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 金融庁は2010年5月21日、第17回企業会計審議会内部統制部会を開催。内部統制報告制度(J-SOX)について見直しの検討を開始した。内容は「中堅・中小企業に対する簡素化・明確化」「制度導入2年目以降に可能となる簡素化・明確化」「その他の明確化(評価範囲や重要な欠陥の判断基準の変更・追加)」「『重要な欠陥』の用語の見直し」の四つ。内部統制部会の開催は2007年1月31日以来、3年4カ月ぶりとなる。

 J-SOXの適用から3年目となり「基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準)や実施基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準)について、簡素化や明確化を議論したい」と部会長を務める青山学院大学大学院の八田進二教授は説明。金融庁に寄せられた意見や民間団体のアンケートを通じて、実務対応する企業や監査人、関係者の声を収集。その結果を元に改正案を検討したという。

日常業務で利用している文書を評価・監査で利用可能に

 中堅・中小企業に向けた具体案として提示された簡素化・明確化策は三つ。(1)評価手続きや記録の保存の軽減を目的に、日常業務で利用しているメモや引き継ぎ書、業務指示書といった文書を評価や監査で利用できるようにする。(2)企業規模に応じて評価・監査手続きができるように、評価する階層を経営層、部長、課長など複数の層から「経営層のみ」に限定するといった合理化を可能にする。(3)全社的な内部統制の評価方法を簡素化する。

 具体的な定義をせずに「中堅・中小企業」や「小規模企業等」と言及していることから、部会では「明確に定義すべきではないか」との意見が出た。これに対して当局側は「非常に難しい問題。これまでの議論からも明確に定義すべきではないと考えている」との見解を示した。同時に「ここでいう小規模企業は比較的、簡素な組織構造を持っていて、経営者の目が現場に届きやすい企業を想定している」との考えを示した。

 このほか根本的に「新興市場に上場しているような小規模な企業こそ、内部統制を有効に整備・運用すべき。簡素化策は必要ないのでは」との意見もあった。

評価範囲の絞り込みに意見が分かれる

 導入2年目以降に向けた簡素化・明確化策としては、(1)持分法適用会社の評価・監査方法の明確化、(2)省略可能な範囲の拡大による評価対象範囲の絞り込み、(3)対象とする統制やサンプリング方法の緩和、の三つを示した。「すでに内部統制報告書を提出している企業だけでなく、新規上場する企業やM&A(合併・買収)があった企業などを想定している」(当局)という。

 (1)は持分法適用会社について、親会社から「内部統制報告書」といった確認書面を受け取るといった方法で評価・監査を省略できることを提案。これに対し、部会の委員からは「持分法適用会社といえども、企業の利益を大きく左右する可能性があるため、内部統制報告書だけでは監査できない」との反対意見が挙がった。

 委員からの意見が多かったのが(2)だ。具体案では「前年度の評価範囲に入っていて、内部統制の評価が良好で状況に変化がなく、重要でない事業拠点は、評価対象として外すことができる。その結果、評価範囲が売上高の概ね3分の2を下回ることがある」といった趣旨の文言の追加が提案された。

 これに対して「3分の2を大きく下回ってもいいのか」「経営者が外すと決めた事業拠点で、不正をする可能性があるのではないか」といった質問が相次いだ。当局側は「均一の商品やサービスを扱い、事業拠点の規模が等しい場合などは3分の2を大きく下回る可能性があるかもしれない。評価範囲は監査人と議論して決定するものなので、信頼性を損なうことはないのではないか」とした。委員の中からは「評価から外した事業拠点でも、監査人がいきなり監査に行くといった仕組みを取り入れてはどうか」といった提案もあった。

 (3)は企業が評価に利用したサンプルを、監査人がそのまま利用できるようにすることを提案している。委員からは「企業と監査人が同じサンプルを利用しては、監査の意味がないのではないか」との意見が出た。

「重要な欠陥」に代わる新しい用語を募集

 「その他の明確化」は重要な欠陥の判断基準、全社的な内部統制の評価範囲の明確化の両者について、実施基準で提示している数値や例示を変更する提案がなされた。

 重要な欠陥の量的な判断基準は現在、「連結税引前利益の概ねその5%程度」となっている。改正案では税引前利益のほかに例示に「剰余金」を追加。全社的な内部統制の評価範囲について、現在は「売上高の95%を評価範囲にする」との主旨を例示しているが、財務諸表の影響度を考慮して「95%」に縛られない記述に変更するとしている。

 最後の「重要な欠陥」の用語の見直しは、「重要な欠陥というと、欠陥がある企業」とのイメージになるとの意見が出たことから、新しい用語を検討するとしている。委員から意見を募集したところ、「重要な不備」や「弱さ」といった案が出たが、最終決定はしなかった。

 当局側から出た簡素化・明確化案のほかに、委員から「現在は内部統制報告書の監査が必要だが、これを手続きが簡素なレビューにしてはどうか」との意見が出た。これに対して、当局側は「検討課題にする」として結論は出さなかった。

 今回提示された改正案は、委員からの意見を反映して修正し、6月10日に開催予定の次回の内部統制部会で改めて検討する。金融庁は、最終的な検討結果を基準や実施基準に加え「内部統制報告制度に関するQ&A」に反映する計画だ。