PR
写真1●ネットを通じてデバイス間でデータを連係させる「Live Mesh」
写真1●ネットを通じてデバイス間でデータを連係させる「Live Mesh」
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●「ソフトウエアをパソコンというデバイスだけで利用する時代は終わった」とTim O'Reilly氏
写真2●「ソフトウエアをパソコンというデバイスだけで利用する時代は終わった」とTim O'Reilly氏
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●Live Meshを担当するGeneral ManagerであるAmit Mital氏
写真3●Live Meshを担当するGeneral ManagerであるAmit Mital氏
[画像のクリックで拡大表示]

 米Microsoftは米国時間4月23日,新たなオンライン・サービス「Live Mesh」を発表した。Webストレージを介して様々なデバイス間でデータを同期させ,ファイルやアプリケーションを複数のユーザーやデバイスで共有するサービスである。同日にサンフランシスコで行われた「Web 2.0 Expo」の基調講演で具体的な姿を明らかにした。

 Live Meshを投入するMicrosoftの狙いは,パソコンだけでなく携帯電話やデジタル・カメラ,カー・ナビゲーションといったあらゆる「デバイス」で使用するデータを,インターネット上のコンピュータ・クラウドに保存し,ネットワークとデータを通じてデバイスを連携させることにある(写真1)。

 Web 2.0 Expoの基調講演で同社は「母親がデジタル・カメラで撮影した子供の写真が,デジタル・カメラから直接Webストレージに保存され,それが自動的に父親のラップトップ・パソコンや,自宅のデジタル・フォトフレームなどに転送される」というイメージ・ビデオを流し,Live Meshが実現する「あらゆるデバイスがネットを通じて連携する将来のアプリケーションの姿」をアピールした。

「パソコンだけの時代」の終わりを自覚したMicrosoft

 「ソフトウエアをパソコンというデバイスだけで利用する時代は終わった」--Web 2.0 Expoを主催する米O'Reilly Mediaの創業者兼CEOであるTim O'Reilly氏(写真2)はWeb 2.0 Expoの基調講演でこう強調する。その上で「MicrosoftもLive Meshのような,パソコンに限らないデバイスで利用するサービスを提供するようになった」(O'Reilly氏)とLive Meshを紹介した。

 Web戦略に出遅れたMicrosoftが,Bill Gates氏の後継者としてChief Software Architectに就任したRay Ozzie氏のリーダー・シップの下,初めて公開した「Ozzie氏の意志が反映されたサービス」が「Live Mesh」である。

 同社でLive Meshを担当するGeneral ManagerのAmit Mital氏(写真3)は「Live Meshは,(Ozzie氏がChief Software Architectに就任した)2年前から開発を開始した」と語る。その上でMital氏は,「実現しようとしたのは,デバイスの管理を統合することであり,データの管理を統合することだ。単にデバイスを連携させるだけでなく,ソーシャルな要素も付け加える」と語る。例えばLive Meshでは,デジタル・カメラで撮影した写真に「休暇の写真」といったタグを付けて,そのデータを数クリックの操作で友人と共有できるようになる。さらに,そのファイルに編集を加えた場合は,編集結果が即座にフィードとして他の利用者に通知される。

我々はプラットフォーム・ベンダーだ,とMicrosoft

 MicrosoftのMital氏は「我々はあくまで,プラットフォーム・ベンダーだ。多くの開発者に,Live Meshというプラットフォームを使ったアプリケーションを開発してもらいたい」とも強調する。そのためにMicrosoftは,一般の開発者向けにLive Meshの機能を利用するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を提供する。APIは,RSSやATOM,JSON,POXといった,Web 2.0の世界で広く利用されている仕様で提供される。Mital氏は「Live Meshのプラットフォームはオープンであり,開発者は言語,フォーマットなどを自由に選べる」と語っている。

 このAPIには,データをWebストレージに蓄積する機能だけでなく,データの変更や追加を知らせる機能も実装される。「Live Meshのアプリケーション開発モデルは,クラウドやローカルのデバイスを問わずに共通だ。開発者は同じスキルを使って,デスクトップでもブラウザ内でもインターネットのクラウド上でも同様に動作するLive Mesh用アプリケーションを開発できる」(Mital氏)。

 Microsoftはまず,利用者を限定した英語版のみを公開した。現時点でLive Meshを利用できるのはWindows Vista/XPだけだが,数カ月以内にMacやモバイル・デバイスにも対応するとしている。

クラウドへ踏み出すMicrosoft

 Live Meshはようやく姿を現した同社の具体的な「Web 2.0サービス」と言える。同社はローカルのパソコンにあるソフトウエアとネット上のサービスを組み合わせる「ソフトウエア+サービス(S+S)」戦略を提唱。Ray Ozzie氏は昨年7月,S+S戦略に沿ったアーキテクチャを発表した(関連記事:「ゲイツの後継者」が最も好きなマイクロソフト製品)。しかしそれ以降,具体的なサービスを打ち出してこなかった。Ozzie氏はLive Meshの発表に合わせて公開した文書「Ray Ozzie Software-plus-Services Strategy Memo」で,Live Meshのことを「当社のオンライン戦略であるWindows Liveの一部となる,新たなサービス・プラットフォーム技術」としている。

 Live Meshは実に,Ozzie氏らしいサービスだ。同氏がMicrosoftに入社する前に開発を手がけた「Groove」も,ピア・ツー・ピア(P2P)技術を使って,同一プロジェクトに参加する各クライアントのデータを同期させるというグループ・ウエアだったからだ。

 Ozzie氏は昨年,日経コンピュータのインタビューに対して「Groove開発の経験がマイクロソフトのソフトウエア+サービス戦略推進に活きる」と答えている。「オフラインとオンラインでソフトとサービスを継ぎ目なく利用可能にしようとすると,ローカルのデータとクラウドの中のデータを,自然な形で同期させる必要がある。Grooveのピア・ツー・ピア型の同期技術やユーザー管理の技術が,こうしたサービス連携の基盤になる」(Ozzie氏)。

 Ozzie氏は今年3月に開催したWeb開発者向けイベント「Mix 08」で,「既存製品をすべてインターネットによって作り替える」と述べている(関連記事:「全既存製品をネットによって作り変える」,MicrosoftのRay Ozzie氏が「MIX 08」で宣言)。しかし米Googleや米Salesforce.comといったライバルは,既存の情報システムをインターネットへ移行する「クラウド戦略」を矢継ぎ早に打ち出している(関連記事:「あなたのビジネスをクラウドへ」,SalesforceとGoogleがMS/IBMに宣戦布告)。Live MeshはMicrosoftがパソコンとその上で動作するソフトウエアという既存の枠組みを,インターネット・クラウドとサービスへ本格的にシフトさせ始めた第一歩と言える。