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ITpro EXPO 2008 Autumn基調講演で話すブラザー工業CIO(最高情報責任者)の小池幸文取締役常務執行役員
ITpro EXPO 2008 Autumn基調講演で話すブラザー工業CIO(最高情報責任者)の小池幸文取締役常務執行役員
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 「時間をかけて完ぺきに作り込んだ情報システムよりも,“人”の柔軟性を信じる」--。ITpro EXPO 2008 Autumn展示会2日目の基調講演で,ブラザー工業取締役常務執行役員の小池幸文氏が登壇した。講演タイトルは「グローバル企業の経営変革を支えるIT」。小池氏は日経情報ストラテジーが選出する「CIOオブ・ザ・イヤー2008」の受賞者である。プロジェクトリーダー・CIO(最高情報責任者)として,約10年にわたってERP(統合基幹業務)パッケージの導入・展開と経営変革を推進してきた経緯を語った。

 1999年ごろブラザー工業で全社の情報システムを刷新するプロジェクトが立ち上がった時,小池氏はまずメンバーを集め,2~3週間をかけてIT部門のミッションと,あるべきシステムの全体像の図を作ったという。

 ミッションは「情報活用力を高め,グローバルでのプロセスと人の進化をリードする」というもの。たったの1行だが,ここには様々な思いが詰まっている。「事業のあらゆる要素の中で“人”の柔軟性は一番高い。情報システムをガチガチに作り込んでしまうと,逆に人がシステムに使われるようになってしまう」「サポートではなく“リード”という言葉にこだわった。IT部門が他部門をリードするような日の当たる存在になり,部門のモチベーションを高めることを意識した」と小池氏は強調した。

 システムの全体像は,「グローバルの生産・販売・在庫データをリアルタイムまたは日次で集計する」「品質などにかかわるKPI(重要業績評価指標)もグローバル連結で算出する」といった内容だ。「当時のIT技術では実現困難な内容も含まれていたが,ほぼ当時描いた通りのことが実現できている」と話した。

 全体像作りに時間をかけた一方で,システム開発の段階ではスピードを重視した。「プロジェクトの責任者から『この調子では間に合わないから稼働を半年遅らせられないか』と言われた時に,どうすれば速くできるのかを考えた。結局,“決められない”ことが遅延の原因だった。そこで,何事も1週間で決めるルールを徹底した」と話す。ERP稼働後は各部門で業務の混乱や残業の増加もあったが,数カ月で落ち着いたという。「(トラブルが起きる)リスクを取ってでも早く決めることに徹した。1週間では十分に考えて判断できないだろうが,2週間や1カ月検討したからといって大した違いはなかったと思う」と強調した。

 2002年にアビームコンサルティングをパートナーに選び,情報システムの開発・保守をフルアウトソーシングした経緯についても説明。「IT技術の変化は激しいが,ブラザー工業の人材はコア事業に優先して投入する必要がある。IT人材の育成を社内で行うのはリスクが大きいと考えた。ただしアウトソーシング先の選択を誤ると,ITが足かせになって会社の命運を左右してしまうので,当時お付き合いのあった取引先の中から慎重に検討した。アビームは“人”を大切にする社風が当社に似ているのが決め手だった」と話した。