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写真●フューチャーアーキテクトの高安厚思氏
写真●フューチャーアーキテクトの高安厚思氏
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 「SOAによるプロセス統合を実践し,ビジネスへのメリットを生かすには,どんなにプロジェクト・メンバーに否定されても,信念を持ってやり遂げることだ」。SOA(サービス指向アーキテクチャ)導入プロジェクトの経験が豊富な高安厚思氏(フューチャーアーキテクト 技術統括&品質管理本部モニタリンググループ マネジャー,写真)は,6月4日東京都内で開催された「ITアーキテクトのためのシステム設計フォーラム」(日経SYSTEMS主催,創刊2周年記念セミナー)の特別講演で,SOA導入時にITアーキテクトが果たすべき責任について,こう語った。

 「SOA時代のITアーキテクトの役割~SOAを利用する時に考えること~」と題した講演で高安氏はまず,SOAに対するユーザー企業の意識について,いくつかの調査データを用いて分析。「現状ではあまり普及は進んでいないが,注目されていないわけではない」と説明した。SOAによるプロセスやアプリケーションの連携,サービスの再利用に大きな期待が集まっているほか,SOAで実現したプロセスから情報を抽出して企業活動の評価指標として活用する「BAM(Business Active Monitor)」や,発生したイベントを基に定義済みのプロセスを自動実行する「ESP(Event Stream Processing)」などによるビジネス改革も,SOA導入で実現したいことの一つであるとした。

SOA導入で注意すべき六つのポイント

 続いて高安氏は,SOAを導入するときの難しさを説明。「SOAは,ビッグバン的に導入することは容易ではないので,段階的に導入していかなければならない。ただしそのときにも,ビジネスが将来どういう方向に向くのか,全社的な全体最適のロードマップを考えておくことが不可欠だ」と強調した。

 そして実際にSOAのコンセプトに基づくシステムを構築するときにITアーキテクトが注意しておくこととして,(1)システム・データ連携への非同期メッセージ基盤の採用,(2)サービスとアプリケーションの違いを意識すること,(3)SOA利用時の業務フロー・データ連携の考え方,(4)プロセスとデータの抽象化の実施,(5)運用を意識すること,(6)導入方針の決定──の6項目を挙げた。

 例えば(1)のシステム・データ連携。従来のシステム連携でリアルタイム性を求めると,サーバーへの依存度が高くなる問題があったと指摘。この問題を解決するには,非同期メッセージ基盤を採用するとよいとした。SOAでは,基盤構成要素である「ESB(Enterprise Service Bus)」の概念を利用できる。ただし,「ESB基盤を導入しさえすれば,SOAによるビジネス上のメリットが得られるわけではない。システムを連携すればよいのではなく,重要なのはプロセスの統合を実現することだ」(高安氏)と指摘した。

重要なのは抽象化によるプロセス統合

 また,6項目のうち最も重要なのは,(4)プロセスとデータの抽象化だという。例えば,利用部署ごとに異なる受注アプリケーションが3種類あったとき,それぞれを現状のプロセスのままでサービス化しても,プロセス統合によるSOAのメリットは生かせない。プロセスとデータを抽象化すること,つまり,3種類の受注アプリケーションから共通の受注プロセスや売り上げ計上プロセスを切り出し,個別のプロセスと分離するべきだという。

 ただし高安氏によれば,プロセスやデータの抽象化を徹底するのは容易ではない。「ユーザーはすぐに,現状のプロセスを変えたくないと主張する」(同)からだ。高安氏は「たとえこちらの提案を否定されたとしても,全体最適を考えるITアーキテクトが確固たる信念を持ってやり遂げないと,SOA導入の成功はおぼつかない」と強調した。

全体を見据える視野を持つ

 最後に高安氏は,ITアーキテクトに求められる能力について言及。「全体最適に責任を持つリーダーというITアーキテクトの役割自体は,“SOA時代”になっても変わらない。ただし,見るべき範囲は大きく拡大する。全体を見据える視野を持ち,幅広い知識を身に付けることが不可欠になる」とした。

 これまでは,自分が担当するシステムと,連携する外部システムくらいを見ておけばよかったのに対し,SOAが前提になれば,全社を見渡す視点が必要になるからだ。そしてそのためには,「自分ひとりの力では不十分。周りの人の経験を聞き,それを理解して自分の立場に置き換えて応用できるかどうかが重要になる」という。

■変更履歴
5段落目の「例えば(1)のシステム・データ連携…」の個所は誤解を招きやすい表現でしたので修正しました。お詫びします。本文は修正済みです。[2008/6/4 19:53]