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 NTT持ち株会社は2010年9月1日、ブロードバンドの100%整備と100%利用を目指す総務省の「『光の道』戦略大綱」について、自社の考えを記者向け説明会で明らかにした。戦略大綱を取りまとめている総務省の「ICTタスクフォース」は、メタル回線から光回線の移行(マイグレーション)についての計画をNTTに提出するよう求めていたが、その内容について説明した。NTTは8月31日に同様の説明資料を総務省に対して提出したという。同時に、ソフトバンクが5月に公表した「メタル回線の撤去により光回線の100%提供が可能」とする料金試算についての反論も明らかにした(関連記事)

 説明会でNTTは、(1)現状では、メタル回線を光回線に置き換えることはコスト的にも技術的にも計画できないこと、(2)それよりも前の段階で、新規開発されていない交換機で構成する加入電話網(PSTN)を、IP網に置き換えていく必要があること、などを主張した。これらは従来からNTTがICTタスクフォースのヒアリングの場で説明してきたことと大きく変わらない。ただし今回は、その大まかなスケジュールや、PSTNをIP網に置き換えていく上で解決すべき個別の課題についても明らかにした。

 NTTによれば(2)のPSTNのIP化が完了しないまま一足飛びに(1)メタル回線の計画的な光回線への移行はできないという。「メタル回線の光化と、PSTNのIP化は混同されやすいが、別個に進めるべきもの。IP網ではまだ実現していないサービスの継続や廃止、PSTNに依存している事業者間の相互接続をどう移管するかを、PSTNの寿命が来る前に考えて準備しなくてはならない」(NTT持ち株会社の鵜浦博夫副社長)。そのために、11月にもPSTNの移行計画についての「概括的展望」を公表し、その後ユーザーや事業者に対して実現方式の合意を形成していく取り組みを行うとした。

 PSTNからIP網への移行については、まず現状のIP電話では実現していないISDN相当のサービスや公衆電話、ガスの検針などで使うノーリンギング通信などの固有のサービスのうち、どれを継続するか、廃止してよいかなどをユーザーとの間でコンセンサスを作っていかなければならないという。また、PSTNが一手に中継を引き受けている、携帯電話とIP電話間など、異なる電話サービス同士の相互接続をどう引き継ぐかなどが検討課題になるという。

 今回は、これらを解決した後、完全にPSTNを廃止できるスケジュールの見通しについて初めて明らかにした。まず、相互接続の仕組みやルール、サービスの取捨選択をするために2~3年、次に合意した実現手段を開発、実装し、サービス化するまでに3~4年、その新サービスに徐々に既存の加入者を巻き取っていくのに5~6年かかるとの見通しを示した。その結果、最短でもPSTNを廃止できるのは2020年代となり、「最後の電話交換機を無くしてもよい時期は2025年前後になるのではないか」(NTT)と見ている。

 それまでの間、メタル回線から光回線への移行はユーザーが自ら選んだ場合に提供する「需要対応」を基本とすると改めて表明した。理由としては、(1)アクセス回線別に利用できる通信サービスは異なり、ユーザーに切り替えを強制できないこと、(2)電話サービスだけを光回線で提供する場合、現行の加入電話並みの料金で提供することは困難であること、(3)それでも切り替えを強制した場合にかかる設備費用やユーザーの料金負担は多大になること、(4)番号ポータビリティや優先接続などPSTNに依存した通信の仕組みを、光回線上で提供している現状のIP電話サービスでは実現できていないこと――を挙げた。その上で、メタル回線の廃止時期については、光回線やCATVなどその他の通信サービスへの移行によって、十分にメタル回線ユーザーの数が少なくなった段階で検討するとした。

「2015年までに光100%普及」は実現困難

 NTTの鵜浦副社長は、これらのことから「光の道」戦略大綱で掲げている、「光回線を主要手段として2015年前後に利用率100%」は事実上、実現困難だという考え方も示した。「以前から、光だけを唯一の手段とするのは実現困難で、移動通信やCATVなど他の通信手段と競争しながら普及率を向上させることが可能な貢献だとしてきた」と説明した。NTTとしては今後、(1)電子政府、教育、医療などの分野のICTサービス開発への協力、(2)アプリケーション開発のための外部プロバイダへの資金提供、ユーザーサポートの充実、エントリー層向けの新料金などサービスの拡充、によって光回線の需要を喚起することで、ブロードバンドの利用拡大に貢献したいとまとめた。