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 抗がん剤の研究開発を行う創薬ベンチャーのキャンバス(静岡県沼津市)は2009年4月3日、新薬候補の探索のためにNECの技術を導入すると発表した。アミノ酸が複数つながった分子「ペプチド」の中から薬としての効果を持ち得る分子を選出する作業を効率化する。一つひとつの分子を調べていく従来のランダムスクリーニング法と比べ、効率が100倍以上に上がるという。新薬候補探索の効率と費用対効果の向上を狙う。

 今回キャンバスが導入を決めたのはNECの医薬品候補物質探索ソフト「ChemMiner」の技術だ。キャンバスとNECは同ソフトを使って約400種類のアミノ酸変異体で構成するペプチドを解析し、効率的に新薬候補物質を探索できる技術を開発した。様々なペプチドの長さや、ペプチドを構成するアミノ酸として20種類の天然アミノ酸以外に400種類のアミノ酸変異体まで解析範囲を広げた。両社は08年1月から探索技術の検証と実証実験を共同で進めてきた。

 ChemMinerはデータマイニング技術と能動学習法を中核機能として備える。能動学習法とはコンピュータ自身が学習に有益なデータを選出して学習する方法。薬としての効果を持ち得る分子に共通した構造を見つけて学習することで、効き目の分からない多数の分子の中から効果を持ちそうな分子を選択、優先的に活性測定実験を進める。実証実験での探索効率はランダムスクリーニング法の0.1%に対し、数10%だった。

 キャンバスは正常細胞に影響の少ない抗がん剤の研究開発を行う創薬ベンチャー企業。現在開発を進めている化合物は武田薬品工業と共同事業化契約を締結し、すでに米国で臨床試験を進めている。