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写真●富士ゼロックスの河田勝之氏
写真●富士ゼロックスの河田勝之氏
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 2009年9月3日,リスク・マネジメント関連イベント「エンタープライズ・リスク・マネジメント 2009」で,富士ゼロックス ソリューション営業部の河田勝之部長(写真)は,同社のJ-SOX(日本版SOX法)対応の次の取り組みについて講演した。

 富士ゼロックスは,J-SOX対応に続いて,業務プロセスの効率化と標準化を全社規模で進めた。そのプロジェクトを率いたのが河田氏である。「内部統制のためのプロセスは重要だが,監査やプロセスの維持にかかる手間やコストは抑えたい。本来業務に集中できる状況にしたかった」(同)。

 社内の効率化だけでなく,“外圧”の高まりへの対応も必要だった。不正会計など不祥事が多発したことで,経営の透明性や説明責任を強く求められるようになった。製品やサービスの安全性,財務の健全性など複数の分野で法規制が強化されつつある。加えて,消費者庁や消費者委員会の設置,風評リスクの増大など,これまでになく消費者の視点を配慮した経営が求められるようになっている。

 今求められる企業経営の形とは何か。同社が出した結論は「見える化により透明性を確保することで,顧客からの支持を獲得すると同時に,ガバナンス強化や効率化を実現する」(河田氏)というものだ。

 まず,どのような業務があるか,問題がどこで起きているかを洗い出す作業を実施。どの業務にどれだけ時間がかかっているか,という定量調査も行った。すると「多くの部署に重複する業務があることがわかった」と河田氏は話す。

 例えば営業部門では,顧客担当の営業,専門営業,システムエンジニア,サポート担当者など,6-7人もの人間が客先に出向くことがあった。これを見直して,顧客を最もよく知る担当営業が一人で顧客対応をし,他の人間は担当営業を助けるという仕組みにした。

 「組織を先に作ると,勝手に自分の仕事の内容を決めて動き始めてしまうもの。やることを決めたら,組織よりもシナリオを作るのが先だ。リストラを繰り返しているうち,こんな当たり前のことに気付かなくなっていた」と河田氏は語る。

 業務を“見える化”した結果,経営層が最も衝撃を受けたことは,「業務プロセスが複雑すぎて,統制を効かそうとすればするほど,意思疎通や情報伝達のスピードが落ち,伝わる情報の質も落ちているという事実」(同)だったという。

部分最適が不正を生み出す

 モチベーションの低下という問題もあった。同社に限ったことではないが,2008年の“リーマンショック”以降,短期間での成果を重視するようになった結果,部分最適や個人主義に走る傾向が強まっていた。「自分だけよければ,という雰囲気が職場に蔓延すればモチベーションが下がる。モチベーションの低下は重大なリスクになる」と河田氏は指摘する。

 ハイリスクの職場には特徴があるという。同社は,職場におけるコミュニケーションの発生頻度と経路をモニターし,そのパターンから問題点を明らかにするROBASというサービスの研究開発を進めている。河田氏は実際の分析結果を示し,「不正が起きた部門では,部分最適に走る傾向が強い。他の部門とほとんど交渉がなかったり,部門長と直属の部下の間のやりとりばかりで横方向のやりとりがなかったりする」と指摘した。

 今後の取り組みについて,河田氏は「コンプライアンスとは何かという質問に答えられる社員は,現状では半分くらいだろう。それでも,お客様の常識が当社の常識である,という原則を全社員に定着させない限り,コンプライアンスは実現しないと考えている」と語った。