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写真●東国原英夫宮崎県知事の話に聞き入る聴講者
写真●東国原英夫宮崎県知事の話に聞き入る聴講者
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 東京ビッグサイトで開催中の「エンタープライズ・リスク・マネジメント2008」の会場で,東国原英夫・宮崎県知事が「危機管理でトップが果たすべき役割について」をテーマに語ったビデオ・インタビューが上映された(写真)。「情報開示と,そこから始まる意識改革がリスク管理の基本」と,知事は自らの体験に基づく危機対応の理念を熱く語った。

 2006年秋の就任以来,高病原性鳥インフルエンザ,台風4号・5号の襲来,県の不適切な事務処理(裏金)の発覚など,数々のリスク対応を余儀なくされてきた東国原知事。組織を指揮する立場から,何を考え,どのように行動したのか。

 「リスク管理の基本は,情報収集。それをもとに分析,判断,決断というロードマップで進んでいく。何よりも現場をまず見ることを第一義にしている」と知事は語る。「鳥インフルエンザの事例の場合は,被害を拡散させないことを最優先に考えた。10キロ以内の鳥を出荷させないという指示を出したタイミングは非常に早かったと思う」と振り返る。

 宮崎県では養鶏が基幹産業であり,これが打撃を受けると農林水産業の屋台骨がゆらぐ。このため,県の危機管理の職員を100人ほど増員して事件の対応に当たったという。不眠不休で被害の拡散防止と原因究明,風評被害の防止に努めた結果,1週間ほどで事態は収束に向かった。

 「一番の勝因は,これまでの行政のスタイルではなく,民間のリスク管理の手法を取り入れたことではないか」と,東国原知事は振り返る。県の職員は緊急事態に直面するとあたふたして,情報を隠したがる傾向があると指摘。これに対し知事は,「情報はすべて県民に公開するのが私の基本姿勢。その次に説明責任が来る」と明快だ。

 東国原知事のそうした姿勢が県民に伝わり,鳥インフルエンザが発生した最初の農家が速やかに事態を報告してきた。これに対して知事は感謝状を贈った。すると,次に発生した農家もすぐに報告してきた。危機管理に対する意識改革が県民全体に広がったことが,何よりの収穫だった。

 もう一つ,知事がリスク対応を迫られた大きな事案は,県の裏金の発覚である。知事就任の挨拶で「裏金ありませんか?」と県の幹部職員を相手に呼びかけたところ,過去5年間で3億7000万円の不適切な事務処理があったことが分かった。

 「あの呼びかけは,自分の中でも“賭け”だった」と知事は打ち明ける。県の総合計画の中で「コンプライアンスの意識向上」などと書いても絵に描いたもちに過ぎない。本当に公務員が意識を変えるには大鉈を振らなくてはならない。そうした思いが「あなたがたを信じている。裏金があったら,申し出てほしい」という呼びかけにつながったという。第三者による調査機関などを置かず,自主的に職員が告白してくれるのを待った。

 果たして,次々と裏金の存在が明らかになり,その総額は最終的に3億7000万円に達した。県民の県行政に対する信頼は完全に失墜した。「そこがすべての出発点だった。心の情報開示ができて,県職員たちの表情はとても明るくなった。“公費は県民からの預かりもの”という意識改革も進み,コンプライアンス順守への再出発を切ることができた」と,知事は自身の決断が誤りではなかったと確信している。

 最後に知事は,危機管理を含め,組織を指揮する者の役割について語った。「自分にはトップであるという意識はない。私のスタイルは,まず行動ありき。現場に行って自分で行動して,職員にも同じことを体験してもらい,共感が生まれる。そうした中で,いいところは褒め,悪いところは直していきながら,全員で組織を作っていく。今後もこのやり方を貫く」。