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図1●下り通信を実現する仕組み
図1●下り通信を実現する仕組み
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写真1●デモに使ったシステム
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写真2●受信機とその内部。この試作機では,スイッチの切り替えによってフィルタの設定を操作し,最大8ユーザーの通話を分離できる。基板(手前)の中央にある銀色の素子がフォト・ダイオード。
写真2●受信機とその内部。この試作機では,スイッチの切り替えによってフィルタの設定を操作し,最大8ユーザーの通話を分離できる。基板(手前)の中央にある銀色の素子がフォト・ダイオード。
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図2●上り通信を実現する仕組み
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 NTTアクセスサービスシステム研究所(AS研)はNTTコミュニケーション科学基礎研究所の協力で,停電時にも光ファイバだけで音声通話が可能な技術を開発した。2008年10月15~16日に開催されたNTTの総合技術展示会「つくばフォーラム2008」で初めて公開した。

 収容局とユーザーをつなぐ電話線が銅線の場合,局側から電力を供給できるため停電時にも音声通話が可能である。こうした仕組みで,銅線を使う従来からの加入電話はライフラインの確保を実現している。一方,FTTHのIP電話では,光ファイバで電力が供給できない。このため,停電時には音声通話ができなくなるという問題があった。今回の技術は,そうした問題を克服し,FTTHの光ファイバだけで停電時にも音声通話を可能にする。

 今回の技術では,局側からユーザー宅への下り方向と,ユーザー宅から局側への上り方向で異なる仕組みを使っている。

 下り方向の場合,光信号に音声信号を載せてユーザー宅まで届ける(図1)。ユーザー宅では,光信号をフォト・ダイオードで電気信号に変換し,その電気信号でイヤホンのスピーカを振動させる。この仕組みによって,ユーザー宅で電力供給がなくても音声が伝わる。

 局側では,複数のユーザーの声を電気信号の段階で多重化し,さらに光信号に変換する(強度変調)。FTTHのPONでは,スプリッタを経由して配下の全ユーザー宅に信号が伝わるが,ユーザー側のフィルタで必要な音声だけを取り出せるようになっている。

 今回の展示では,下り側の受信のデモを披露した(写真1,写真2)。今回のシステムを使ってデジタル・プレーヤの声をイヤホンに伝送するというもの。実際に聞いてみたところ,かなり不明瞭だったが確かに音声を受信できていることがわかった。

 上り方向では,ユーザー宅に電源がないため,局側からユーザー宅に光を送り,ユーザー宅のデバイス(光マイクロフォン)で変調した後,局側に折り返す「光ループバック方式」という仕組みを使っている(図2)。

 現在の課題は,上り方向で複数ユーザーの音声をより分ける技術だという。現在開発中の技術では,局側から2種類の波長の光を送信し,ユーザー宅で折り返されて戻ってきた時点での光の位相差を調べるという。これは,伝送する距離によって位相差が変化するという現象を利用し,局から異なる距離にあるユーザー宅を識別する。現在,2ユーザーの識別が可能であることを実験で確認しているという。

 ただし,この方法では,たまたま局から同じ距離にあるユーザーは識別できない。どの程度の距離の違いまで検出可能なのか,その分解能について調べていくという。1メートル以下のオーダーで距離の違いを識別できるなら実用上問題ないようだが,現段階では「この方法では困難という感触を得ている」(同社AS研 光アクセスシステムプロジェクト 次世代アクセス方式グループの田代隆義氏)という。今後は,まったく新しい方法についても検討していくとしている。