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写真●チェンジビジョンの平鍋健児社長
写真●チェンジビジョンの平鍋健児社長
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 「ソフトウエアを開発しても実際に使われない機能があまりにも多い。資源をムダにしないためにも,構築して捨てる時代から,小さく作って育てる時代へと進化する必要がある」---。2008年9月5日,都内で開かれたソフトウエア開発者向けイベント「XDev2008」において,チェンジビジョンの平鍋健児社長(写真)はこう訴えた。「持続可能なソフトウエア開発」と題した講演で語ったもので,使われ続けるソフトウエアにするには,機能のムダを排除し,徐々に育てていくことが重要だと強調した。

64%の機能は使われていない

 講演ではまず,多くの工業製品が材料から製品を作り,消費者がそれを利用して必要がなくなったら捨てるという「Take-Make-Waste」のモデルである点を問題視した。「ソフトウエアでも全く同じことが言える。今までのような作っては捨てるという一方通行の開発では,ムダが多すぎる。循環型,つまり育てていく開発こそが,持続可能性の実現には欠かせない」(平鍋氏)と述べた。

 ソフトウエアにはムダが多いというデータも披露した。ある調査では,開発したソフトウエアの機能で全く使われない割合が45%,ほとんど使われない割合が19%だったという。「合わせて64%。これはすべて労力や資源,コストのムダと言っていい」(平鍋氏)。

 では,ムダをなくすにはどうしたらよいのか。平鍋氏は次に,作り手と使い手の対話が必要だと説いた。ここで平鍋氏は,書画カメラを使ってスクリーン上に手書きのイラストを映し出す。具体的には「作る人」がいる島と「使う人」がいる島の二つを描き,その間に川が流れていると説明。そして「作る人と使う人の間で情報をやり取りする場合,どんな方法が考えられるでしょうか」と,会場に詰め掛けた受講者に問いかけた。

 選択肢として挙げたのは大きく二つ。一つは舟を使って情報を伝達する方法,もう一つは島と島の間に橋をかけ,両者が行き来する方法である。「今の開発ではほとんどの場合,前者のやり方,つまりまとまった要求を使う人から作る人に渡し,それを作る人が分析・設計してソフトウエアを作る。これが大きな問題だ」(平鍋氏)。使う人が要求をまとめる段階では,本当に使うかどうか分からない機能が含まれる可能性が高い。また要求が間違っていることのフィードバックが遅い点も,舟による情報伝達の問題だという。そのためにも,橋をかけてコミュニケーションの場を作ることが必要だとアピールした。

 作る人と使う人は切っても切れない関係だという例も示した。利用者があるシステムで,帳票のレイアウトにこだわった。だが開発者は作るのが大変だと拒んだ。それで開発者が利用部門を訪れて画面で確認できる方法でもよいのかと聞くと,利用者は「そんなことできるのか」と驚いたという。「もっと早く対話をしていれば,ムダな時間を使わずに済んだわけだ」(平鍋氏)。

欧米に遅れるアジャイルの普及度

 対話の重要性とともに,アジャイルと持続可能性の関係にも言及した。平鍋氏は「数年もかけてソフトウエアを開発するからビジネス・スピードについていけず,ムダな機能が生まれる。早い段階でメンテナンス・フェーズに入り,育てていくアジャイル型の開発が持続可能なソフトウエア開発に適している」と語る。

 ただし,国内ではアジャイル型開発の普及が遅れているという。カナダで行われたアジャイルに関するイベントに平鍋氏が参加した際,欧米では約3割のソフトウエア開発でアジャイルを適用していたという。「日本ではせいぜい5~10%。ウオーターフォール型の開発では小さく作って育てるというスタイルに向かない。アジャイル型はミーティングが多いなど負担もあるが,ムダをなくすには適用すべきだ」(平鍋氏)と説明する。

 少しずつ作るとソフトウエア全体の整合性が取りにくくなる。ただし,現在はその心配も必要ないと平鍋氏は言う。「変更が何度も入ればそれなりの負担にはなる。しかし時代は変わった。テスト技術やオブジェクト指向技術の進化でソフトウエアの変更も容易になった」。変更を恐れないことも,持続可能なソフトウエア開発では必要だと言えそうだ。