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写真●金融庁総務企画局企業開示課長の三井秀範氏
写真●金融庁総務企画局企業開示課長の三井秀範氏
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 「IFRS(国際会計基準)の強制適用について、日本は米国の先を行くのか、それとも後に続くのか、これが“金融外交”の重要ポイントだ」---。2010年5月19日、「国際会計基準シンポジウム2010」の基調講演に金融庁総務企画局企業開示課長の三井秀範氏(写真)が登壇。2012年を目途に判断されるIFRSの強制適用について、会計基準の設定を巡る“金融外交”の観点から意見を述べた。

 米国は、2014年から米国内企業へのIFRS適用を義務づける是非について2011年までに判断を下すとしている。「国内では、米国がIFRSを適用すれば当然日本も強制適用するという意見が多い。そのため、2011年に米国がIFRS適用を決定しなかった場合、日本は2012年にIFRS強制適用の判断ができるのかという懐疑的な声がある」(三井氏)。

 米国でのIFRS適用に向けた動きについて、三井氏は「政権交代後、後退傾向にある」と分析する。ただし、「米SEC(証券取引委員会)の意見は変化しやすい。担当者が替わるベクトルが真逆になることもある。そのため、国内企業は、米国の短期的な動向に左右されないようにするべきだ」(三井氏)。米国政府内ではIFRS適用に消極的な意見が強まっている一方で、米国内のコングロマリット企業や大手金融機関はIFRSの早期適用を要求している、また、米4大監査法人は公式にIFRS強制適用を支持しているという。

 では、2011年に米国がIFRS適用を判断しなかった場合、日本は2012年にどのような判断を下すのか。これについては2通りの見方があると三井氏は説明する。一つは、「日本は米国に先行するべきではない」という見方、もうひとつは「米国の少し先を歩くべきだ」という見方だ。三井氏は、「前者を現実的な選択と考える人は多いが、日本は米国にならうものとみなされれば、IFRS設定の場で国際的な発言力を失うことになる」と指摘した。

 2007年の「東京合意」でIFRS適用の意思を示して以降、日本は一気にIFRS設定のコアメンバーとなった。国際的な発言力が強まったことで、IFRSには日本固有の問題に配慮した仕組みも取り入れられるようになった。例えば、IFRSの金融商品会計では、日本の「持ち合い株式」は経営者の自由な選択で時価の変動を純利益には反映しなくてよいとされている。「金融庁に対して、経済界や会計業界からIFRS設定における国際的な立場を弱めてほしくないという要望が寄せられているのは事実だ。米国の先を行くのか後に続くのか、これは金融外交の重要ポイントである」(三井氏)。