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経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長 八尋俊英氏
経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長 八尋俊英氏
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日本IT産業の収益性が低い要因
日本IT産業の収益性が低い要因
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 「日本の情報サービス業の収益性はインドよりも低い。受託開発中心の体質と多重下請け構造が要因」---経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長 八尋俊英氏はIPAX2008の講演でこのような認識を示した。

 IPAX2008は独立行政法人 情報処理推進機構が開催するイベント。八尋氏は「2008年度 情報関連施策について」と題して講演した。

 日本の国際的な競争力は相対的に低下する傾向にあり,日本IT市場の地位も相対的に低下していると八尋氏は指摘。そのため国内市場でのみで事業を展開するのではなく,世界市場への展開が急務であるとする。「ヒト,モノ,カネの世界的な再編成が進行する渦中にあって,日本は乗り遅れている」(八尋氏)。

 日本の情報サービス業市場は世界第2位の規模だが,収益性は欧米IT企業に比べ低いだけでなく,インドIT企業よりも低い。その要因は受託開発中心の体質と多重下請け構造という情報サービス産業特有の問題点にあると経済産業省は分析している。「お客様にきちんとシステムを届けること自体は悪いことではない。しかし作ったシステム汎用性を持たせることができず,それが足を引っ張っている」(八尋氏)。

 IT産業のみならず,全産業の競争力向上のためにIT人材の高度化が必要だが,IT産業に魅力が欠如しているため優秀な人材が集まりにくくなっていると認識している。「どの大学でもコンピュータ・サイエンス(学科の入試合格点)は平均点以下。最も人気がないという大学もある」(八尋氏)。その原因も,受託開発が中心で生産性・収益性が低いこと,長時間労働が常態化しているだけでなく,新たなフロンティアを開拓する発展性に乏しいことなどにあるとする。

 これらの問題に対し,経産省は対策として以下のおもな施策を行っている。(1)高度IT人材の育成,(2)中小企業を始めとするIT投資の促進,(3)情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約適正化に向けた取り組み,(4)ソフトウエア・エンジニアリングの実践,(5)オープン・イノベーションの加速,(6)情報大航海プロジェクト,である。

 (1)高度IT人材の育成に関しては,スキルスタンダード,情報処理技術者試験や未踏ソフトウエアのほか,2007年10月に経済産業省と文部科学省が連携し「産学人材育成パートナーシップ」を立ち上げた。産学の共通認識を醸成し,教育界の人材育成と産業界のニーズのミスマッチ解消を目指すという。

 (2)中小企業を始めとするIT投資の促進に関しては,2006年から2008年3月末まで情報基盤強化税制・中小企業投資促進税制を施行していたが「廃止になってしまいそうだったところを,多くの方の声があり,2年間延長できた」(八尋氏)という。情報基盤強化税制は取得価格の最低限度を300万円から70万円に引き下げるとともに,オープンな標準に準拠したSOA(サービス志向アーキテクチャ)連携プログラムを支援対象に追加した。

 (3)情報システムの信頼性向上のための取引慣行・契約適正化に向けた取り組みに関しては,モデル取引・契約書の策定などを行っている。「多重下請けになっているようなところを,きちんと契約から見直していこうとしている」(八尋氏)。

 (4)ソフトウエア・エンジニアリングの実践に関しては,中小企業向けSaaS活用基盤の整備,IPA ソフトウェアエンジニアリングセンターの設立,自動車組み込みOSのJasPerプロジェクトなどがある。JasPerはトヨタ,日産など複数のメーカーが共同で開発しており,国際標準化を目指している。

 (5)オープン・イノベーションの加速についてはIPA OSSセンターを2008年2月にオープンソフトウェア・センターに改称。オープンソース・ソフトウエアに加えオープンな標準の普及に取り組む。「政府調達の基本方針にオープンな標準を優先することが明記された」(八尋氏)。

 (6)情報大航海プロジェクトは2007年度から研究開発を開始しており,2008年5月27日,2年目のテーマを発表し公募を開始した。これまでの「安全・安心」,「プライバシー」,「次世代コンテンツ・サービス」に,新しい電波の使い方などを探る「e空間」,トレーサビリティを拡張した「IDマネジメント」を新しいテーマとして加えた。

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