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写真●野村ホールディングス 執行役 グループ・コンプライアンス統括責任者,IT統括責任者,グローバル決済担当の田中浩氏
写真●野村ホールディングス 執行役 グループ・コンプライアンス統括責任者,IT統括責任者,グローバル決済担当の田中浩氏
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 「コンプライアンス・リスクのないビジネスはない。重要なのは,リスクを避けることではなく,リスクの度合いを見極めて適切にマネジメントすることだ」。2009年9月2日,「エンタープライズ・リスク・マネジメント 2009」の基調講演に,野村ホールディングス 執行役 グループ・コンプライアンス統括責任者の田中浩氏(写真)が登壇。「グローバルビジネス時代のコンプライアンス」と題して,コンプライアンス・リスクに対応するための心構えと,企業のグローバル化に伴い台頭してきたコンプライアンスの課題について述べた。

 まず,田中氏はコンプライアンスを管理する側(コンプライアンス部門)に必要な心構えを説明した。「コンプライアンス部門は,ビジネスを推進しようとするフロントと往々にして対立する」(同氏)。この問題を避けるために田中氏は,コンプライアンス部門にはフロントとコミュニケーションを取る能力が必要だと考える。「コンプライアンス部門の立場で,リスクのあるビジネスにゴーサインを出すのは大変なことだが,フロントとコミュニケーションが取れていれば実現できる」(同氏)。

 また,フロント側も,コンプライアンス部門に対して「絶対にウソをついてはいけない」(田中氏)。ビジネスの推進を考えるあまり,フロントはコンプライアンス部門にネガティブな部分を話したがらない。しかし,そのような対応によって,コンプライアンス側はフロントからの情報に懐疑的になる。その結果,保守的な判断しか下せなくなる。野村ホールディングスでは,フロントに対して「相談するときはビジネスの全容を説明する」「抽象論ではなく具体論で相談する」「コンプライアンスとの議論に無駄な時間をかけない」という3原則を課している。「コンプライアンスとの議論に無駄な時間をかけない」というのは,「コンプライアンス部門がリスクを指摘するビジネスを押し通そうとしない」(同氏)ことだ。

 次に田中氏は,証券業界のグローバル化に伴うコンプライアンスの課題に言及した。野村ホールディングス自体も,2008年9月に米リーマン・ブラザースの事業を継承して以降,海外人員が3倍以上に増加するなどグローバル化が進んでいる。M&Aとグローバル化で,まずコンプライアンスの課題に挙がったのは「インサイダー情報の管理」だという。国家や企業をまたぐ人材やITインフラが混在し,「何がインサイダー情報にあたるのか混乱してきた」(同氏)。インサイダー情報とは「上場企業の情報」で,かつ「投資判断に影響する情報」「未公開の情報」のことである。「管理対象の情報が増えると,管理が機能しなくなる恐れがある。M&Aの後は,何がインサイダー情報にあたるのかを整理する必要がある」(同氏)。

 さらに,金融機関のコンプライアンスにおいては「コンフリクト(利益相反)マネジメント」も重要な課題になってきた。これは,国内企業と海外企業のM&Aの増加と,金融機関の数の減少によるものだ。例えば,A社がB社を買収する場合に,A社に融資している金融機関がB社のアドバイザーに立ってよいか,という問題である。田中氏は「あらゆる案件でコンフリクトが発生する可能性を考え,早い段階でリスク判断をする必要がある」と指摘した。