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 総務省は2009年2月16日,インターネットの健全な発展を図るための課題と,今後の政策の方向性を議論する「インターネット政策懇談会」の第9回会合を開催した。

 今回の会合では冒頭で,日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)とNTT東西からIPv6マルチプレフィックス問題の検討状況に関して説明があった。IPv6マルチプレフィックス問題とは,端末に二つのIPv6アドレスを割り当てた際に正常に通信できなくなる問題のこと。NTT東西のNGN(次世代ネットワーク)上でインターネット接続事業者(ISP)のIPv6インターネット接続サービスを利用する場合にこの問題が生じるため,JAIPAとNTT東西は解決に向けた協議を進めていた。

 対処方法にはJAIPA提案に基づき,(1)トンネル方式(ISPで終端),(2)トンネル方式(NGNで終端),(3)ネイティブ方式の三つが挙がっていた(関連記事)。すべての方式を同時に検討すると時間がかかるため,JAIPAとNTT東西はまず(2)を優先的に検討していた。しかし,今回の会合では(2)とは別に,新たに第4案の検討も進んでいることが明らかになった。

 NTT東西によると,JAIPAとは別に一部のISPから(3)ネイティブ方式をベースにした新しい提案があったという。その第4案とは「NGNと代表ISPの網をレイヤー3で接続し,代表ISP網経由でIPv6インターネット接続を提供する」というもの。(3)の方式はそもそもマルチプレフィックス問題が起こらないので対処方法として理想的だが,NTT東西のIPv6アドレスだけを利用してNGNからインターネットに直接接続するため,ほとんどのISPが「事業継続性に重大な懸念が生じる」として反対していた。

 そこで第4案では,代表ISPがIPv6アドレスを払い出す方式となった。ただ,代表ISPは当面,「最大3社まで」(NTT東日本)。この3社という制限は,NGNの処理能力に限界があるため。「代表ISPの数が増えると,その分,経路数も増える。エッジ・ルーターに大容量のメモリーが必要になるだけでなく,(障害時の)経路の再計算処理にも相当な負荷がかかる。ひかり電話のQoS制御に影響を及ぼさない範囲で考えると,現状では最大3社までとなる」(同)。

 代表ISPの3社以外のISPはIPv6アドレスの配布をはじめ,ユーザーの開通や廃止などの処理を代表ISPにアウトソースする形態になる。このため,JAIPAは「第4案ではISPの独自性を奪われてしまう。代表ISPが3社というのも公正競争上,大きな問題がある」として反対している。

 一方,(2)はJAIPAとNTT東西とで協議を進めているが,「(案2の実現に要する)NTTのコストが本当に正しいものかどうか分からない」とJAIPAが不満を訴えている。

 (2)の実現コストは当初,「数字が独り歩きする」として開示していなかったが,懇談会の構成員の質問で一部明らかになった。(2)を導入する場合,ユーザー宅のHGW(ホーム・ゲートウエイ)の取り替えに1台当たり約2万4000円かかるという。その対象はNTT東西合計で約700万台。単純に計算すれば,HGWの取り替えだけで約1680億円(2万4000円×700万台)かかることになる。これに,NTT東西の網改造費用などを加えた導入コストをISP側で負担することになる可能性が高い。