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 金融庁は2010年10月28日、第19回企業会計審議会内部統制部会を開催。内部統制報告制度(J-SOX)の見直しに関して議論した。5月に実施した第17回部会と6月に実施した第18回部会での議論(関連記事1関連記事2)をもとに、J-SOXの簡素化・明確化に向けた見直し内容を整理した。「重要な欠陥」という用語については、「開示すべき重要な不備」または「重要な要改善事項」に変える案を示した。

 内部統制が有効でないことを表す「重要な欠陥(Material Weakness)」は、企業自身に欠陥があるとの誤解を生む可能性がある。前回の第18回部会では、この言葉の代わりに「重要な(または著しい)不備」「重要な(または著しい)弱点」などの用語を使うのはどうかとの提案があった。

 今回、「開示すべき重要な不備」または「重要な要改善事項」とあえて2案を提示した背景について、金融庁 総務企画局の古澤知之企業開示課長は「まだ悩んでいるところだ」と語った。例えば、「重要な不備」とすると、米SOX(サーベインズ-オクスリー)法における「重大な不備(Significant Deficiency)」との関係が分かりにくくなる。J-SOXが内部統制の不備を「重要な欠陥」「不備」の2段階で表すのに対し、米SOX法では「重要な欠陥」「重大な不備」「軽微な不備」の3段階で表現する。

 部会では、2案についてどちらが良い、悪いといった議論は出なかった。臨時委員を務める日本大学教授の堀江正之氏は「二つの用語を同時に使えないか」という意見を述べた。重要な欠陥を開示した企業をみると、「特定の手続きなどに関する不備(例えば、販売部門の承認プロセスに問題があり、財務報告の数字を修正せざるを得なくなった)」に起因するケースと、「継続的な体制・仕組みに問題がある(例えば、内部監査部門の要員不足)」ケースの大きく二つのパターンに分かれる。2案を両パターンに使い分ければよいのではないか、というのが堀江氏の意見だ。

中堅・中小向け「事例集」を提示

 ほかに今回の部会では新たに、中堅・中小の上場企業向けの「事例集」を作成する案を示した。中堅・中小企業が様々な制約のなかで、効率的に内部統制を評価・運用するにはどうすればよいかを具体的に示すのが狙いだ。

 部会では四つの事例を載せた事例集のサンプルを提示した。事例としては、決算・財務報告プロセスの評価を「業務フロー図」「業務記述書」「RCM(リスク・コントロール・マトリックス)」のいわゆる3点セットではなく、簡便なチェックリストを使う例や、情報システムを本社に集約してIT統制の効率化を図った例などを示している。前者では事例の説明や関連する基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準)・実施基準(財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準)に加えて、チェックリストの例を紹介している。

 事例集は中堅・中小企業を対象にしているが、大企業でも参考にできるとしている。事例は金融庁が各企業にヒアリングして整理し、監査法人などの意見を参考にしてまとめるという。金融庁の古澤課長は「できれば10社を超える事例を準備したい」と語った。

 今回の見直し案ではほかに、「企業の創意工夫を活かした監査人の対応の確保」と「内部統制の柔軟な運用手法を確立するための見直し」を挙げている。前者は今回新たに追加した項目で、「経営者が創意工夫した内部統制の評価方法等について、監査人の理解・尊重」「中堅・中小上場企業に対する監査人の適切な『指導的機能』の発揮」などを挙げている。

 後者の運用手法の見直しは、前回の部会で出た案を整理したもの。全社的統制については、前年度の評価が有効で重要な変更がない場合は、前年度の評価結果を利用できるとする。ほかに、(1)実施基準で評価範囲を「売上高のおおむね3分の2」としていたのを、前年度の評価が有効で重要な変更がなければ、評価範囲が3分の2を大幅に下回るのを容認する、(2)影響の重要性などを勘案したうえで評価をローテーション化することが可能とする、(3)経営者が評価時に使ったサンプルや評価結果を、監査人が自らのサンプルとして利用できる、などの案を示した。

 次回の内部統制部会は11月25日に開く予定。ここで今回の議論に基づいた基準や実施基準の改正案を提示し、議論する。改正案が承認されれば公開草案として提示し、その結果を踏まえて正式な改正へと進むことになる。

 今回のJ-SOX見直しは、2010年6月18日に閣議決定した「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ」に基づくもの。「(7)金融戦略」のなかで、金融の役割として「実体経済、企業のバックアップ役としてそのサポートを行うこと」を挙げ、方策の一つとして「内部統制報告制度等の見直し」を掲げている。