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Phenom X4 9850 Black Edition。倍率可変で、自己責任ながらオーバークロックが容易にできる。
Phenom X4 9850 Black Edition。倍率可変で、自己責任ながらオーバークロックが容易にできる。
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情報表示ソフト「CPU-Z」による表示。左がPhenom 9600、右がPhenom X4 9850 Black Editionだ。
情報表示ソフト「CPU-Z」による表示。左がPhenom 9600、右がPhenom X4 9850 Black Editionだ。
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【グラフ1】CINEBENCH R10のテスト結果。Multiple CPUが全コアを使ったときのスコアだ。9850はQ6600にやや劣る。
【グラフ1】CINEBENCH R10のテスト結果。Multiple CPUが全コアを使ったときのスコアだ。9850はQ6600にやや劣る。
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【グラフ2】PCMark05と3DMark06それぞれのCPU関連テストの結果。3DMark06では9850がQ6600に迫るスコアだった。
【グラフ2】PCMark05と3DMark06それぞれのCPU関連テストの結果。3DMark06では9850がQ6600に迫るスコアだった。
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【グラフ3】ペガシスの動画エンコードソフト「TMPGEnc 4.0 XPress」でWMV変換を実行したときの結果。9850がQ6600をわずかに上回る。
【グラフ3】ペガシスの動画エンコードソフト「TMPGEnc 4.0 XPress」でWMV変換を実行したときの結果。9850がQ6600をわずかに上回る。
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【グラフ4】システム全体の消費電力。負荷はFuturemarkのベンチマークソフト「PCMark05」で4スレッドを同時に実行する「Multithreaded Test 2」。Phenomの消費電力は高い。
【グラフ4】システム全体の消費電力。負荷はFuturemarkのベンチマークソフト「PCMark05」で4スレッドを同時に実行する「Multithreaded Test 2」。Phenomの消費電力は高い。
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 AMDは2008年3月27日、デスクトップPC向けCPUの新製品3シリーズ、7モデルを発表した。日経WinPC編集部は、そのうち最上位モデルとなるPhenom X4 9850 Black Editionを入手、既に販売されているAMD製のCPUとライバルであるIntel製のクアッドコアCPUを交えて性能と消費電力を検証した。

 Phenom X4 9850 Black Editionは、AMDが2007年11月に発表したPhenom 9000シリーズのマイナーチェンジモデルだ。設計やキャッシュ容量など性能や機能、消費電力などの基本仕様は全く変わらないが、仮想化支援機能などを使用するときに発生する可能性のあったエラッタ(不具合)を解消した。9850は、これまでAMD製のデスクトップPC向けクアッドコアCPUとしては最も速かった、2.3GHz動作のPhenom 9600の上位製品で2.5GHzで動作する。さらに、通常は固定になっている動作周波数の倍率を可変にし、「オーバークロック」(メーカーが定める仕様を超えた周波数で動かすこと)を容易にしている。実勢価格はPhenom 9600の2万円台半ばに対して、9850は3万円前後になるとみられる。

 今回のテストに使用したパーツは以下の通りだ。

【CPU】Phenom X4 9850 Black Edition(2.5GHz)、Phenom 9600(2.3GHz)、Athlon 64 X2 Black Edition(2.6GHz)、Core 2 Quad Q6600(2.4GHz)、Core 2 Quad Q9450相当品(2.66GHz)

【マザーボード】A780GM-A(ECS、AMD 780G搭載)、GA-P35-DS3R(GIGABYTE TECHNOLOGY、Intel P35搭載)
【メモリー】DDR2-800 1GB×2(JEDEC準拠)
【HDD】Deskstar P7K500 500GB(日立グローバルストレージテクノロジーズ)
【グラフィックスボード】Radeon HD 3470搭載ボード(玄人志向)
【OS】Windows Vista Ultimate Service Pack 1 32ビット日本語版

 直接の比較対象であるPhenom 9600のほか、1万円前後で売れ筋のAthlon 64 X2 5000+もテストした。このCPUだけはデュアルコアだ。Intel製CPUは、価格面のライバルであるCore 2 Quad Q6600と、最新クアッドコアCPUの売れ筋になりそうなQ9450をテストした。Q9450が「相当」となっているのは、最上位モデルで可変倍率のCore 2 Extreme QX9650(3GHz)をクロックダウンして利用したため。性能面はQ9450と全く同じになるが、後述する消費電力は参考値としてとらえていただきたい(Q9450の製品版では異なる値となる可能性がある)。

Phenom 9850はCore 2 Quad Q6600とほぼ同等の性能

 まずは「CINEBENCH R10」の結果だ(グラフ1)。CINEBENCHは、ドイツのMAXON Computerが公開しているベンチマークソフト。3次元画像のレンダリングをベースにCPUの演算性能を測れる。グラフ中の「Rendering(Single CPU)」は、コアを1個しか使わないときの結果で、コアそのもの作りと動作周波数の影響が分かる。「Rendering(Multiple CPU)は、すべてのコアを使った結果でCPU全体の演算性能の潜在能力を判断できる。処理の特性上、コア数に応じてスコアがきれいに比例する傾向がある。

