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ディーツーコミュニケーションズ代表取締役社長の藤田明久氏
ディーツーコミュニケーションズ代表取締役社長の藤田明久氏
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 NET Marketing Forumと同時開催した「Mobile Marketing Conference」(MMC)のキーノート・トラックでディーツー コミュニケーションズ(D2C)の代表取締役社長の藤田明久氏(写真)が登壇し,「モバイルがマーケティングを進化させる3つのこと」と題して講演した。

 はじめに,電通が発表した資料から2007年度のケータイ広告費は621億円で,前年比で59.2%増という数字を示し,すべてのメディアを抑えて最も伸びたのがケータイ広告費だったと説明。しかし,同社の広告主1500社に対して実施したアンケートではパソコン向けの広告に最も多くの費用をかけているという結果になり,ケータイ広告は二番目だったという。

 この結果を藤田氏は「ケータイ広告に出稿経験がある企業と,ない企業にギャップがある」と考え,ケータイ広告の出稿経験がある企業とない企業,それぞれにアンケートを実施,その結果を示した。

 アンケートによると,ケータイ広告出稿経験のある企業は約8割が今後ケータイ広告への予算を増やす,または現状維持と前向きだったという。続いて,ケータイ広告の効果の評価について,出稿経験のある企業のうち58%がケータイ広告は広告効果がすぐに把握できると回答,商品の購買喚起にも効果的と30%の企業が答えた。

 一方,出稿経験のない起業は33%がケータイ広告の広告効果は不明確であると回答,22%が購買にも結びつきにくいと答えた。ケータイ広告の出稿経験がない企業にケータイ広告の不満を聞くと,「表現力に乏しい」が48%,「文字数・情報量に制約が多い」が45%,「伝えられる情報が少ない」が43%であったという。

 この結果を藤田氏は「ケータイ広告を出稿した経験がない企業は,ケータイをパソコンのミニ版という先入観を抱きがち」と指摘。「ケータイの利用者は使う場面,場所,用途いずれもパソコンとは異なる」といい,この先入観を払拭(ふっしょく)する3つのキーワードとそれに紐付く事例を紹介した。

 1つめのキーワードとしてまず「逆クロスメディア」を上げた。このキーワードを表す事例として,大規模開発マンションと大手家電量販店を紹介。大規模開発マンションは初めてマンションを買う20~30代をターゲットにして,テレビCM,折り込みチラシ,ケータイサイトを展開した。ケータイサイトの告知にはNTTドコモのメッセージF(フリー)を活用,ターゲットとなる層を絞り込んで告知した。

 プロモーションを行った後の調査について,7人に1人はケータイでマンションを最初に知ったと回答。折り込みチラシも同様に7人に1人が最初に折り込みチラシでマンションを知ったと回答した。このことから,藤田氏は「ケータイは商品・サービスを最初に認知させる効果としては,折り込みチラシと同等の効果がある」と説明した。

 また,ケータイサイトを見た後にマス広告を見るという「逆クロスメディア」現象が起こっているという。それを示すデータとして,ケータイサイトで最初にマンションを知ったユーザーのうち大規模開発マンションのプロモーションでは2.5人に1人が,大手家電量販店のプロモーションでは2.3人に1人がケータイサイトを見た後に折り込みチラシを見たと回答。「生活者は,ライフスタイルに合わせて,想像以上に柔軟にメディアを使い分けている」と指摘した。世の中の情報をケータイで最初に知る人は多いとし,「新しいマーケティングの常識になる」とした。

 2つめに「顧客の梯子」を上げた。藤田氏は企業に対する顧客を「満足顧客」「リピート客」「WOM」「エバンジェリスト」「オーナーシップ」の5パターンに分けた。インターネットが普及する前は顧客を「リピート客」以上に引き上げるのはラグジュアリーブランドでなければできなかったが,ネットが普及してからは中小企業でも少ない予算でできるようになったという。

 ケータイを活用して,顧客レベルを引き上げた事例としてロッテの「コアラのマーチ」を紹介。コアラのマーチは同社の定番商品だが,藤田氏は「定番商品になるとそれが生活者のための商品であるということが伝わりにくくなる」という。そこで,コアラのマーチのターゲットを「若い人たちにみんなで集まったところでわいわい食べてほしい」という狙いに改めて設定し,ケータイカメラでコアラのマーチを撮影してメールで送ると画像認識でコアラの絵柄ごとに占いが返ってくるキャンペーンを実施した。それが話題になりクチコミが広がり,購買に結びついたと説明。「消費者を顧客として考える『自己表現型』ではなく,消費者をパートナーとして捉え,一緒にブランドを作り上げていく『自己実現型』がエンゲージメントをするうえで重要」とした。

 最後のキーワードとして「ゴミを出さない販売促進」について言及した。主婦はマイバッグを持ち,若い層がエコに対して敏感になっている。こうした動きに対して,飲料などにおまけをつけると「いずれ飽きたときにゴミになってしまい,それが消費者とのギャップを生んでいる」と藤田氏は指摘する。

 そのうえで,デジタル景品を活用した事例としてセブンイレブンが実施した,ヤッターマンとディー・エヌ・エーが運営するケータイSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「モバゲー」とのプロモーション事例を紹介。セブンイレブンでキャンペーンの対象のパンを購入すると,モバゲー内のユーザーの分身である「アバター」で利用できるヤッターマンの衣装などを提供,大きな成功を収めたという。「デジタル景品なので,飽きてもワンクリックで破棄することができる」と説明した。

 藤田氏は「ケータイは24時間ユーザーの30cm以内に存在する。だから企業はいつでも生活者と接点を作り出すことができる」と語り,2009年末3月にはパケット定額制ユーザーが5500万に到達する見込みというデータを示して,「パソコンはADSLの普及でブロードバンドと定額制を実現させ,利用率が一気に上がった。ケータイは今その過程にある,早くパソコンのミニ版という考えは捨てるべき」と指摘した。最後に「米国も日本のケータイマーケティングに注目している。21世紀のマーケティングの教科書は,日本で生まれる」と締めくくった。