「クライアントパソコンのバックアップ製品の販売を始めた7年前、顧客企業に説明に行くとファイルサーバーで十分と言われた。その状況がこの2~3年前で大きく変わり、最近では顧客企業からバックアップの要望が出てきた」。こう話すのは加賀ソルネットの石井克弥システム営業部営業支援課マネージャー(写真1)だ。データセンターを運営するほくでん情報テクノロジーの皆川和志データセンター事業部長(写真2)も「データセンターが普及して10年。最近、BCP(事業継続計画)の普及により、データセンターを利用したバックアップが浸透してきた」とみる。
リスク管理の展示会「エンタープライズ・リスク・マネジメント 2009」で2009年9月3日、「BCPの現実解~敷居が下がってきた遠隔地へのバックアップ~」と題したパネルディスカッションが開催された。このパネルディスカッションでは、加賀ソルネットの石井マネージャーとほくでん情報テクノロジーの皆川事業部長が登壇、モデレータはITpro副編集長の尾崎憲和が務めた。
ほくでん情報テクノロジーの皆川事業部長は「10年の間で遠隔地のデータセンターを利用したバックアップに対する目的も変わってきている」と指摘する。最初は単純にBCPの観点からデータの消失を防ぐ「安心が目的だった」(皆川事業部長)。それが最近では、災害が発生した際にすぐシステムを復旧できる体制作りまでを目的にすることが多くなったという。
そこで、ほくでん情報テクノロジーでは、災害が起こった際の基幹システムの復旧訓練を、顧客企業である住宅メーカーとともに毎月実施している。住宅メーカーが、ほくでん情報テクノロジーのデータセンターに預けているシステムは、会計、受発注管理、住宅管理といった業務遂行に欠かせないシステムだ。「当初、72時間以内に基幹システムの復旧を目指していた。それが訓練やシステム復旧を考慮したシステム構築により最近では36時間以内に復旧できるようになった」と皆川事業部長はその成果を話す。
基幹システムと同様に、「パソコンのバックアップも遠隔地に実施する方が有効」と加賀ソルネットの石井マネージャーは指摘する。石井マネージャーは、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ事件でワールドトレードセンター(WTC)に入居していたコンサルティング会社の例を挙げる。このコンサルティング会社は、WTC内に加え、対岸にあるニュージャージー州に、社員のクライアントパソコンのデータをバックアップしていた。そのため被災後、新規に構えたオフィスに用意した新しいパソコンにバックアップデータを呼び出すだけで業務を再開できた。「復旧には数カ月を要すると言われていた中で、数日で業務を再開できた事例だ」と石井マネージャーは強調した。