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 金融庁は2009年3月24日に実施した第19回企業会計審議会監査部会で,「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン注記)」にかかわる部分の改訂を主な目的とする監査基準の改定案を公表した。現行のゴーイングコンサーン注記の判断基準を国際基準に合わせて,投資家の不利益を避ける。国際基準のほうが事実上“緩い”ことから,業績を悪化させる企業が多い状況に対応する狙いもある。

 ゴーイングコンサーン注記は,「継続企業の前提」すなわち「企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提」に「重要な疑義を抱かせる事象または状況」が存在する場合に,その情報を開示するもの。重要な疑義を抱かせる事象または状況とは例えば,「売上高が著しく減少している」「債務超過」「社債などの返還が困難」「事業活動に不可欠な人材が流出」などをいう。上場企業はこれらを財務諸表に注記として開示しなければならない。ゴーイングコンサーン注記も監査対象となる。

 日本における現状のゴーイングコンサーン注記は,米国基準や国際基準と異なる。日本では重要な疑義を抱かせる事象または状況が存在する場合,必ずゴーイングコンサーン注記を記載する必要がある。これに対し米国基準や国際基準では,重要な疑義を抱かせる事象または状況が存在する場合,経営者の対応や経営計画を検討・評価する。その結果,継続企業の前提になお「重要な不確実性」があると判断した場合に,ゴーイングコンサーン注記を記載することになる。

 監査部会で公表された監査基準の改定案は,ゴーイングコンサーン注記を米国基準や国際基準に合わせるのが狙いだ。改定案では,重要な疑義を抱かせる事象または状況が存在する場合,「当該事象または状況を解消・改善するための対応をしても,なお『継続企業の前提』に関する重要な不確実性が存在」し,さらに「貸借対照表日後も継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在」する場合に,ゴーイングコンサーン注記を記載する,としている。

 これまでゴーイングコンサーン注記に記載していた事項の中で,新基準では注記に至らない情報は「事業等のリスク」や「財務状態,経営成績およびキャッシュフローの状況の分析」といった監査対象外の記載として開示する。金融庁側は部会で「情報の開示レベルは変えない。掲載する位置を変えるという話だ」と説明した。

 改定案では,現行の監査基準の「第三 実施基準」「第四 報告基準」のほか,「財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号),「『財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則』の取扱いに関する留意事項について」,「企業内容等の開示に関する内閣府令」(昭和48年大蔵省令第5号),「企業内容等の開示に関する留意事項について」(平成11年4月大蔵省金融企画局)に関する改定案を示した。

 時期については「改訂監査基準は,平成21年3月決算にかかる財務諸表の監査から実施する」としている。準備期間が短いので,部会では監査担当者に対する教育や啓蒙が間に合うのか,新たな基準を徹底させることができるのか,といった懸念の声がいくつか上がった。これに対し金融庁側は「あらゆるチャネルを使って徹底していく」と答えた。

 改定案は部会での議論を反映させて,近く草案として公開し,パブリックコメントを募る。「3月決算期にかかるので,通常より期間は短めにする」(金融庁)。その後,4月9日に監査部会を開催し,パブリックコメントを踏まえて議論して正式な改定案を作成する計画だ。