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 三菱UFJ証券は2009年5月20日、同社システム部の部長代理だった元社員(4月8日付で懲戒解雇処分)が不正に取得した約148万人分の顧客情報のうち約5万人分を売却した事件で、情報を売却された約5万人に1万円相当のギフト券を送付すると発表した(関連記事1関連記事2関連記事3)。この種の漏洩事件の謝罪として1万円は異例の高額。これまでの相場は500円から1000円程度だった。

 「顧客におかけする迷惑に対しての、我々のお詫びの気持ちとして受け取っていただきたい」と会見した秋草史幸社長は陳謝した。1万円という金額については、有識者らの意見や過去の事例を参考に「顧客の皆様におかけする迷惑と事件の重大性をかんがみて、総合的に判断した」と説明する。総額で5億円近い費用は三菱UFJ証券が負担する。元社員への損害賠償も今後検討するが、今回のお詫び送付とは別の話とした。

 同事件では顧客情報が名簿業者に売却され、顧客に執拗な勧誘電話がかかってくるなどの被害が発生していた。対象となる約5万人に確実に送付するため、7日間再配達可能、午後9時まで時間指定可能など確実性の高い宅配サービスを使うという。6月26日ごろに顧客の手元に届く予定。

 顧客情報を入手した可能性のある会社は4月17日時点の77社から95社まで拡大した。顧客から問い合わせがあった、同社から流出した情報を使用している可能性がある会社が48社から66社に拡大した。三菱UFJ証券がすでに確認している名簿業者29社は拡大はなかった。

 同社はこれまで代理人弁護士を通して名簿業者や勧誘業者に対し、違法に流出した名簿を使った勧誘の中止と名簿の転売、転用をしないようにとの警告文を送付した。並行して名簿の回収も進めている。こうした取り組みにより、勧誘の実態は減少傾向にあるとする。

 「依然として勧誘を続けているのは10社程度」と前田孝治常務は説明した。このうち頻繁に勧誘を続ける業者は不動産投資会社2社。しかし両社とも、4月17日時点での発表にあったような1日に複数回の勧誘はなくなっているという。

 顧客からの問い合わせ件数は、5月19日時点で1万2447件に達した。4月17日時点で7492件だった。このうち約4900件が実際に勧誘などの被害に遭った顧客からの苦情や相談だ。残りは自身の情報が売却された約5万件に含まれるのかといった問い合わせという。

 事件による同社の経営への影響は「いくらもうけ損ねたかを説明するには、いくらもうける予定だったかが分からなければいけない。もうける予定は相場で左右されるので、金額は概算でも説明できない」(秋草社長)と明言を避けた。弁護士費用も現段階ではいつまで相談が必要かの見通しが立たないことから経営への金額の影響は明示しなかった。

 顧客の動向として、当初予想していたような解約や口座閉鎖はほとんどないという。実数値についての明言は避けたが、「ほんのわずかだ」(秋草社長)と説明した。

 同社が立ち上げたお客さま情報流出対策本部は、社外の有識者や専門家による調査委員会から事実調査、原因究明、再発防止策の提言を織り込んだ最終報告を受け取ったという。現在は報告に基づいた抜本的な再発防止策の策定を進めている。