 グラフの伸びは、長い間クアッドコアCPUの売れ筋だったCore 2 Quad Q6600の結果を100%として、すべて相対値で表している。Phenom X4 9850はAMD製CPUのフラッグシップであり、Phenom 9600に対しては順当に性能が伸びている。しかし、このテストではIntelのクアッドコアとしては最下位モデルであるQ6600にわずかに劣る結果になってしまった。

 なお、Phenom X4 9850とPhenom 9600を比べると、動作周波数の比率以上に9850の性能が伸びている。これは9600ではエラッタを修正するコードが適用されたためと推測できる。「推測」というのは、今回テストしたECS製マザーボードのBIOSメニューには、エラッタ修正の有効、無効を切り替える項目がなく、修正コードが適用されているかどうか判断できなかったからだ。

 AMD製の情報表示、設定ユーティリティー「AMD OverDrive」で、エラッタ修正コードを無効にできるという設定を試したが、スコアに大幅な変化は見られなかったため、元々エラッタ修正コードが適用されていない可能性も捨てきれない。となると、B3 SteppingとB2 Steppingで性能差があるという結論もありうるのだが、AMDはこれまでB3とB2で性能面の違いはないとしていた。AMDはエラッタについて「まれにしか起きないため、クライアントPCで使うなら修正しなくても問題ない」というスタンスだ。明示的にエラッタ修正コードを無効にできる環境では、ここに掲載したPhenom 9600の結果よりもよいスコア(9850との差が縮まるスコア)が得られる可能性がある。

 グラフ2は、Futuremarkのベンチマークソフト「PCMark05」と「3DMark06」のCPU関連テストの結果だ。3DMark06のCPUテストはコア数が大きく影響するが、PCMark06はクアッドコアをフルに使うテスト項目が少ないため、CPUの総合スコアに対するコア数の影響は小さい。9850は、3DMark06ではQ6600に迫る結果を出しているものの、PCMark05では差が広がってしまっている。

 グラフ3は、ペガシスの動画エンコードソフト「TMPGEnc 4.0 XPress」を使ったテストの結果だ。ソニーのHDVカメラで撮影した1440×1080ドット、1分間(1800フレーム)のMPEG-2 TS形式の動画ファイルをソースにして、Windows Media Video 9 Advanced Profileで1920×1080ドットのWMVファイルに変換した。TMPGEnc 4.0 XPressのMPEG-2変換はIntel製CPUが全般的に高速だが、WMV形式への変換はAMD製CPUが優位性を見せる。ここでは、9850がQ6600をわずかに上回った。

Phenomの消費電力は高かった

 最後は消費電力の比較だ(グラフ4)。CPU単体ではなく、システム全体の消費電力なので、CPU以外にマザーボードの消費電力の差が含まれてしまう。AMDのプラットフォームでは、AMD 780G搭載のマザーボードを使っている。AMD製CPU向けには上位製品としてAMD 790FXがあるが、話題の最新製品である点や消費電力が低いと言われている点、安価で買いやすい点を考慮してAMD 780G製品を選んだ。Intel製プラットフォームでは、売れ筋のIntel P35搭載製品を使っている。AMD 780GとP35ではラインアップ中の位置付けは異なるものの、各プラットフォームの現実的な選択だろう。

 アイドル時も負荷時も低いのはデュアルコアのAthlon 64 X2 5000+。コア数が少ないだけに当たり前だろう。次いで消費電力が低いのは、Core 2 Quad Q9450(相当品)だ。特に負荷時の低さは特筆もので、Athlon 64 X2 5000+とほぼ同じ。製造プロセスの違いが効いたのか、同じアーキテクチャーで動作周波数が低いQ6600よりも消費電力が低い。それでいてグラフ1~3のように性能は高いのだから、消費電力当たりの性能は極めて高い。

 Phenomはアイドル時も負荷時も高めだ。Athlon 64 X2では省電力機能(Cool'n'Quiet)を有効にすると、アイドル時はどれも1GHzで動作する。このため、上位モデルでも下位モデルでも、アイドル時の消費電力に極端な差は出なかった。一方、Phenomでは、アイドル時は最大時の半分の周波数になるので、モデルによってアイドル時の消費電力に差が付く。負荷時の消費電力の高さは、特に9850で目立つ。過去に日経WinPCがテストしたPhenomの評価版での2.6GHz動作でも消費電力が格段に高かった。現在のPhenomの作りだと動作周波数の向上に合わせて消費電力もどんどん上がる、という印象だ。

 Phenom X4 9850の登場で、AMD製クアッドコアCPUはIntel製CPUに対してようやく性能面での競争力を持つようになった。しかし、今回9850と比べたQ6600は1年以上前から売られている旧世代の製品。しかも消費電力はPhenomの方が格段に高い。Intelは、Q6600の後継製品として、Q9450と同じく45nmプロセスで製造した2.5GHz動作のQ9300を既に発売している。4月中にはQ6600の価格が下がるという話しもあり、そうなると9850の競争力が再び弱まってしまう。

 エラッタの存在が気になってPhenomに踏み切れなかったAMDファンや、既にAMD製CPUを使っていてクアッドコアCPUにアップグレードしたいユーザーにとっては、B3 SteppingのPhenom X4 9x50シリーズは買いと言えるだろう。ただ、マザーボードも含めてPC全体を刷新するつもりなら、価格、性能、消費電力についてIntelプラットフォームを含めて、十分に検討した方がよい。

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