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写真1●ICTタスクフォースの事業者ヒアリングの様子
写真1●ICTタスクフォースの事業者ヒアリングの様子

 総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(ICTタスクフォース)は2010年11月9日、「過去の競争政策のレビュー部会」「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」の合同会合として、NTTやKDDI、ソフトバンクなど関係事業者へのヒアリングを実施した(写真1)。

 ICTタスクフォースは10月26日に開催した第15回会合で、2015年までに全家庭にブロードバンドを普及させる「光の道」構想の最終報告書に向けた論点整理案をまとめている。多種多様なサービスが低価格で提供されるよう事業者間の公正競争環境を整備することを基本的な考え方とし、(1)アクセス網のオープン化の在り方、(2)中継網のオープン化の在り方、(3)ボトルネック設備利用の同等性確保の在り方、(4)NTTの在り方、(5)総合的な市場支配力に着目した規制の在り方、(6)利用者料金規制の在り方、の6項目を検討項目として挙げた。今回のヒアリングは、最終報告書に向けたヒアリングという位置付けになる。

7社中3社が「総合的な支配力の在り方を最優先すべき」

 「光の道」構想に関するヒアリングは、2010年4月に実施したヒアリング(関連記事)、8月に実施した非公開ヒアリング(関連記事)に続いて3度目。今回もこれまでとほぼ同様の、NTT、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセス、テレコムサービス協会、ジュピターテレコム、ケイ・オプティコムの7社が参加し、5分間のプレゼンテーションを実施した後に構成員からの質問に答えた。

 各社の主張は従来通りだが、今回は特にNTTグループの総合的な支配力(グループドミナンス)を問題視する声が相次いだ。

写真2●KDDIの小野寺正社長兼会長
写真2●KDDIの小野寺正社長兼会長
写真3●NTTの鵜浦博夫代表取締役副社長
写真3●NTTの鵜浦博夫代表取締役副社長

 「子会社や委託会社への業務移管を通じて、NTT東西に課せられた規制を形骸化させている」(ケイ・オプティコムの藤野隆雄社長)、「県域子会社を利用した営業活動に規制を課すべき。ブロードバンドの利用率向上に効果が出る」(ジュピターテレコムの加藤徹取締役事業戦略部長)、「持ち株体制やボトルネック問題が解決されないまま活用業務を認めたためNTTグループの独占に回帰している。グループドミナンスの問題へ対処するには、第三者機関による監視体制の導入や、行為規制を子会社まで含めるといった見直しが必要」(KDDIの小野寺正社長兼会長、写真2)。規制逃れともいえるNTTの実態を、各社が改めて問題視した形だ。

 これに対してNTTグループは「海外から同情を受けるほど既に規制をかけられている。公正競争は極めて重要だが、ユーザーの利便性や投資や技術革新のインセンティブにマイナスになるような議論は留意願いたい」(NTTの鵜浦博夫代表取締役副社長、写真3)と発言。さらなる規制強化には反対の立場を示した。

 論点整理案をまとめた、電気通信市場の環境変化への対応検討部会座長の山内弘隆一橋大学教授の「論点整理案のどの項目を優先すべきか」という各社への問いに対して、7社中3社(ケイ・オプティコム、ジュピターテレコム、KDDI)が、総合的な支配力の在り方を最優先すべきと答えた。公正競争環境の推進のために、まずは総合的な支配力の在り方にメスが入りそうだ。最終報告書は11月末にもまとまる見込みだ。

ソフトバンク案にはNTTやケイ・オプティコムが「実現不可能」と反論

 ICTタスクフォースでの議論は、公正競争環境の整備によって「光の道」を推進することが基本的な方向性になっている。これによって、市場原理が働く場所では、設備競争がこれまで以上に促され、料金低下による利用率の向上が見込める。ただし市場原理が働かない未整備地域においては、インフラ敷設の促進が保証されているわけではない。

写真4●ソフトバンクの孫正義社長
写真4●ソフトバンクの孫正義社長

 この点について、ヒアリングに出席したソフトバンクの孫正義社長(写真4)は「2015年までに全家庭に100%ブロードバンドを普及させることに、NTTも電力系事業者も誰もコミットしていない」と声を張り上げる。NTTのアクセス部門を分離し、共同出資によるアクセス回線会社を作るべきという持論を繰り返し、「できないという経営陣に任せてもできない。分社化してリスクを取って実現させる意志を持った経営陣に任せるべき」(孫社長)と強調した。

 ソフトバンクの提案は、いわば計画経済的に「早く、安く、切り捨てられる地域無しに」(孫社長)、インフラを全家庭に引こうという考え。市場原理が働きにくい不採算地域も含めて、メタルを撤廃しつつ効率よくインフラを整備しようという形になる。分社化によって独占性も強まるが、孫社長は「いままで苦労したぶん、アクセス回線会社は徹底的に規制をしてもらって構わない」と強調した。いわば基本インフラは効率性で100%敷設してしまい、その上のレイヤーで競争しようという考えになる。

 今回ソフトバンクは、アクセス回線会社の株主構成案として既存のNTT株主の株もアクセス回線会社に残し、そこにソフトバンクなどが増資する案2も新たに用意した。

 ただ同社の試算に対しては、NTTやケイ・オプティコムから「非現実的」「できるできない以前にとるべきではない」といった批判が相次いだ。

 NTTは、ソフトバンクがNTTの反論を受けて10月25日に明らかにした再試算の内容(関連記事)について、「根本的な誤りがある。1点だけ例示すると、電柱・土木費用、回線管理費用の追加で280億円としているが、現在支払っている電柱代や共架代だけで340億円ある。到底実現不可能と断言せざるを得ない。もうこの議論に付き合うつもりはない」(鵜浦副社長)と切って捨てた。

 ケイ・オプティコムの藤野社長も「全国で計画的に工事を行っても現状以上の効率化は困難。できるできない以前に、アクセス回線会社は競争構造を限定化しインフラ高度化の芽を摘むことからとるべきではない」と主張した。

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