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写真●早稲田大学大学院 情報システム研究科 客員教授の丸山不二夫氏
写真●早稲田大学大学院 情報システム研究科 客員教授の丸山不二夫氏
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 「Windows Azureの登場はクラウド時代の始まりという歴史の大きな転換点になるだろう」--。2009年1月27日,マイクロソフトが主催する開発者向けイベント「Microsoft Tech Days 2009 “Best of PDC”」の講演に早稲田大学大学院 情報システム研究科 客員教授の丸山不二夫氏(写真)が登壇。「パラダイムシフト--Azureから見えてくるもの」と題して,マイクロソフトのクラウドOS「Windows Azure」と,クラウド・コンピューティングの今後の方向性について意見を述べた。

 丸山氏は「Windows Azureに強い興味を持っている」と話し,その理由を「マイクロソフトが本気でクラウドをビジネスにしようとしているため」「Azureは,クラウドかオンプレミス(プログラムが自社内のコンピュータで実行されること)かの2者択一を迫るのではなく,両者の共存や移行がスムーズにいくようによく考えられているため」と説明した。どちらもほかのクラウド・サービスには見られない特徴だという。「Azureは明確にクラウドOSという位置づけで登場した。先行したGoogleやAmazonにも似た技術はあったが,残念ながらクラウドOSを作ろうという考えはなかった」(丸山氏)。

 Windows Azureの特徴について丸山氏は「Webアプリケーションが柔軟にスケールアウトできること」と説明する。クラウド・コンピューティングでは,ビジネスの要求に応じた規模拡大が重要になる。Webアプリケーションは,ユーザーに近い側から,Webサーバーの「Webロール層」,ビジネス・ロジックの「Workerロール層」,「データベース層」という3階層で構成する。このうち,Webロール層とWorkerロール層は容易にスケールアウトできる。Webサーバーをたくさん並べ,フロントエンドにロード・バランサを置いて処理を分散すればよい。だが,データベース層は簡単に多重化できないため「スケールアウト戦略のボトルネックとなっていた」(丸山氏)。Windows Azureはこの問題を解決する。

 Windows Azureは,Webロール層とWorkerロール層を直接結合せずに,それぞれがデータベース層やキューを通じて疎結合になった構造をとる。この構造について丸山氏は「WebサーバーとWorkerロール層がそれぞれスケールアウトする場合,密な結合ではうまくいかない」と説明する。Webロール層とWorkerロール層がどちらかをロックせずにデータベース層にアクセスし,ロールを自由に増減できるので,データベース層がスケールアウトのボトルネックにならないという。

 また丸山氏はWindows Azureの要素技術である「SDS(SQL Data Service)」に言及。「クラウドは基本的にスケールアウトするものだが,マシンが増えれば必然的に故障が増える。スケーラビリティ,アベイラビリティをどう両立させるかという問題に対して,非常にきれいな解を出しているのがSDSだ」と評価した。

 最後に丸山氏は,クラウド・コンピューティングの影響で「“サービスの結合はサービスである”というSOA(サービス指向アーキテクチャ)にとっての強力な武器にパラダイム・シフトが起こる」と予測した。クラウドのデータセンターへの関心の高まりは,「粒度は大きいが汎用性のあるサービス群が存在していることを示す」と丸山氏は考える。このため,スケーラブルなデータセンターや要求に応じて自動的にスケールアウトするWebサーバーがサービスとして提供され出したとき「SIerの役割にシフトが起こるだろう」(丸山氏)。そのため,「未来を定義することはできないが,各人・各企業が近未来の展望として自分なりのクラウドのイメージを持つことは大切」(丸山氏)と指摘した。