企業の会計基準を作成している企業会計基準委員会(ASBJ)は2009年9月8日、収益認識と引当金についての二つの論点整理(ディスカッションペーパー)を公表した。IFRS(国際会計基準)へのコンバージェンス(収れん)の一環として出したもので、IFRSを作成するIASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)の間で実施されている議論を受けた文書だ。11月9日まで意見を受け付ける。
収益認識に関する論点整理は、IASBとFASBの共同プロジェクトが提案している収益認識の考え方である「資産および負債の変動に基づいて収益認識を実施する」について約60ページで解説している。現行の日本の収益認識は、リスクと経済価値の移転などに基づいている。意見を受け付けるために、収益認識の考え方や収益の測定といった考え方や6項目に関しては質問を設けている。
工事進行基準を取り扱った「工事契約の収益認識」や、ポイント付与といったカスタマ・ロイヤルティ・プログラムなどを扱った「複数要素契約」など、現行の実務に影響をあたる可能性の高い6項目については個別に扱っている。
工事契約の収益認識に関して、ASBJの論点整理では「進行基準による収益認識を求めるという現行のあり方を維持すべきである」とのスタンスをとっている。IASBとFASBの共同プロジェクトで、工事進行基準は原則、廃止の方向に動いていることに対応したものだ。
引当金に関する論点整理では、会計基準の適用対象を決定するために、定義や会計基準の適用範囲を明確化することや、引当金の認識要件を見直すことなどを検討課題に挙げている。
収益認識、引当金とも10年には、IASBとFASBの共同プロジェクトにおいて新たなディスカッションペーパーや公開草案が登場予定で考え方などが変更になる可能性もある。いずれも現行の日本の会計基準と比べて考え方が大きく異なることから、「発想の転換が必要。アイデアを理解することが大切」(ASBJ)として「早いタイミングで論点整理を出した」(同)と説明している。