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白田 秀彰氏
白田 秀彰氏

 音楽や映像コンテンツの複製が可能な機器や媒体に対する「補償金」の支払いをユーザーに求め,それを回収したメーカーが権利者団体に渡す形態で運用されている「私的録音録画補償金制度」。文化審議会 著作権分科会傘下の私的録音録画小委員会が,この制度の見直しを進めている。そこでの議論を発端に,権利者団体と機器メーカーの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)との間で対立が生じている。

 地上デジタル放送の録画機器について,録画に技術的保護手段が施されていることを理由に「補償金制度の対象にする必要はない」とするJEITAに対し,権利者サイドは「コピーワンス緩和における合意の前提を崩すもの」と反発する格好になっている。一方,JEITAは権利者サイドの指摘に対し,「従前からの主張である」「合意を崩す意図はない」としている。

 今後の流れ次第では,総務省の情報通信審議会が2007年8月にまとめた「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」の第4次中間答申に基づき,2008年6月の運用開始を目指して現在,準備が進められている地上デジタル放送の「コピーワンス緩和(通称:ダビング10)」の行方にも影響を与えかねない状況になっている(関連記事)。

 両者は折に触れて相手の主張を批判している。特に権利者サイドはこれに関連して3度も記者会見を開くなど,溝は深まるばかりで,決着の道筋が見えてこない。そこで日経エレクトロニクスでは,著作権法の研究者であり,2007年10月設立の「MiAU(インターネット先進ユーザーの会)」の発起人も務める法政大学 社会学部 准教授の白田秀彰氏に,こうした一連の議論と著作権法そのもののあり方について聞いた。

 白田氏は権利者と家電メーカーの間の対立が深まる背景に権利者サイドの「他人の自由を侵す傲慢に無自覚すぎる」態度がある一方,メーカーの技術者の間にも「権利者の主張は受け入れるべきものという固定観念があるように感じる」とした。現状の著作権の運用については「旧式のメディアによる著作物提供という枠組みに固執して,法による保護を盾に新しい技術を否定するのは何かがおかしいとしか言いようがない」とした。

 また,補償金制度の成り立ちについて,「著作権は財産権ではなく,排他的独占権にすぎない」という自説を引き,この制度を「複製機器によって従来のビジネスが脅かされている人をソフトランディングさせるための利益分配制度だ」と喝破した。

 私的録音録画補償金とDRM(デジタル著作権管理)技術の関係は,「併用するのではなく,どちらか一方にするべき」と述べた。「一つの目的のために二つの手段を用いることは,社会的コストの増加を意味」するからだ。補償金制度は一般的に,「補償金制度は一般に,配分を行うための中間主体がある場合と,透明かつ効率的な配分システムが存在しない場合に非効率になる」と解説し,「今の補償金制度は,まさにこの状況にある」と批判した。

 その上で,「私的複製の対価を税や課徴金のような制度で一括徴収し,創作者への配分を,ユーザーが投票などで決定できる」ような制度を導入することが,「コンテンツの製作・流通における正のスパイラルを産む」という考えを述べた。

この記事はTechOn!で掲載中の白田秀彰氏に対するインタビュー「法は単なる調整手段,技術者は自由に進め」からの抜粋です