クラウドとアドビの技術をつなぐ
クライアント側で展開する事例の紹介はここまで。次からは,既存のウェブサービス,APIといったいわゆる「クラウド」とアドビの技術をつなげる話に移った。
最初は,エンタープライズ向けウェブアプリケーション構築フレームワークのAdobe Flexについて取り上げた。「簡単にいろんなプロバイダからのアプリケーションがマッシュアップできるように」(リンチ氏)と作ったAIRアプリケーションが,「Tour de FLEX」だ(写真5)。
インストールして実行すると,200の動作サンプルをソースコードとともにダウンロードできる。Flex Data Access,AIR Desktop Capabilities,Cloud APIsといったコンポーネントが,各種ウェブサービスAPIとともに入手できるので,Flex入門にうってつけだという。リンチ氏によるとFlexの開発者は現在,世界で15万から20万人ほどという。今後は100万人達成を目指す。
アドビが重視するキーワードの2点め,「ソーシャル・コンピューティング」に関する取り組みのサービスもお目見えした。Adobe Flexフレームワークのエクステンションサービスとして提供する予定のPlatform as a Service (PaaS)「Adobe Cocomo(コードネーム)」の開発が進んでいる点を強調した。サービスに登録するとチャットやホワイトボードといったソーシャル・アプリケーションのライブラリが使える。現在は無償のパブリック・ベータ。今後開発者の活用状況を確かめながら,2009年には購入モデルの検討に入る予定だ。
次に,デスクトップ上に既存のサービスからの通知情報(ノーティフィケーション)を表示するSoftware as a Service (SaaS) 「Adobe Wave」のプレリリース・プログラムを本日より公開したことを発表。ユーザーはREST APIに対応したソーシャルネットワーク上の「更新通知」などを,ブラウザで確認せずにAIRアプリケーション上で表示できるという。異なるポータルの通知を一手に集められるため,ユーザーは確認の手間を減らせる。
Google携帯でFlashが動く
最後の「デバイス+デスクトップ」のキーワードに関する取り組みについて,「PCでのコンテンツ閲覧は今やマイノリティ」と位置付け,今後ますます携帯で動作するFlashの需要は高まるとの予測から始まった。これまでにFlashPlayer10の動作を確認している機器を紹介。まずSymbian OS搭載のノキア端末で動いているコンテンツで音声を再生するデモと,Windows MobileでYouTubeを視聴する様子を見せた。
次にリンチ氏はiPhoneを手にして会場を沸かせたものの,「こっちは(iPhoneを作った)シェフにお願いしてからじゃないと」と未搭載の無念さをつぶやき,参加者をがっかりさせた。
最後にT-Mobileのいわゆる「Google携帯」でFlashPlayerが動作する様子を紹介し,Androidを搭載した端末のブラウザにFlashPlayerプラグインが組み込めることを述べた(写真6)。現時点ではWindows MobileとAndroidにFlashPlayer10は搭載されていないが早期の組み込みを目指すという。
この場合,Flashはウェブページに貼付けた素材という位置付けだが,別の記者会見で「携帯電話のUI構築手段としてAIRなどが選択できるようになる可能性はあるか」という質問に対し,リンチ氏は「現在NTTドコモと有効な関係を築いている。NTTドコモが今後よい決断をしてくれると確信している」と肯定的だった。「Google携帯」ならぬ「Adobe携帯」登場の可能性もあるかもしれない。壇上ではGoogleのAndroid開発責任者アンディ・ルービン氏が登場し「これぞまさにオープンプラットフォームだ」とアドビの取り組みを讃えた。