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 欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)はベルギーで現地時間2009年4月14日,英国の法律がEUの定める規則にのっとっていない疑いがあるとして,同国に対する侵害訴訟(infringement proceeding)の手続きを開始したと発表した。利用者の同意なしに通信の傍受や監視を行ってはならないとする規定を満たしていない部分があるという。

 事の発端は,英オンライン広告技術会社Phormの行動ターゲティング広告技術を同国のISPがひそかに利用したこと。英BTが2006年~2007年にPhormの広告技術をユーザーに伝えずに試験導入したという。ユーザーのWeb閲覧を絶えず分析し,興味に合った広告を表示する。この導入が利用者の反発を招き,英情報委員会(ICO:Information Commissioner's Office)や英警察などの同国機関に苦情が寄せられた。

 ECは,この件に関する調査を通じて,同国の法律には構造的問題があり,EUの規定を満たしていないと判断した。ECによると同国法律では,通信を不当に傍受することは違法との定めがあるが,その対象範囲は意図的な傍受に限定されている。また,傍受を行った側に,傍受に関する同意が得られたと判断する合理的根拠があれば,傍受は合法とみなされる。こうした点が,利用者の具体的かつ明確な同意を得ずに傍受や監視を行うことを禁じたEU指令(EU Directive)を満たしていないとECは指摘する。また,こうした監視について扱う独立した監督機関が同国にないことにも懸念を示している。

 ECは侵害訴訟手続きの第1段階として,英国側の見解をただす正式通知書を送付し,2カ月以内の回答を求めた。回答がなかった場合や,回答が不十分と判断した場合は,第2段階として理由付き意見書を送付し,それでも対応がなされなかった場合は,欧州司法裁判所(European Court of Justice)に委ねることになる。

 EU電気通信担当コミッショナーのViviane Reding氏は,「インターネットの行動広告のような技術は,企業や消費者にとって役立つ可能性がある。だが,EUの規則にのっとって利用されなければならない。こうした規則は市民のプライバシーを守るために定められており,すべての加盟国が厳格に順守しなくてはならない」と述べている。

 今回のECの動きに関して,Phormも声明を発表した。この件はECと英国政府の間の問題であるとしたうえで,同社の技術は英国の法律やEUの規定を完全に順守していると述べ,ECの発表の中にもPhormが法令に違反しているとの言及は一切ないと指摘した。ECの今回の動きが同社の今後の計画に影響を与えることはないと考えているという。

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