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 米Microsoftは,完成から2年近く過ぎた「Windows Vista」の消費者向け販売キャンペーンを改めて始める。Windows Vistaの累積ライセンス販売数は約2億本に達し,OS市場で2位との差を30倍に広げ支配的な地位を手に入れているのだから,今さら必要のない取り組みと思える。しかし,ライバルや敵対企業の団結したネガティブ・キャンペーンが効果を発揮し,消費者はWindows Vistaの品質を誤解するようになった。そこで,同社はとうとう反撃することにした。

 Microsoftは様々な方法で敵を攻める。同社は2008年9月にテレビ・コマーシャル(CM)の放送を始めたが,それに先立つ8月からWeb上でクチコミ・プロモーション「Mojave Experiment」を展開していた。このプロモーションは,Windows Vistaに触れたことがないのにできの悪いOSと信じているユーザーを選び,Windows Vistaを将来版Windowsと偽って使ってもらうブラインド・テストを実施したのだ。Windows Vistaを嫌っていたユーザーたちだが,その多くは「将来版Windows」を非常に高く評価した。彼らは,試験終了後に初めてWindows Vistaを使っていた事実を知らされた。

 反撃の第二弾として,Microsoft共同創設者Bill Gates氏とコメディアンJerry Seinfeld氏の共演するテレビCMシリーズ第1作の放映を9月第1週に始めた。見た人の意見は賛否両論というところだが,同社は,第1作をまず消費者の注意を引きつけるための軽いジョーク「アイスブレイカー」とした。過去に展開した広告に比べ謙虚で人間味に富んだやり方で自社を表現しており,良い結果が得られるかもしれない。

 Gates氏とSeinfeld氏のテレビCMはまだまだ続くはずだ。ただし,同社は消費者のWindows Vistaに対する考えを覆す方策をほかにも考えている。数カ月を費やして155人の「Microsoftグル」にトレーニングを施し,全米の米Best Buy店舗やその他小売店の店頭に立たせ,Windows Vistaの正確な情報を消費者に伝える作戦を展開した。この活動は,米AppleがBest Buyで行っている「店舗内店舗」に対する反撃も兼ねている。販売される全パソコンの40%を小売店が占めることから,Microsoftは直接的な働きかけを強める必要があると判断したのだ。

 さらに,水面下でパソコン・メーカーに協力し,Windows Vistaが高速に動く製品の開発を支援する。パソコン・メーカーは,OSに余計な自社製「がらくたソフトウエア」をバンドルする行為によって,長いあいだWindows Vistaに関する多くの問題の元凶と考えられていた。「Vista Velocity」と呼ぶプログラムによって,新たなパソコンは適切なドライバで調整が施され,性能が最大60%向上する。

 社内では,Windows Vistaに対する一般認識を変える目的の小グループ「Free The People 24x7(FTP168)」(人々を週7日,24時間解放しよう)を組織し,パソコンやWeb,電話でWindowsを使ってもらえるよう働きかける。同社はこの活動を通じ,クラウド・コンピューティングという未来を見据えている。クラウド・コンピューティングが広まれば,スマートフォンのような従来と違う形のデバイスを利用する人が増える。

 Microsoftの反撃は成功するだろうか。反撃などしなくても,Windows Vistaは確実に数億本売れる。ところが,同社はAppleの「Mac OS X」に対する優位が続くかどうかとても心配している。優勢を維持するには,消費者に今後もWindowsの新バージョンへアップグレードし続けたいと思わせ,そうしてきたことが正しいと信じ込ませる必要がある。人の考えを変えることは難しいし,Appleのいい加減な比較広告「I'm a Mac, I'm a PC」(「僕はMac。僕はPC」)で絶え間なく繰り返される雑音が一般認識として広まっている現在,Microsoftが反撃するのは当然だ。これまでのところ,キャンペーンは間違いなく効果を上げている。