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 情報通信審議会情報通信政策部会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(デジコン委)の技術検討ワーキンググループ(WG)は2008年6月13日,デジコン委の第39回会合で,コンテンツ権利保護のためのエンフォースメントに関する検討状況を報告した。技術検討WGは,デジタル放送受信機にコピー制御ルールを順守させるための仕組みである「エンフォースメント」についての検討を進めている。技術検討WGは今回,「技術的エンフォースメント」(TE,スクランブル放送をベースにした仕組み)と「制度的エンフォースメント」(LE,法律で不正な受信機の流通を阻止する仕組み)について,現時点での検討結果と,協議を通じて明らかになった「想定される課題」を報告した。具体的には,(1)目的,(2)対象となる機器,(3)順守が求められるルール,(4)ルールに違反した場合などの措置――の4つの項目である。

 (1)の目的については,TEとLEの両方について,無料の地上デジタル放送をエンフォースメントの対象とした。エンフォースメントの目的としては,「対象受信機すべてに対し,一定のコピー制御ルールを確実に順守させること」を挙げた。目的の達成手段に対する基本的な考え方としては,TEは「民間の契約であり,ルールの内容やその担保方法の決定は,契約当事者の合意による」とした。一方,LEは,「法律で規制する場合には,目的およびルールの妥当性などについて,国民的コンセンサスが必要」と指摘した。なおLEについての課題の一つとして,「1999年の産業構造審議会合同会議で無反応機に対応するよう機器メーカーに対して法的に強制することは技術の進歩を止めてしまう恐れがあり,規制は行わないことが適当と報告された」ことが盛り込まれた。

 (2)の対象機器については,TEは地上デジタル放送受信機(チューナーや蓄積・記録など4つの機能を備えた完成品としての受信機と,ほかの機器と接続して完成品を構成できる機器)を対象にするとした。一方,LEを採用する場合は,ノンスクランブル放送が行われる場合は公開情報を用いてコピー制御信号に従わない機器を製造することが技術的に可能になるため,「脅威と想定される受信機についてはTEに比べて一定の拡張が必要であると考えられる」とした。課題としては,LEを採用する場合,「具体的な対象機器の範囲をどのように定めるか」「研究用機器や業務用機器などをどのように取り扱うか」などが挙げられた。

 (3)の順守が求められるルールは,送信側と受信側についてそれぞれ示した。送信側はTEの場合,「コピー制御信号を契約などに定める選択肢の範囲で,それぞれに定めて送信すること」「それ以外のコピー制御信号は送信しないこと」がルールになる。LEの場合,「定めた選択肢の範囲で,それぞれに定める形式に従って送信する」「選択肢の範囲外のコピー制御信号は送信しない」ことがルールになるとした。受信側については,TEとLEの共通ルールとして,「一つの放送チューナーにおいて一定のコピー制御を実現するため,出力・蓄積・記録機能に一定の制約があること」を挙げた。TEを採用する際の課題は,「記録方式や出力方式に関する認定は誰がどのような手続きで行うのか」「認定の基準は何か」「鍵情報が漏えいした場合の対応」である。LEでは,認定に関する課題に加えて,「規制内容の見直しが適宜行える中立性・透明性の高い仕組みの構築」などが課題になる。

 (4)のルールに違反した場合などの措置についても,受信側と送信側についてそれぞれ提示した。TEの受信側の措置は,「ルールに従わない機器を製造・販売している者にライセンス管理主体(民間)がライセンス契約を解除するとともに契約違反で訴える」というものだ。送信側についての措置も,受信側の措置と同様である。一方,LEの受信側の措置では,「認定された技術を用いていない機器や,蓄積などについて定められたものと異なる機能を搭載した機器を製造(販売目的),販売,輸入した者に罰則を与える」,送信側については「定められた方式以外のコピー制御信号を送信したり,選択肢の範囲外のコピー制御信号を送信した場合に罰則を与える」とした。TEを採用した際に想定される課題は,「最初から契約違反を予定して,ルールに従わない受信機の売り逃げをする者への対応」「鍵情報を漏えいした場合の対応」である。一方,LEでは,「ルール違反を摘発する主体の決定」「放送事業者の責務は送信側のルールだけにとどめるか」「販売事業者が受信機を販売する際に,正規な受信機か違法受信機かを判断する基準の決定」などが課題となる。

 技術検討WGの報告終了後の質疑応答では,消費者団体系の委員が,「B-CASは無反応機のハードルになっているか疑問。TEについての議論を進めるのであれば,この問題(無反応機の問題)を解決してもらいたい」と発言した。また有識者系の委員は,「TEとLEの組み合わせた対策を考えられないか」と指摘した。これとは逆にIT企業関係の委員は,「TEとLEのどちらか採用するかを決めたうえで議論すべきではないか」と主張した。