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写真1●サントリー酒類 宣伝部の三好健二部長(撮影:新関雅士)
写真1●サントリー酒類 宣伝部の三好健二部長(撮影:新関雅士)
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 「商品名や社名ではなく“ハイボール”という飲み方を提案する宣伝戦略と、飲食店を軸としたクロスメディア戦略がヒットした」。2010年7月13日、「NETMarketing Forum 2010」(日経BP社主催)に登壇したサントリー酒類 宣伝部の三好健二部長(写真1)は、「角ハイボール」の成功のポイントをこう振り返った。

 同社は、2008年秋から「サントリー角瓶(ウィスキー)」を炭酸水で割った「角ハイボール」に大規模な広告投資を行った。この投資が奏功し、現在、ハイボールは大ブームと言えるほどの人気を博している。2009年7月は約350万人だったハイボール実飲経験者は、2010年5月には約1000万人まで増加。三好氏は、「飲食店を“体験メディア”として位置付け、すべての活動の軸に設定したこと」が成功のキーポイントだと語る。

 「お店を情報発信源として、話題、口コミを自発的に拡大させる」(三好氏)というのが角ハイボールのマーケティング戦略だ。まず、消費者を飲食店に集めるための施策として、同社ホームページに、おいしい角ハイボールが飲める店舗情報を掲載したサイトを開設した。また、飲食店に対して積極的な営業活動を行い、2009年7月には4万店だった角ハイボール取扱い店舗を2010年5月時点で9万店まで増やした。さらに、飲食店に対して角瓶やグラスの冷やし方などを指導し、角ハイボールの品質向上につとめた。これらの施策により、角ハイボールの実飲経験者が増加した。

 飲食店で角ハイボールを体験した消費者に対しては、ソーシャルメディアで口コミを拡散してもらうようにアプローチした。全国7カ所で、ブロガーを集めた角ハイボールを楽しむリアルイベント「ハイボールナイト」を開催。7カ所の合計で1万800人のブロガーが参加したという。さらに、ブロガーやソーシャル・メディア・ユーザーに話題を提供するために、女優の小雪さんがハイボールを作る「小雪のハイボールの作り方ムービー」をYouTubeに公開した。このムービーは大きな話題となり、1カ月で100万回視聴されたという。三好氏は、「ソーシャルメディアを活用するというスタンスはおこがましい。我々は、ソーシャルメディアに集まった人たちとお付き合いするという立場でマーケティングを行った」と説明した。

 角ハイボール取扱い店舗が増加し、角ハイボール実飲経験者が増えるとメディアでの報道も加速した。「製品名や会社名ではなく当社はハイボールというカテゴリーでPRしたため、メディアでもブームとして報道しやすかったようだ」(三好氏)。店舗への営業活動、ソーシャル・メディア・ユーザーへのアプローチ、メディアに対するPR戦略などのすべての要素がスパイラルアップしたことが、角ハイボールのヒットにつながった。

ソーシャルメディア活用でお酒のエントリーユーザーを開拓

写真2●サントリー酒類 スピリッツ事業部の高橋直子氏(撮影:新関雅士)
写真2●サントリー酒類 スピリッツ事業部の高橋直子氏(撮影:新関雅士)
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 続いて登壇した同社スピリッツ事業部の高橋直子氏(写真2)は、2009年に発売した缶チューハイ「ほろよい」の事例を紹介した。「ほろよい」のターゲットは、20歳代の若年層。「お酒離れ、甘舌化(甘い味を好むこと)が進む世代」(高橋氏)である。このような若者の好みに合わせて、「ほろよい」は甘めに味付けされ、アルコール度数は3%と低めに設定されている。

 高橋氏らの調査によると、40歳代と20歳代の消費者では、味覚だけでなく飲酒シーンにも相違が見られた。40歳代が最もよく飲酒する時間帯は午後8時台で、食事をしながらお酒を飲む人が多い。一方、20歳代では午後10時台に最もお酒を飲んでおり、パソコンや携帯電話でインターネットを利用しながら1人で飲酒する人が多くなっている。同社は、インターネットをしながら飲酒するという20歳代の生活スタイルに着目し、「ほろよい」のマーケティングにソーシャルメディアを積極的に活用することを試みた。

 「外でお酒を飲んでいるときも家で1人飲みをしているときも、誰かとつながっていたいという気持ちは共通」(高橋氏)。同社が2009年に開設した「ほろよい.com」は、Web上で飲み会を楽しめるSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)だ。家にいながら、同時刻に飲酒をしているユーザー同士がチャットで会話することができる。人気タレントを起用したTVコマーシャルで“Web飲み会”のライフスタイルを紹介した効果もあり、ほろよい.comは2009年中に約6万8000人の会員を獲得した。現在は、1日平均3000人が訪問しているという。

 さらに、2010年にはTwitterと連携するコミュニティサイト「ほろった~」を開始した。「ほろった~」上で今の気持ちをツイートすると、Twitter全体から類似した気持ちを含むツイートを集めて表示する。現在、1日平均1000ツイートが投稿されているという。高橋氏は、「ほろよい.comとほろった~により、お酒のエントリーユーザーと新しい飲酒シーンを開拓できた」と、これらの施策の効果を満足げに語った。