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 「富士通はようやく、皆さん(顧客企業)のお供をしてもコケない会社になりました」。富士通の黒川博昭社長は壇上で深く頭を下げた(写真)。2008年5月15日に開催されたイベント「富士通フォーラム2008」の基調講演における一コマだ。黒川社長は6月下旬に社長職を野副州旦副社長に譲り、相談役に退く計画(社長交代会見の記事)。この基調講演が顧客や取引先などの前に社長として姿を見せる事実上最後の機会となった。

 黒川社長は基調講演で、「フィールド・イノベーション」の実現に向けた人材育成策や、新しいIT基盤の考え方などを紹介した。フィールド・イノベーションとは、富士通が提供するサービスの基本方針。具体的には、顧客企業の工場、設計・開発の現場、営業先、店舗などに向けた業務改善やシステム構築サービスなどを指す。

 人材育成については、新しく設けた職種「ビジネスアーキテクト」と「フィールドイノベータ」について紹介した。「お客様の現場を支援するには、現場の改革手法に精通した人材が不可欠」(黒川社長)だからだ。

 ビジネスアーキテクトとは要件定義を専門とする人材。「お客様の業務プロセスを設計しどんなITを作るべきかを考える」(黒川社長)。300人を目標に昨年から育成に本格的に取り組んでいる。

 もう一つのフィールドイノベータは、顧客企業の現場に入り、問題発見と解決ができる人材を指す。「フィールドイノベータは、業務分析手法のC-NAP(シーナップ)や『見える化』の手法を使って、お客様をお手伝いしていく」(黒川社長)。

 フィールドイノベータの主な候補は、富士通の部長クラス。2007年に150人の候補を募り、育成を始めているという。C-NAPは富士通が1980年代に開発した手法で、ステークホルダーを集めて議論しながらシステム化の目的を明確にするもの。以前はシステム開発の現場で活用されていたが、近年は若手への伝承がなされていなかった。

 IT基盤については「XML大福帳」という考え方を提示した。企業内で発生したデータを、XMLのタグを付けて1カ所にまとめて保存する構想だ。XMLをデータベースの基盤技術に採用することで、データベース構造の柔軟性を保つ。リレーショナル・データベースに比べて項目の追加・変更が容易という。富士通が開発・販売しているXMLデータベース・ソフト「Shunsaku」の活用を想定している。

 社内に散在する複数のシステムからデータを1カ所に集める技術には、エンタープライズ・サービス・バス(ESB)を適用する。XML技術とESBの採用により、データ管理の手間を短縮しつつ、容易に活用できるようになるという。

 黒川社長は2003年6月に就任。契約内容の精査やプロジェクト管理の徹底、ハード事業や海外事業の見直しなどに取り組んだ。就任前の2002年3月期、2003年3月期と2期連続で連結最終赤字に終わったが、その後業績は徐々に回復。2008年3月期は481億円の純利益を計上した(富士通決算の記事)。冒頭で紹介した黒川社長の発言中の「コケる」は、赤字を指す。