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左からNTTの宇治副社長,アスクルの岩田社長,日本経済新聞社の関口編集委員,イプシ・マーケティングの野原社長
左からNTTの宇治副社長,アスクルの岩田社長,日本経済新聞社の関口編集委員,イプシ・マーケティングの野原社長
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 2月20日に開催された「NTT R&Dフォーラム 2009」のパネルディスカッションには,アスクルの岩田彰一郎社長,日本経済新聞社の関口和一編集委員,イプシ・マーケティングの野原佐和子社長,そしてNTTの宇治則孝副社長が登壇した。テーマは「未来を拓くICTダイナミズム ~NGN時代に期待されるサービスとは?~」。ネットビジネスの実践者,ジャーナリスト,コンサルタントの立場から,それぞれITサービスやNTTへの期待を語った。

 自己紹介を兼ねたポジショントークで岩田社長は,SaaS(software as a service)を活用した間接材一括購買システム「ソロエル」など,常に新しいネット技術を活用することで成長した同社の取り組みを紹介した。その上で,委員長を務めた経済同友会の「IT による社会変革委員会」の提言を引用しながら,あらゆる産業がITインフラを活用することで進化を続ける「ITイノベーション産業の創出」などITを積極的に活用した社会の構築を提言した。最後は,「NTTのインフラとナレッジは日本の宝だ」とまとめた。

 関口編集委員は,Web2.0やソーシャルウェブの台頭,ネット上の映像配信の広がりなど世界規模でネットの変革が進行し続けていることをコンパクトに紹介したのに続き,現在の日本が直面する課題を3つにまとめた。1番目は国内市場で技術やサービスが進化するものの国際的な競争力を持たない「ガラパゴス化現象」。2番目が個人情報の保護に過剰反応して利便性を失っている「個人情報保護アレルギー」。3番目が,著作権を保護するあまりに新しいサービスを生み出せない「著作権過保護体質」である。

 「新しい視点を提示したい」と話し始めた野原社長は,現在のITサービスを「パソコンを中心とした,高度な情報リテラシーを伴う自由な世界」と,「家電や携帯電話を中心とした,簡単に使うことを念頭に置いた世界」の二つに分類,現在は前者が優勢だが,今後は後者が中心になるのではないかと述べた。日本ではITの利活用が遅れているという指摘については,現状は「やりやすいところに着手した段階」とし,今後は,やりにくいところをどう進めていくかが課題だとまとめた。「やりにくいところ」とは,複数のサービスにまたがる分野や,手続きや業務そのものの見直しが必要な分野,法制度の改正を伴う分野である。

 宇治社長は,ICTの現状を「サービス融合」,「パラダイムシフト」,「グローバル化」というキーワードで表現,利便性が世界一とされる通信インフラが整備された現在,課題は利活用にあるとした。今後の方向性については,「所有から利用」,「社会インフラ化」,「サービスのパーソナライズ化」であるとまとめた。

NTTへの期待は「スピード感」,「ビジョンの提示」

 後半のディスカッションでは,コーディネータを務める宇治副社長が今後のICT利活用の課題について改めてたずねた。岩田社長は「何のために努力するのか考えるときだ」として,生活を豊かにするサービスを実現するという原点に立ち返る重要性を強調した。野原社長も「ユーザーは,ICTを使いたいわけではない」と同じ考えを示した。例として,プロテニス・プレーヤの錦織圭選手が所属するテニス・スクールで映像を撮影していることを紹介,それを後から見直せるだけでも十分な成果を上げているとした。

 2番目のテーマはICTによる成長力強化である。岩田社長は,過去の取り組みを振り返り,「社会最適」というキーワードを示した。持続的に成長するには,社会環境の変化に合わせて合理的でないといけないという考えに基づいて起業したのだという。

 関口編集委員は,ICTの活用が遅れている分野として「行政」,「教育」,「メディア」の3つを取り上げた。共通するのは,「かつては情報が集まる場所だった」こと。その優位性ゆえに,積極的な導入を怠ってきたという分析だ。いずれの分野でも,実行するうえでのメリットを見出すことが課題だとした。

 最後のテーマであるNTTのICTへの課題と期待について野原社長は,マーケティングと研究開発(R&D)の融合だとした。R&D部門でも,研究成果を実用化につなげられるよう,事業化推進のための人材を登用できないのか,グループ外への事業化の道は広げられないのかと提言した。

 関口編集委員は,日米の情報戦略を振り返り,1980年代は日本,1990年代は米国,2000年以降は日本がリードしているという分析を示した。NTTが示したINSやVI&P構想に米国が刺激を受けて巻き返したが,その後,政権が民主党から共和党に移り停滞期を迎えたというものだ。節目となる2010年を前にNTTがNGN(次世代ネットワーク)を始めたことを踏まえ,「スピード感をもって,ちゃんとやって欲しい。中途半端はいけない」と注文した。

 岩田社長は,最初のポジショントークで「NTTは宝だ」と発言したことに触れ,「責任が重大である」ことを意味したものだと説明した。続けて,イノベーティブな存在であって欲しい,技術と文化のつながりを含めてビジョンを作って伝えて欲しいと期待を示した。