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写真1●オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンのケント・ワータイム代表取締役社長(撮影:皆木優子)
写真1●オグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンのケント・ワータイム代表取締役社長(撮影:皆木優子)
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 東京都内のホテルで開催中の「NETMarketing Forum 2010」。特別セミナーに登壇したオグルヴィ・アンド・メイザー・ジャパンのケント・ワータイム代表取締役社長は「『デジタルマーケティング』の真価」と題した講演を行った(写真1)。

 「デジタルマーケティングは今後20年間で大きな構造シフトが起きる」と講演の冒頭で予測したワータイム氏。同氏が言う構造シフトを整理すると、「パソコンからモバイル機器への移行」「チャネルの多様化」「消費者の接触時間の増大」となる。

 インターネットへの接続手段はパソコンから携帯電話へと移行しており、特に世界の3分の2の携帯電話は発展途上国の人々によって利用されている。こうした地域の消費者にリーチするためには、モバイルマーケティングは不可欠な手段となる。さらに、先進国、発展途上国を問わず、消費者は様々なデジタル機器を駆使し始めており、マーケティングチャネルが多様化。必然的に消費者がデジタル機器に費やす時間も延びているという主張だ。

 ただ、ワータイム氏は言う。「マーケッターがどんどん消費者に後れを取っている」。その根拠として、ワータイム氏は2004年から2013年までの期間、消費者がデジタル機器を利用する時間の伸びに対し、そこに費やされるマーケティング予算の伸びが追いつかず、差が拡大しているグラフを提示した。「消費者は急速に変化しているのに、マーケッターは十分に追いついていないのだ」。消費者は50%以上の時間をデジタルチャネルで費やしているにもかかわらず、マーケッターは予算全体の5%以下しか投下していないのが現実だとワータイム氏は指摘する。なぜマーケッターは目に見えて変化する消費者の行動を前に、予算をシフトできないのか。

デジタルに予算シフトできない原因は「マーケッターの自信欠如」

 ワータイム氏の結論は単純だ。「マーケッターに自信がないから」。組織として投資する能力がないのも原因だという。いずれにせよ、これから迎える構造シフトを前にマーケッターは「消費者貢献型」「ブランデッド・ユーティリティ」「ソーシャル」「デスクトップから離れたデジタル」「縛りのない動画」「新しい場」の6点に注目していく必要があるという。

 例えば、「消費者貢献型」。ワータイム氏はマーケッターが消費者相手によく使う「ターゲット」という言葉を「既に死語だ」と否定した。間違った使い方が横行しているというのが真意のようだ。別に相手のことを考えなくていいというわけではなく、消費者のコンテンツが企業のコンテンツを超えてしまった今、マーケッターは消費者が「どこにいるのか」を考える必要があるという主張だ。その上で、消費者が最も企業に対して貢献してくれると思われる場をマーケティングのプラットフォームに選び、どうやって消費者達が積極的に参加してくれるかに注力すべきだとした。

 アウトドア用品ブランド「THE NORTH FACE」が中国で展開した消費者参加型キャンペーンを取り上げたワータイム氏だが、「これはまれな例ではない。いまや普通の取り組みなのだ」という。自己の記録管理に加え、ほかのランナーとのコミュニケーションも図れるランニングコミュニティを運営するナイキを見ても分かる通り、マーケッターが取り組むべき課題の一つが消費者貢献をいかに促すかという点にあるとした。

 そのほか、ワータイム氏が「新しい場」の創出の大切さを説くために例に挙げたシンガポールテレコムの取り組み「the SingTel Stadium」はユニークだ。バーチャルなサッカースタジアムを作り、パーソナルライブ席を設けて様々なコンテンツやコミュニケーションが図れるというもの。他企業に広告枠を売った実績もあるという。

 「パソコンやケータイといったデバイスの概念から離れて、消費者に新しい価値を創造していく必要がある」というワータイム氏。急速にデジタルに深化していく消費者を前に、終始、マーケッターの意識変革を訴えていた。