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写真●みずほ銀システム障害について講演する日経コンピュータの大和田尚孝副編集長
写真●みずほ銀システム障害について講演する日経コンピュータの大和田尚孝副編集長
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 「2011年3月に起こったみずほ銀行の大規模システム障害は、経営陣が引き起こした人的ミスだ。9年前のシステム障害で『負の連鎖』をきちんと遡って手を打っていれば防止できた。3度目を防げるかどうかも、今回の障害をきちんと遡って根本原因を解消できるかどうかにかかっている」---。東京ビッグサイトで開催中の展示会「ITpro EXPO 2011」のメインシアターに、日経コンピュータの大和田尚孝副編集長が登壇し、「みずほ銀行は三度目のシステム障害を防げるか」と題して講演した。

 大和田副編集長は、システムダウンの発生では「異常の連鎖」が見られることをまず指摘。「口座の処理上限値設定を誤る」「復旧作業で人的ミス」「手動運用の手順書に誤り」といった人的ミスが連鎖することで、システムダウンが起こる傾向があることを示した。

 そして、みずほ銀行で起きた30の不手際、担当役員が問題発生を知るまで17時間もかかったこと、夜間バッチを中断した後の約3万件のジョブを実行できる自動運用手順を用意していなかったことなど、危機対応の問題点を説明した。

 東日本大震災発生から3日後の3月14日、携帯電話会社から「義援金口座に大量の振り込みが集まるだろう。大丈夫か」と問い合わせがあったにもかかわらず、みずほ側はシステム子会社で携帯電話との間のゲートウエイだけをチェックして「大丈夫だ」と回答したことを問題視。「システムの弱点に気づくチャンスを逃してしまった」と強調した。さらに、1988年に開発した老朽化したシステムをそのまま使い続け、東日本大震災をきっかけに障害が発生、人的ミスや対応のまずさで被害を拡大させて経営トップが辞任、という一連の経緯が、福島第一原子力発電所の事故の経緯と似ていることも指摘した。

 今回の事故におけるみずほの損失額は「直接計算できるのはIT費が50億円、賠償・訴訟費が10億円、逸失利益が20億円で合計80億円」だという。「イメージダウンは時価総額の1割に相当するとの指摘もある」と試算を紹介した。

 今後の課題として、「システムダウンはゼロにできる」「ダウンしないシステムを作れる」「直せばそれでいい」といった考え方のままで負の連鎖を断ち切ることは難しいと断言。「問題を連発させている企業が陥っている『負の連鎖』の背景にあるのは、システムダウンに対する誤解だ」とした。

 負の連鎖を断ち切るには、トップと現場の両方でシステムの在り方について理解を深める必要がある。システムダウン時に全社が連携して機動的に対応でき、また、負の連鎖を遡って根本原因を追究しシステム・作業の品質向上につなげられる風土への転換を説いた。トップが現場部門からのシステムに対する要求を調整するなどリーダーシップを発揮することはもちろん、利用部門側がシステムの所有者として、システム要件をなるべくシンプルにすることなどに責任感を持つ必要があるとしている。

 最後に「3度目」を防げるかどうかについて、「今の時点では難しいところもあるが、これからみずほ銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ信託銀行のシステム統合プロジェクトが始まる。これを成功させるためにも、今年3月あるいは9年前のトラブルがどうして起こったのか、もう1度きちんと遡って根本的な原因を追究して対策を講じれば、3度目を防げるだろう。そこを疎かにしてしまうと、同じようなミスが繰り返されることになる」と懸念を示した。