが,本当はそうではない。インタフェースなどにはまだ改善の余地がある。タブレットPCを教育の場で活用してもらうことで,企業の業務にも活用できる新しいパソコンの使い方が生まれてくるだろう」と語っている。