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マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンBTO日本代表の横浜信一氏
マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンBTO日本代表の横浜信一氏
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野村総合研究所 情報技術本部技術調査部 上級研究員の城田真琴氏
野村総合研究所 情報技術本部技術調査部 上級研究員の城田真琴氏
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 2009年7月16日に開催した「エンタープライズ・クラウドフォーラム」で、野村総合研究所 情報技術本部技術調査部 上級研究員の城田真琴氏、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンBTO日本代表の横浜信一氏が「見えてきた企業向けクラウド、その真のメリットと課題を語る」と題したオープニング討論を行った。モデレータはITproの吉田琢也編集長が務めた。

 討論の最初に、マッキンゼーのリポート「Clearing the Air on Cloud Computing(クラウドコンピューティングにかかっている雲を吹き払う)」について横浜氏が解説した。一部報道で、「マッキンゼーがクラウドの可能性に待ったをかけた」などと捉えられ、物議をかもしているためだ。

 横浜氏はこのレポートの真意を、「クラウドの可能性について極めてポジティブに分析したレポートである」と報道を否定。さらに、「クラウドは中堅企業においては極めて有効。ただ、大企業においてはケース・バイ・ケースである」として、「このケース・バイ・ケースの部分を否定的にとられたのではないか」とした。

 これについて城田氏も、「すべてをクラウドに乗せるのは、多くの大企業にとって現実的ではない。むしろ、このレポートはマスコミによるクラウドの過熱報道をけん制するようなメッセージであると受け取った」と横浜氏の説明を支持した。

 では、改めてクラウドにはどのようなメリットがあるのか。クラウドを様々な利用者で共有する「パブリッククラウド」と、IT資産をクラウドに乗せるという概念を個別企業単位で追求する「プライベートクラウド」の2つに分けて議論が進められた。

 パブリッククラウドのメリットとしては、ITインフラとして利用することにより「持たざる経営につなげる」(横浜氏)ことやスピード重視の開発体制の構築、従量制課金による一時的な利用や伸縮性の高いシステム構築が可能なこと──が挙げられた。

 特に、伸縮性の高いシステム構築は「技術的に見て最も注目すべき点」(城田氏)であるという。例えばオリンピックのWebサイトでは、4年に一度、しかも2カ月程度がコアな情報発信となる。こうしたサイトにとって、伸縮性の高さが大きなメリットとなる。

 「資産を持つのではなく、資産を使う権利を持つ」(横浜氏)ことがクラウドの登場により可能になったことは、IT資産に対する考え方を大きく変えようとしている。「企業のIT資産は過去10年で大きくなっている。今やIT資産はCIO(最高情報責任者)だけの問題ではなく、CFO(最高財務責任者)の問題になってきている」(同)という流れにも、クラウドのメリットは合致する。

 パブリッククラウドのもう一つの重要な視点は、中小企業の課題解決においてはほとんどがメリットである一方、大企業にとってはメリットになりづらいということだ。「パブリッククラウドは大企業にとって、自分たちでコントロールできないところに問題がある。一カ月だけ使いたいというような、限定的で補完的なところにのみ需要がある」(城田氏)。セキュリティやBPO(業務継続性)などの点でも本格的な導入はしづらい。

 一方、プライベートクラウドであれば自社のセキュリティーポリシーの徹底や既存アプリケーションの移行がしやすい。大企業がクラウドを導入する上で重要となる「自分たちでコントロールができるか否かの問題を解決できる部分が多い」(城田氏)。

 ではコスト的にはどうなのか。城田氏が披露した10年間使い続けることを前提にしたシミュレーションによると、50ユーザー程度の中小企業による利用であれば、クラウドによるコストメリットを享受できる。しかし、大企業ではコストメリットを出しづらく、むしろ既存システムに比べてクラウドの方が割高になることもあるというのだ。

 これについて横浜氏は、「月額コストと長い目で見たコストを比べると、同じ数字でも全く意味が異なる。クラウドを導入するには、時間軸を含めて評価することは大前提」と注意を促した。

 討論の最後に、IT資産運用における「新しい選択肢ができたと考えるべき」(城田氏)とし、クラウドはユーザー企業にとって、その活用領域とメリットを冷静に考えて導入を検討することが重要であるとした。