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内閣官房 知的財産戦略推進事務局主査 井戸川義信氏
内閣官房 知的財産戦略推進事務局主査 井戸川義信氏
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知的財産戦略本部 知的財産による競争力専門調査会 情報通信プロジェクトチーム報告概要
知的財産戦略本部 知的財産による競争力専門調査会 情報通信プロジェクトチーム報告概要
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 「内閣の知財戦略推進会議で情報分野においては検索エンジン著作権法の早急な改正と,SaaSに対応した知財ガイドラインの制定が必要との報告がなされた」---内閣官房 知的財産戦略推進事務局主査 井戸川義信氏は12月21日,独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)オープンソースソフトウェア・センターが開催した「ソフトウエアライセンシングと知財問題に関するシンポジウム」の講演で,政府の知財戦略について講演した。

 政府の知的財産戦略本部は2003年3月に発足,内閣総理大臣が本部長を務める。2007年の「知的財産推進計画2007」のソフトウエア分野に関する記載には「各企業が保有する知財権についてパブリックドメインを構築し(略)イノベーションを図るなど産業界における自主的な対応を促進する」,「オープンソース・ソフトウエアを活用したビジネスの更なる円滑な発展を図るため(略)『ビジネス・ユーザーにおけるオープンソース・ソフトウエアの法的リスクに関する調査報告書』を周知し企業における活用を図るとともに,必要に応じ改定を行う」ことが明記されている。

 また知財推進計画2007において、分野別の知財戦略の策定を言及した。その対象は科学技術基本計画で定められた重点推進分野,ライフサイエンス,環境,ナノテク・材料,そして情報通信である。2007年8月30日に第1回の専門調査会が開催され,第2回,第3回の調査会を経て,12月13日の知財戦略本部会合で報告が行われた。

 情報通信分野では,新たなビジネスモデルへの対応,日本のソフトウエア産業の競争力強化という観点から検討が行われた。対応策としてまとめられたのは次の4点である。

1. 共通基盤に対する知財制度の在り方

 共通基盤となる技術については,相互運用性を確保するために知財権を合理的な条件で相互に利用しあう仕組みが有効である。そのために,特許を一定の条件のもとで共有する「パテントコモンズ」や「パテントプール」,国際標準やオープンソース・ソフトウエアの活用を促進すべきとする。

2. パテントトロール対策

 特許を取得しながら自らは製造・販売せずもっぱら他社に対する濫用的な特許の行使により利益を得ようとする者をパテント・トロールと呼ぶ。知財の正当な権利行使と濫用の境界線を明確にするための多角的な議論が求められる。

3. ソフトウエア・イノベーションの促進

 新たなビジネスモデルへの対応,特にSaaSと検索エンジンへの対応が提言された。SaaSに関しては,ユーザーのデータを分析して得られたデータや,ベンダーが倒産した際のユーザーのデータの帰属などが明確になっておらず,これらの取扱いに関するガイドラインを早急に定める必要があるとする。

 検索エンジンに関しては,収集したデータをサーバーに格納することに法的リスクが存在するため,現状,日本で検索サービスを行うベンダーも多くは米国にサーバーを設置している。技術開発,産業育成,ナショナルセキュリティの観点から,著作権法の早急な改正が必要と提言している。

 またネット上における商標権などの知財権の保護するため,必要に応じて制度整備を検討すべきであるとする。
 
 「創造」のための基盤整備として,スーパークリエーターの育成や支援を強化すべきとする。特許の先行事例調査が困難であるという問題に対しては,特許情報提供制度の拡充と,ボランティア・ベースで審査する「コミュニティ・パテント・レビュー」の研究も促進すべきとしている。

4. 諸外国における権利取得の促進

 国内だけでなく,諸外国においても知財権を確保するために,世界特許の実現に向けた取り組みなどが必要であるとする。

 井戸川氏は「知財戦略について意見を寄せてほしい」と呼びかけた。

◎関連資料
知的財産戦略本部会合(第18回)議事録(H19.12.13)
分野別知的財産戦略報告書「知財フロンティアの開拓に向けて」(本体,PDF)
分野別知的財産戦略報告書「知財フロンティアの開拓に向けて」(別添,PDF)