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写真●三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部 社会安全マネジメントグループの柴田高広 主任研究員
写真●三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部 社会安全マネジメントグループの柴田高広 主任研究員
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 「企業で事故や不祥事が起こると,直接的な原因について対策を講じることは多い。ところが,同様の事故や不祥事が再発することが少なくない。事故や不祥事の根本原因として多い“組織文化”を見直していないからだ」。三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部 社会安全マネジメントグループの柴田高広 主任研究員(写真)は,こう指摘した。

 柴田氏は,企業向けに組織文化の簡易診断サービスやコンサルティングを手がけている。2009年9月4日,リスク・マネジメントに関するイベント「エンタープライズ・リスク・マネジメント 2009」で,「組織文化のマネジメント」をテーマに講演。リスクマネジメントにおいて,組織文化にメスを入れることの重要性を説いた。

コミュニケーション,組織設計,リーダーシップの改善が必要

 柴田氏は,事故の多くの根本原因が組織文化であることを,事例を挙げて説明した。例えば,NASA(アメリカ航空宇宙局)のスペースシャトル,チャレンジャー号の打ち上げ事故では,ゴム製の部品が寒波によって弾力性を失い,燃料が漏れ出したことが原因だとされている。

 しかし,柴田氏は「シャトルを打ち上げなければならない,という結論ありきの意思決定を許す組織文化が根本原因」と指摘。「そのようにみなして,対策を講じる必要がある」と語った。安全を優先するという組織としての理念を明確にして,シャトルの打ち上げを急ぐNASAや製造メーカーの首脳の意思決定に歯止めをかけるプロセスを組織に組み込んでおかないと,いくら部品の改善をしても類似した事故は再発し得るからだ。

 柴田氏はシャトルのほかにも,いくつかの事例を紹介した。安全最優先ということよりも,納期厳守や作業遅れの回復といった指示を上司が部下に強調して伝えたことで,部下が安全面をおろそかにしがちになる「誤ったメッセージ」,作業負荷が集中している現場に安全管理を任せきりにする「過剰な負荷集中と根性主義」,上司や経営陣がしっかり受け止めてフィードバックしないために,現場から問題点などが上がってこない「報告されないマイナス情報」などだ。いずれも「組織文化が根本原因で起こっている」と柴田氏は説明する。

 組織文化をマネジメントして,企業リスクを回避するには,「コミュニケーション,組織設計,リーダーシップの三つを改善していくことが大切だ」と柴田氏は主張する。改善すべき点が見つかれば,役職や部署,社内外の枠を超えた社内研修をきっかけに社内外のコミュニケーションを活性化させたり,リーダーとして部下に伝えたいことと部下が受け止めている内容にずれがないかを確かめたりすることを通じて,組織文化を改善していくのが有効だとする。

 ただし,組織文化を変えるのは簡単でない。柴田氏は「組織文化を改善する際に,社員の意識だけを変えようとしてもなかなかうまくいかない」と話す。「社員の意識だけでなく,社員を取り巻く業務環境を併せて変えていくことが重要だ」と指摘する。